11話 鉄壁の防御、迎撃態勢
『北の魔女』と呼ばれ、恐れられている女性が居る。
スキル『大魔術師』を持ち、伝説の杖『ヨルムンガンド』を所持するネークア・シローネだ。
彼女はオリーム王国領内にある森奥地に塔に住んでいる。
別名『魔女の塔』だ。
土魔法で作られているため繋ぎ目のないツルツルとした象牙色の塔で、周囲の木々をやや越えるぐらいの高さだ。
そんな塔内部のリビングで『大魔術師』ネークアは、ソファーに座りながらのんびりお茶を楽しんでいた。
彼女はカップに口を付けると、思い出したように漏らす。
「……そろそろアビスちゃんに恥を掻かせたシュートっていう小僧達が、わたくしの作りだした兵器達とぶつかって血祭りにあげられている頃かしら?」
「う、うん、そ、そうだね。そろそろ、だね……」
正面ソファーに座るスキル『剣聖』を持つアビス・シローネが、落ち着かない様子で貧乏揺すりを繰り返していた。
彼はネークアの息子で、以前シュートと決闘で剣を交えたことがある。
最初こそアビスが優勢だと本人は信じ込んでいた。
しかし実際はシュートが様子見をしていただけ。さらに『ステータス擬装』の力でシュートは実力を隠していた。
結果、アビスが彼の実力を勘違い。
その事実に気付くと、アビスは涙、鼻水を流し命乞いをした上、魔剣『グランダウザー』を切断、破壊される恥辱の敗北を受けた。
そんなシュートの実力を思い出し、『本当に倒せているのだろうか』と今更ながら心配になっているのだ。
ネークアは貧乏揺すりを繰り返す息子へ優しく微笑みかける。
「うふふふ、そんなに心配しなくても大丈夫よアビスちゃん。例えわたくしの作りだした兵器達がシュートっていう小僧に敗北しても、問題無いもの」
「えっ!? そ、それってどういう意味なのママ!?」
意外な答えにアビスが思わず上擦った声音で問う。
ネークアは優雅にお茶を一口飲み、カップに戻してから返答した。
「兵器達の体内にはわたくし特製の自爆魔石が埋め込み済み。例え兵器達に勝利したとしても、近距離で起こる爆発からは逃れられない。いくらアビスちゃんを倒すほどのステータスを所持していたとしても、無傷なんてありえないわ」
さらに彼女は告げる。
「肉体の傷だけじゃない。子供を魔物化して嗾け、シュートっていう小僧達に殺させることで心にも傷を負っているでしょうね。しかも子供達に埋め込んでいる自爆魔石は他の異形兵士以上に力を入れて作った高性能品。例え内部に自爆魔石があることに気付いても、取り除くにはわたくしが持つ大魔術師の杖『ヨルムンガンド』の力が絶対に必要なの。今頃、子供達と戦い、救う手段もなく、自身の無力さを嘆いている頃合いでしょうね」
「で、でもママ……もし、もしだよ? シュート達が怒ってこの塔まで来たらどうするの?」
「それこそ願ったり叶ったりだわ」
「そ、そうなの?」
ネークアは自慢気に笑いを漏らしながら説明する。
「森には地の利を生かした専用の強力な魔獣を放ち、多数の魔術トラップを作製済みよ。魔獣達はそのトラップを生かし敵を追いつめ、屠るだけの知能があるわ。さらに防御面も完璧よ。塔を防御するための多重結界。空から侵入しようとしても対空魔術が起動し近付くことさえ出来なくなる。何より――」
彼女は深く、残酷に笑う。
「地下には秘密兵器として作り上げた子供達がまだ沢山居るのよ。子供達を助けるため、わざわざここまで来たシュートっていう小僧達はさらに子供達をぶつけられて、どこまで心と体を保つことが出来るのかしら? 本当に楽しみだわ」
「さ、さすがママ! まさかシュートがこの森まで来ることを考慮してここまで準備をしていたなんて!」
「うふふふ、もうアビスちゃんたら褒め過ぎよ。ママ、照れちゃうわ」
午後の穏やかな時間。
シローネ親子は楽しげに笑い声を漏らす。
内容は酷く凄惨で惨いモノだが――。
しかし、彼女達の目論見は大きく外れることになる。
☆ ☆ ☆
「ああいう外道共の考えることなんて手に取るように分かるんだよ」
オレことシュートには前世日本時代の記憶がある。
アニメ、マンガ、現実の事件、テロなどから大凡ネークア達の悪辣な計画に対して想像が付いていた。
故にスキル『非殺傷』と『異相結界』をわざわざ作り出したのだ。
さらに――。
「レム、準備はいいか?」
「やー、もんだいなし」
オレはスキル『異相結界』を展開する。
スキル『異相結界』は、現実と結界内部の位相をズラす。ズラすことで例えば結界内部で建物が崩壊しても、解除後は元に戻っているというものだ。
ではなぜスキル『異相結界』なんてモノを創ったのか?
答えは――自分達の安全を最大限確保しつつ、建物ごと吹き飛ばし確実にシローネ親子を取り押さえるためだ。
『瓦礫で潰され死にました』ではオレ自身を含めて腹の虫が治まらない。
だからこそわざわざスキル『異相結界』を創ったのだ。
そして今回、最大の目玉。
オレが自重を捨てて準備したモノを、レムの操作する10体のゴーレムが握り締め陽の光を反射させる。
レムがLV50を突破して操作できるゴーレムの数が10体に増えた。
その増えた10体全員の手に『自重を捨てて準備したモノ』――準亜神剣『クリムゾン・ブルート(深紅の血)』が握られていたのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
防御態勢、迎撃を完全に整えた『北の魔女』の森をどう攻略するのか?
このシナリオを考えた際、すぐに準亜神剣『クリムゾン・ブルート』の使用を思い付きました。
しかも1本ではなく複数本で。
その結果どうなるのか――次話で是非お楽しみに!
また先日『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!
本日も2話連続でアップする予定です。
詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。
これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
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