7話 剣聖対策
アリス、キリリの強化イベントは一時中断して、『対剣聖アビス』についての話し合いをする。
早速、オレが切り出す。
「剣聖対策の話し合いを提案しておいてなんだけど……既に考えがあるんだよね」
「……さすが賢者シュート様、凄い」
アリスが大きな瞳をキラキラと輝かせて尊敬の視線を向けてくる。
一方、キリリは学者のような好奇心が前に出た表情を作っていた。
「一体どんな対策を考えたんですか? ちょっと興味があるのですが」
「キリリが期待するような奇策やアイデアじゃないぞ。正攻法――いや、この場合は裏技になるのかな? 相手が剣聖スキル持ちなら、こちらもスキル『剣聖』を創って習得すればいいんだよ」
「……はい? なんですかその『相手がドラゴンなら、こちらもドラゴンになればいい』的ノリは……。創れちゃうんですか? 伝説のスキル『剣聖』を?」
「まだ試していないけど、いけると思うんだよね」
オレは返事をしつつ、早速実行に移す。
椅子に座ったまま目を閉じ、意識を集中。
『スキル創造』スキルに意識を向けスキル『剣聖』を創造する。
「……ッゥ!」
魔力が足りず『魔力ボックスLV8』から引っ張り出し補完する。
時間にして十数秒後、手のひらが輝きピンポン球――スキルオーブが姿を現す。
鑑定でスキルオーブを確認すると『剣聖』としっかり表示されていた。
「使用した魔力は100万か……時間操作系スキルとは比べ物にならないが、なかなかの消費だな」
「……おぉ~、さすが賢者シュート様、凄い」
「で、伝説のスキルをそんな簡単に生み出すとか……でも考えてみたら『剣聖』よりレアな時間操作系を持っていたり、伝説の中の伝説である『スキル創造』スキルを持っているんですよね……」
アリスは可愛らしく『パチパチ』と手を叩き、キリリは目の前で起きた事象に頭を抱える。
オレは2人の反応に微苦笑を返しつつ、早速スキル『剣聖』を取得する。
「『剣聖』スキル取得」と脳内で告げられた。
鑑定で自身のステータスを確認する。
名前:シュート
年齢:14歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:51
体力 :10000/10000(+5000UP)
魔力 :6000/6000(+3000UP)
筋力:2800(+1400UP)
耐久:3000(+1500UP)
敏捷:1000(+500UP)
知力:700(+350UP)
器用:900(+450UP)
スキル:『スキル創造』『剣聖(new!)』『時間操作LV1』『騎士LV8』『光魔法LV8』『気配遮断LV8』『隠密LV8』『気配察知LV8』『健脚LV8』『逃走LV8』『韋駄天LV8』『直感LV8』『剣術LV8』『格闘LV8』『火魔法LV8』『水魔法LV8』『風魔法LV8』『土魔法LV8』『闇魔法LV8』『身体強化LV8』『HP強化LV8』『MP強化LV8』『頑強LV8』『魔力耐性LV8』『物理耐性LV8』『精神耐性LV6』『鑑定LV9』『ステータス擬装』『スキル経験値増大』『LV経験値増大』『裁縫LV8』『皮加工LV8』『鍛冶LV8』『生産技能LV8』『抽出LV8』『索敵LV8』『槍術LV8』『斧術LV6』『回復LV8』『超回復LV8』『MP回復速度LV8』『攻撃魔法強化LV8』『アイテムボックスLV8』『魔力ボックスLV7』etc――。
称号:廃嫡貴族(
「ついに体力が4桁突破したか。『剣聖』のステータス2倍はかなり美味しいな」
さらにスキル経験値取得2倍も美味しいが、剣術だけではなく自身の体の動かし方、他者の筋肉、骨、血管など洞察力、戦う勘のようなモノが著しく上昇したのを感じる。
これだけの力があったら、そりゃ『僕ちゃんは選ばれた存在云々』と言い出す訳だ。
剣聖アビスのステータスを思い出す。
名前:アビス・シローネ
年齢:24歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:50
体力 :4000/4000
魔力 :100/100
筋力:1000
耐久:800
敏捷:120
知力:50
器用:100
スキル:『剣聖』『身体強化LV7』『頑強LV7』『アイテムボックスLV5』『回復LV7』『物理耐性LV7』『魔力耐性LV7』『怪力LV7』『気配察知LV7』『気配遮断LV7』
称号 :勇者教聖人
確かに強くはあるが、オレのステータスと比べると体力、魔力、筋力、耐久、敏捷、知力、器用――全てダブル、トリプル、モノによってはそれ以上の差が付いてる。
スキルの数など比べるべくもない。
「シュート様のステータスが2倍って……。もうステータス差でごり押し勝利できるんじゃないですか? あちらから挑んできた決闘とはいえ、そんなシュート様と戦うことになるなんていっそ哀れですね……」
正直、キリリの意見が否定できない。
自分でもステータスに差が有りすぎて、驚いたほどだ。
もしオレがこんな怪物ステータスと決闘することになったら絶望して頭を抱えてしまうだろう。
その事実を知らず、当日意気揚々と勝負を挑んでくるアビスの姿を想像してしまい敵ながら思わず同情心が湧いてしまった。
オレとキリリが剣聖アビスに同情心を抱いていると、アリスが一刀両断してくる。
「……敵に情けは無用。相手の過大評価も駄目だけど、過小評価も足を掬われる。実戦経験の差や運の要素も考慮が必要だし、それに汚い手を使ってくるかもしれない。勝利を得るためには堅実に確実に仕留めるべき」
まるで肉食系野生動物のような発言だが、彼女の言葉通りだ。
これで負けたら、いい笑い者である。
通常で考えれば様々なことを考慮に入れてもステータス差や有効スキル差もあり、『時間操作LV1』の『アクセル』、『スロー』があれば負けることはないだろう。
しかし相手にどんな隠し球、奥の手があるか分からない。
確実に勝利するため、他にオレ達が出来ることはあるだろうか?
テーブルに座り、お茶を飲みつつ、3人で頭を悩ませる。
キリリが使えそうな既存スキルを上げてオレ自身を強化する案を出すが既に持っていたり、付け足しても意味がないモノだった。
しかしこの『3人寄れば文殊の知恵』状態が良かったのか、アリスから鋭いアイデアが出る。
「……スキルだけじゃなく、賢者シュート様の剣や防具を強化するのは?」
「スキルばっかりに目が行っていたけど、アリスの言う通り剣や防具を強化するのはいいアイデアだな。? キリリどうかしたのか?」
「姫様のお言葉で思いだしたのですが……剣や防具を強化するのは私自身も良いアイデアかと。ですが、当然相手も似たようなことを考えますよね? ですが、まさかいくら勇者教のメンツがかかっているからといって……でも、仮に剣聖が決闘で勝利すればシュート様が部下になるんですよね。なら表に出すメリットは十分にあるわけで……」
途中までちゃんとこちらに対して返事をしていたが、後半は1人ブツブツと思考に埋没する。
放って置いたらいつまでも続けそうだったが、先にアリスが声をかけ意識を現実へと復帰させる。
「……キリリ、問題があるなら口に出して。皆で一緒に考えるべき」
「す、すみません姫様、シュート様!」
アリスに声をかけられ、慌てて謝罪の言葉を告げる。
キリリは軽く咳払いをしてから、自身の疑問点、問題を口にした。
「これはあくまで根拠の無い私の勘でしかないのですが……勇者教は『魔剣グランダウザー』を持ち出してくる可能性があるかと……」
彼女が口にした魔剣名はオレでも良く知る勇者と一緒に魔王退治をおこなった剣聖の愛剣の名称だった。
前書きにも書いた通り、皆様にご好評だったので4つ(4、5、6、7話)を12時、14時、16時、18時に連続でアップしました。読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます!
もし4~6話を読み逃した方がいらっしゃったらご注意くださいませ~。
また書いててこの3人のやりとりが、結構楽しく書けてよかったです。