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16話 土地開拓許可

 ミーリスが足を組み直し続きを語る。


「シローネ親子に関しては罪状を明らかにして、罰を与えるつもりだ。とはいえ他国内部での犯罪行為を帝国が勝手に裁くわけにもいかないから、国として与える罰はそこまで重くはならないが……」

「…………」

「そんな顔をするな賢者殿、まだ話は終わっていないぞ」


 オレは『シローネ親子が罪に問えない』と言われて、無意識に顔を顰めていたようだ。

 ミーリスが微苦笑を漏らし片手を振る。


「シローネ親子に関して下手に帝国は罪に問えないが……賢者殿が2人のスキル『剣聖』、『大魔術師』を奪って破壊しただろう? その話が既に一般市民の間にも広がっているんだ。その噂を聞きつけて力を失ったシローネ親子に復讐をするため世界中、裏も表も関係なくアイスバーグ帝国に人が集まっているらしいぞ」

「……んぅ?」


 最初、意味が分からず首を捻ってしまう。

 ミーリスは再び微苦笑を漏らし、説明してくれた。


「つまりシローネ親子は色々やり過ぎていたせいで世界中に怨みを買っていたんだ。でも2人はスキル『剣聖』と『大魔術師』のお陰でそうそう簡単に手を出せる人物じゃなかった。しかし今回、賢者殿がその2つを奪い、破壊し力を失ったせいで一般市民に毛が生えた程度の力しかなくなったわけだ」


 彼女は喉が渇いたのか、お茶に口をつける。

 カップを置くと説明を再開する。


「結果、2人に怨みを抱く人々が表も裏も大量に集まっているらしい。2人が外に出た瞬間、怨みを買っている人々から拉致されて、生きてきたことを後悔するような拷問を受けて無惨に殺されるだろうな。正直、帝国の法ですっぱり死刑にされた方がマシなほどだ。逆に怨みを抱く者達の間では今回の一件、シローネ親子を無力化した賢者殿の人気が上がっているらしいぞ」


 ミーリスは涼しい顔で『人の怨みというのは怖いね~』と漏らす。

 オレはむしろドン引きして喉を鳴らしてしまう。


 表裏問わず、そこまで人に恨まれるなんてあの親子は一体、過去に何をやらかしてきたんだよ!

 そんな怨みを抱く者達の間で人気があがっても全然嬉しくない!

 むしろ怖いんですけど!


 オレは頭を抱える。

 これ以上、もうシローネ親子には関わりたくない。

 むしろ忘れるべきだろうな。


 オレは気持ちを切り替えて、改めてミーリスへと向き直る。


「一通り情報を教えてくださってありがとうございます。さらに厚かましいんですが、お願いがあって……」

「分かっている。『ノーゼル』近郊に土地が欲しいんだろ?」

「はい」


 打てば響く鐘のようにミーリスが答える。


 現在オレは『オリーム王国軍+α』に参戦した異形兵士、『北の魔女』の塔で保護した異形改造された子供達など保護している。

 全員、体内に入っていた自爆魔石は除去したが……魔物部分、変化する細胞の除去に四苦八苦していた。


 これを完全に取り除き、普通の人に戻すのに少々手間取っている。

 スキル『抽出LV8』で魔物細胞を抽出しつつ、人の細胞をスキル『細胞再生』や『超回復』等で並列使用する必要があるのだ。

 少しでも気を抜くと、人細胞ではなく、魔物細胞を再生して元の木阿弥になる。


 さらに『細胞』という考えが前世、日本の知識があるオレしか分からず、手が足りない状況だ。

 治療中の異形兵士と改造された子供達を普通の街の中には入れられない。

 何かの拍子で暴れられたら、多数の死者が出てしまう。

 また見た目が魔物よりのため、どうしても忌避感が強い。


 故に隔離して生活をさせる必要があるのだ。


 現在はダンジョン都市『ノーゼル』からそこそこ距離を取った森林側を開拓。

『中央大森林』時代に培った『土魔法』技術で、自宅や囲い、畑などを作り、異形兵士と改造された子供達を住まわせている。

 ただ衣食住を与えては本人達のためにならないため、木々を切り、根っこを掘り返すなどの開拓仕事や畑などを任せている。

 子供達はキリリが勉強を、アリスは体育――体を動かす先生としてサポートしてもらっていた。

 レムは異形兵士達に混じって、ゴーレムを指揮して開拓作業を手伝っている。

 オレがその合間に治療を少しずつしている状態だ。


 このまま開拓が進めば、治療後、行き場の無い彼らが住める村が出来るだろう。


「なので出来ればミーリスさんの許可で寝泊まりしている土地をそのまま頂き、開拓させてもらい彼らが住める村を作らせてもらえればありがたいなと」


 ダンジョン都市『ノーゼル』は戦争前、ミーリスから『ダンジョン都市の慢性的な問題』の相談を受けた。

 その際、『スラム解体と孤児や仕事にあぶれた者達をノーゼル周辺で畑を作り、食料自給率をあげてはどうか』と提案した。


 本来、街の外は魔物が居て危険なため、城壁外で畑を耕そうなんて考えない。

 しかし、ノーゼルは冒険者の街のため、戦える人間が多いから見回りの人数、魔物討伐を経験している元冒険者が農夫となり安全は十分確保できるはずだ。

 ミーリス達はこの案を実行。

 お陰でノーゼル周辺の土地は農地に変わり、領主ミーリスの主導でイケイケドンドン状態で耕かされている。


 そんな状態にもかかわらず『近郊の土地が欲しい』とオレは言っているのだ。

 本来であれば問答無用で却下されても可笑しくないが、ミーリスは笑顔で了承する。


「ノーゼル領主として許可する。そのまま土地を開発して村を作ってもいいよ」

「……ありがたいけど、そんな簡単に許可を出してもいいの?」

「問題ない。いくらノーゼル周辺の開発熱が高くても、延々と畑を作り出し、管理、警備するには人手が足りない。賢者殿が開発している場所に村が出来るならこちらとしてもありがたいぐらいだ」


『それに』と彼女は付け加える。


「子供達や異形兵士の話を聞かされたらあたいだって何かしてあげたくなるよ。何より賢者殿には『ダンジョン都市問題』では世話になったし、他にも凶化暴走水精霊(ウンディーネ)や『ドラゴンの牙』問題でも迷惑をかけたから、これぐらいたいした問題じゃない」

「そういってもらえると本当にありがたいよ。気持ち的にも楽になった」


 アリス、キリリからも『帝国建国の父、大恩ある賢者様の願いを叶える』と標榜しているため、断られることは無いと断言していた。

 しかし断れないのを良いことに、ごり押しするのは話は別だ。

 もし少しでもミーリスから拒否反応が出たら、オレは開拓をストップさせて別の土地へ移動する腹積もりだった。

 だが、そんな手間を掛けずに済み内心安堵する。


「賢者殿、開発許可以外に必要な物があったら遠慮なく言ってくれ。あたいを含めて、アイスバーグ帝国は賢者殿の味方だ。いくらでも力を貸すからな」

「ミーリスさん、本当にありがとうございます」


 オレは彼女の温かい言葉に、本心からお礼を告げて頭を下げる。

 いくらオレに『スキル創造』があっても、サポートがなければ異形兵士&改造子供達を保護し続けることは出来ない。

 まさか未開の土地を開発、衣食住を1から揃えていたら、治療など何時まで経っても取りかかれなかった。

 被害者である異形兵士、改造された子供達の治療にすぐさま取りかかれるのもミーリスや帝国、アリス達などオレ1人だけではなく、皆の協力があってこそだ。


 シローネ親子はスキル『剣聖』、『大魔術師』があるから『自分達は特別で、誰に何をしてもいい』と考え力を振るった。

 いくら『スキル創造』があるからと言って、彼らのような醜い存在にはなりたくない。

 オレ自身、大勢の人達に支えられていることを忘れず、『スキル創造』という力も自分自身のみならず他者のため、役立つために使うことを心に刻む。


 ではなければシローネ親子、勇者教、エルエフ王国王族達などのような醜い存在になってしまう。

 彼らを他山の石として自分を律しようと改めて誓った。


 胸中でミーリスの配慮から、自分が如何に他者から支えられ、世話になり、恵まれているのかを再確認。

 その事実に気付かされたミーリスに対して、敬意を新たにした――が、


「まぁそれに賢者殿達がノーゼル近郊に村を作ってくれればアリスやレムちゃん、キリリも当然、滞在することになるだろ? アリスはともかくレムちゃんやキリリにすぐ会える環境になるのはあたいとしても願ったり叶ったりだしな。アリスはともかく」


 ミーリスは照れくさそうに髪を弄り告げる。

 口では『アリスはともかく』というが、実妹が今までと違って年単位で近郊に居てくれるのが心底嬉しいらしい。

 さらに妹分として可愛がっているキリリ、姪っ子扱いで猫可愛がってるレムまで近くに住むのだ。

 ミーリス的には近郊の未開発の土地を割り当てるぐらい余裕らしい。


(なんだろうこの可愛い妹達が近くに住むなら土地、建物も買い与えちゃう姉馬鹿的空気は……)


 先程までミーリスの配慮、気遣いから自分自身を律する大切さを学んだはずなのに……。

 なぜか非常にもやもやした気分になる。

 結果だけ見ると最上だから何も言えない。


「? どうした賢者殿、難しい顔をして?」

「い、いえ、その……今後の治療や元兵士、子供達の独り立ちなどの支援方法などをつい考えてしまって……」


 まさか素直に胸中に抱いた思いを告げる訳にはいかず、適当に誤魔化す。

 ああ、人はこうやって大人になっていくんだな……。


「あまり1人で抱え込むなよ? 力になれるか分からないが、話ぐらいならあたいも聞くから」

「あ、ありがとうございます」


 オレは笑顔でお礼を告げる。


 こうして無事、元兵士や子供達の治療を続けることが出来る土地や支援体制を得ることが出来たのだった。


スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

次の話がエピローグになります!

正直どこかで息切れして数日間を開けてアップすることになるのかなと思っていましたが、無事に最後まで書けそうでよかったです。

明日で終わらなかったら『あっ(察し)』と思って頂ければと――。


また先日『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!


本日も2話連続でアップする予定です。

詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。

これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 裏表問わず復讐者が集結中って…(汗) 尊厳解放どころの騒ぎじゃねーですね…(-人-) シュートくんに敵対した人たちで一番マシなのが自業自得で落ちぶれた実父?? で、魔女被害者治療のために開…
[気になる点] シローネ親子に対する帝国が罪に問えないことに顔をしかめたり、今後に対してドン引きしていますが、6章14話で同じような状況になると予想しているので、この態度は不自然です。
[一言] シローネ親子…サクっと処刑されたほうがまだマシな未来が待っているのですねwww
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