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1話 宣戦布告理由

 夕飯後、私的なお茶会の席で一報が入る。

 その内容はオレに対して『勇者教、エルエフ王国、オリーム王国の3つが宣戦布告』だ。


 翌日の午後――ダンジョン都市『ノーゼル』領主館リビングで、より詳しい情報が入ったためアリスの姉ミーリスが伝えてくれる。

 オレとアリスはソファーに座り、キリリは従者として背後に立つ。

 今回は内容が内容のため、レムはメイド達に預けてきた。


 テーブルを挟んだ反対側ソファーに座るミーリスが、帝国経由で伝わってきた情報を開示する。


「勇者教、賢者殿の元自国であるエルエフ王国の言い分はこんな感じだ」


 勇者教は『剣聖アビスとの決闘の際、魔剣グランダウザーを破壊したその責任を負わないスキル創造者を誅するため』。

 エルエフ王国は『勇者教に全面的に賛同。また戻らぬ臣民であるスキル創造者に対し、国家として責任を果たし自国に引き戻すため』。

 オリーム王国は『義によって参戦する』らしい。


 オレはこの表明に頭を抱える。


「……勇者教とエルエフ王国は理解できる……理解したくないけど」


 アビス・シローネと決闘した際、勇者教は過去勇者と一緒に魔王を退治したとされる剣聖が使用していた魔剣『グランダウザー』を貸し出した。

 その決闘でオレが魔剣『グランダウザー』を切断。

 以後、オレを勇者教傘下入りさせるか、魔剣『グランダウザー』と同等かそれ以上の魔剣を寄越せと騒いでいる。

 決闘する際、『何が起きても問題にしない』と約束を交わしているのにかかわらずだ。


 元自国のエルエフ王国は、オレに『スキル創造』という伝説中の伝説である力があると知った途端、手のひら返し。

 戻ってくるようにしつこくうながしているのだ。


「問題はオリーム王国だけど……オレは彼らに何か恨まれるようなことをしたか? もしくは『スキル創造』の力が目当てで参戦を表明しているのか?」


 怨みはともかく、『スキル創造』の力が目当てとしてもオレには、この世界の3割を支配するアイスバーグ帝国がバックについているのだ。

 勇者教や元自国はあれだが……『スキル創造』の力に目が眩んだとしても、普通ここまで直接的な喧嘩を売ってくるものか?


 この疑問にミーリスが答える。


「オリーム王国は恐らく脅されて参戦させられているんだろうな……」

「脅されて?」

「賢者殿、オリーム王国のことは知っているか?」

「一般常識程度は。この世界で最も北にある国ですよね?」


 オレはこれでも元貴族の嫡男だ。

 町人も知っている一般常識の他に――最も北にある国のため、冬の時期が長く、雪も積もるせいで収穫物が少ない。これと言って目玉となる物もなく、木材を輸出している貧しい国だ。


 この世界のスタンダードな宗教である勇者教が資金援助か、権力行使をしたかは知らないが、何かをちらつかせれば宣戦布告に肩入れぐらいはする、か?


 ミーリスが追加情報を口にする。


「さらに付け加えるならオリーム王国は『北の魔女』――大魔術師と懇意にすることで大きな利益を得ているらしい」

「『北の魔女』? 大魔術師って……勇者教が聖人に指定しているあの『大魔術師』ですか?」


 勇者教にとって『勇者』と肩を並べて戦った『剣聖』、『大魔術師』、『精霊使い』スキル所持者は一段劣るが聖人として崇められ、大切に保護されることになっている。

 なので過去、世界を救った勇者の仲間と同じスキルを所持しているため、下手な国家、国王より権威が強い。

 だから『剣聖』のスキルを持つアビスは、勇者教内部でも強い権力を保持していたのだ。


 水精霊(ウンディーネ)情報で、勇者、剣聖、大魔術師が碌に仕事をせず足をひっぱり、最終的に魔王を倒したのが『精霊使い』――と言う名の『スキル創造者』だったらしいが。


 ミーリスはオレの問いに頷く。


「付け加えるなら賢者殿が決闘でぼこぼこにした剣聖アビスの母親が現スキル『大魔術師』の所持者だ。恐らく剣聖アビスが、母親の大魔術師に泣きついて賢者殿に復讐するため音頭をとっているんだろうな」

「あの剣聖の母親!? スキル『大魔術師』の所持者って……正直、初耳なんですが……」


 先程も口にしたがオレは元々子爵家嫡男だった。

 小国の貴族嫡男だが、それなりに世情は耳にしていたつもりだ。

 勇者教にスキル最多を持つ『剣聖』が居るのは有名だが、スキル『大魔術師』が存在し、さらに母親なんて初めて耳にしたぞ。


 ミーリスはオレの疑問に心底嫌そうな表情を作る。


「知らないのは当然だ。あたい達、研究者界隈ではある意味有名な人物だけどな。ただその研究内容がやばすぎて勇者教ですら、『聖人』として持ち上げるのを避けて、なるべく表に出ないよう隠蔽したんだよ」

「一体どんな研究内容なんですか?」

「……彼女の研究内容は『不老不死』だよ」

「「「!?」」」


 オレ、アリス、キリリが息を呑む。

 一瞬、水精霊(ウンディーネ)から伝えられた『水精霊(ウンディーネ)以外の火、土、風の精霊と同じように契約し亜神化すれば不老不死になる』という情報が漏れたかと考える。

 その結果、スキル『大魔術師』所持者が、オレを研究材料にするため出兵したのかと訝しんだが――直ぐに否定する。

 あの場から情報が漏れ、宣戦布告するまでの期間がいくら何でも短すぎる。


 何より情報が漏れないよう気を遣って隠蔽している。

『不老不死』情報が漏れたというより、『剣聖が母親に泣きつき復讐のため宣戦布告した』という方がしっくり来る。


 ミーリスはオレ達の胸中を知らず、気分悪そうに話を続ける。


「彼女は『魔石の力で食事を殆ど摂る必要のない魔物』の存在に着目して、奴隷や重犯罪者で人体実験を繰り返している外道だ。勇者教が『聖人』として宣伝するには印象が悪すぎる。そんな彼女をオリーム王国は優遇、黙認する代わりに『大魔術師』としての力を多種多様な方面で借りている。義理や恩恵の面から、『大魔術師』に脅されたらオリーム王国は逆らえず宣戦布告ぐらいはするだろうさ」


 魔物研究者の1人としてスキル『大魔術師』所持者の研究が『心底気に食わない』とミーリスの不機嫌顔には書かれていた。


 他にも情報としてダンジョン都市『ノーゼル』に来る前に、アイスバーグ帝国情報部が『剣聖との決闘に出席できなかった元自国のエルエフ王国が、最近内部で活発的な動きを見せているらしい』という情報も、元自国が今回の戦争のため色々動いていたのが原因らしい。


 情報部曰く、さらに調査した結果、密かに他国――西方にある戦国時代のように覇を競い合う小国群や最も南に存在する砂漠国家にまで声をかけているとか。

 当然、その国々には断られている。

 だが、例え彼らが一致団結したとしてもアイスバーグ帝国からすればたいした問題ではない。

 黙らせるのはそう難しい話ではなかった。


 問題は勇者教だった。

 その問題とは――。

スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

6章の戦争編に突入しました!

ついに剣聖&大魔術師や勇者教などとシュートがぶつかります!

どのような戦いになるのか是非是非お楽しみに!




また、本日(4月17日)昼12時に、ついに以前からお伝えしていた『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!


また初日ということで2話連続でアップする予定です(2話目は夕方予定。プラス短編分の1話があるので厳密には3話)。

詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。


頑張って書きましたので、是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 翌朝の午後っていつ? 翌日の午後なら分かるのだけど 間違いですか?
[一言] 国が滅ぼうとも宗教の信者は絶滅しませんものね… 勇者教が敵ってのはそこが厄介なところですかね?
[一言]  母子そろってろくでもない・・・・
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