エピローグ 前編
――ミーリスから土地所有権を譲られてから約4年後。
オレはレムと2人、畑となる開発予定地へと姿を現す。
今日はここを『スキル創造』を使って耕すのだ。
「スキル『肥沃土』!」
オレの魔力1000を使用し、スキルオーブを創り出す。
スキル『肥沃土』――このスキルで耕した土は、植物を育てるのに適した土となる。
当然、オレが新たに創り出した新規のスキルである。
いつもは創り出す時すんなりスキルオーブを創り出せるが……今回は『スキル創造』が混乱しているのを感じた。
正確には『スキル創造』というより――このスキルを作った製作者側、神様的存在が『???』、『意味が分からん!』、『こいつ仕様書にないスキルを創り過ぎ!』、『けっぷぅ』と非難囂々、泣きが入っているイメージだ。
すったもんだの結果、そこそこ割高の魔力1000を徴収され、スキル『肥沃土』が創り出されたのだ。
オレはスキル『肥沃土』を手にしたまま側に居るレムに声をかける。
「レム、ゴーレムにこのスキルを覚えさせてくれ」
「パパ、了解だ、わん」
事前に創り出したゴーレム10体にスキル『肥沃土』を手渡し、レムを通し覚えさせる。
最初こそ、硬い岩の色をしていたゴーレムだが、スキル『肥沃土』を取り込むとふかふかのよく野菜が育ちそうな濃い土色に変わる。
「レム、ゴーレム達を予定の畑へ移動させてから形を崩してくれ」
「前進。わん」
レムがオレの指示に従い10体のゴーレムを畑予定地へと移動させて寝そべさせると、ゴーレムを解除。
良い感じに土が広がった畑が完成する。
――異形兵士、改造された子供達を引き取って4年。
治療自体は1年ほどでなんとか一通り終えることが出来た。
しかし、彼らは冤罪で罪を被せられたり、養いきれないと売り飛ばされた身の上だ。
帰る故郷など無い。
そんな彼らの新しい故郷、安心して生活出来る環境を整えるため、オレ達はミーリスから権利を譲ってもらった土地を開拓し、畑や建物、外貨を稼げる商品作りなど、村の開発に力を注いだ。
スキル『肥沃土』は畑の土があまり良くなく、『スキルでどうにか良い土を作れないか?』と考えた結果だ。
製作者側、神様的存在は困らせてしまったようだが、お陰で畑に最適な土地がスキルで創り出せるので重宝している。
この約4年で村――現在は準町LVになってしまったが、凶作になったことはなく野菜、麦などすくすく育っている。
「パパ、仕事、終わった。この後は?」
「協力ありがとう。今日のレムの仕事はこれでお終いかな。後は孤児院の子供達が遊びに来るだろう、ミーリスの相手をしてくれ」
「了解だ、わん」
複数のゴーレムを動かすため、レムは犬耳モードの姿をしていた。
犬耳をつけているので、今年で4歳――見た目は10~12歳にもかかわらず語尾に『わん』とわざわざつけているのだ。
レムは約4年で大きく姿を変えた。
身長はオレの鳩尾辺りまで伸びた。140cm前後ぐらいだろうか?
黒髪は背中まで伸びて、顔立ちも以前は幼いだけだったが、現在は可愛さと美しさが両方揃った美少女に育っている。
このまま育てば、誰もが見とれる美女へと成長するだろう。
現在でもその美しさ、可愛さから老若男女問わず、可愛がられている。
(……正確には『可愛がられている』というより、男女、年齢関係なく惚れさせる、魅了する魔性の少女、傾国の美女状態なんだよな)
レムは昔から感情が表に出なかったが、成長するに連れて微かに笑ったり、頬を膨らませて怒ったり、眉を下げて悲しみを表すようになった。
『可愛さと美しさが両方揃った美少女が、自分だけに(本人視点では)笑いかけてくれる』
その魅力に抗えず、村で引き取った子供達のうち、男子の9割近くの初恋がレムだという噂すら流れた程だ。
さらにダンジョン都市『ノーゼル』領主のミーリスなど、3日に1度はレム達に会いにわざわざ来るのだ。
『レムちゃんをあたいの義娘にくれ!』と言い出し、アリスと何度となく争ったことか。
可愛がってくれるのは嬉しいが、少々度が過ぎるのは勘弁して欲しい。
逆に4年経っても変わらないこともある。
約4年前――勇者教が聖戦発令を声高に主張していた『スキル創造者を魔王認定するべき派』が軒並み病死した。
その混乱が今も続き、あまりに内部でグダグダしているため、一般市民ですら『さすがに勇者教はどうなんだ?』と疑問を抱かれ、スタンダード宗教としての地位が脅かされている。
そんな勇者教の一部からは、『この混乱を立て直すために是非シュート様を教祖としお招きするべきだ』という声が出ているらしい。
マジで勘弁してくれ!
だれがそんなグダグダ、ドロドロな派閥争いの渦中に飛び込むか!
アイスバーグ帝国を通して厳重に抗議&お断りに力を入れている状態だ。
オレの元自国であるエルエフ王国も勇者教同様、未だ混乱が収まらず、貴族同士の紛争すら始まっているとか。
アイスバーグ帝国情報部曰く、『近い将来、まだ力を持つ貴族達が連合を作って独立するでしょう』という報告を受けた。
つまり、そう遠くない将来、エルエフ王国が消えるということだ。
もうオレ自身、全く関係無いため何の感慨も湧かない。
何の感慨も湧かないといえば、帝国情報部を通して元父親であるエイトの所在が明らかになった。
現在は小国群貧民区住人にまで落ちてしまったらしい。
元子爵家当主とは思えない生活をしていると報告を帝国情報部から受けたが、何の感情も湧かなかった。
『ざまぁ』と胸がすく思いも、『可哀相に』と哀れむ気持ちすら湧かない。
前世日本で言うなら、テレビ越しに『○○国で事故が起きました』とニュースキャスターが記事を読み上げているのを聞いている気分である。
自分には関係が無さ過ぎて興味すら湧かないのだ。
帝国情報部には以後、『別に報告はしなくてもいい』と断りを入れた。
また個人的に元父親以上に聞きたくないのが、シローネ親子の現在である。
なぜか帝国情報部はわざわざオレに定期報告を欠かさないのだ。
(確かにオレ自身、シローネ親子の行く末は野次馬根性的に気にはなったけど……。まさか未だに生きているとか、予想外にも程があるだろう)
そう、シローネ親子は未だに生きているのだ。
約4年前、オレが2人を捕らえてダンジョン都市『ノーゼル』で、アイスバーグ帝国兵士達に引き渡し、首都へと連行された。
ミーリスの発言通り、他国民や諸々のためあまり重い罪には問えず、シローネ親子は帝国首都で解放された。
解放されてから半日経たず2人は行方を眩ませたのだ。
シローネ親子が率先して行方を眩ませたのではない。
2人に怨みを抱く表裏関係ない集まった者達によって、身柄を攫われたのだ。
それが約4年前の話である。
にも関わらず未だに2人は生きているのだ。
いや、もっと正確に表現するなら――『4年経っているにも関わらず死にたくても死ねない状況に陥っている』らしい。
オレ自身、スキル数、熟練度、ステータス等を考えて『この世界最強』という自負がある。
にも関わらずこの話を聞いて、『なるべく人の怨みは買わないようにしよう』と誓ったほどだ。
人の怨みとはこれほど深く、強いものなのかと興味本位で報告を聞く度に背筋を震わせてしまう。
最近は『もう2人の近状を伝えなくてもいいです』と断ってしまった。
――暗い話が続いたが、もちろん明るい話もある。
レムが考え込んでしまったオレの袖を引っ張る。
「パパ、ママ達、来た」
「アリス達が?」
レムの声に反応し、視線を向けるとアリス、キリリが赤ん坊を抱いて歩いて来た。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
終わりませんでした!
エピローグが思った以上に長くなり前後編に分けさせて頂きました。
明日こそ! 明日こそ! 完結するので是非お見逃し無く!
また『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!
本日も2話連続でアップする予定です。
詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。
これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
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感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




