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1話 相談

『賢者殿、少々相談があるのだが……時間を作ってもらえないだろうか』


 凶化暴走水精霊(ウンディーネ)と『ドラゴンの牙』問題が片づき、ダンジョン探査も通常通りおこなわれるようになって数日。

 ダンジョン都市『ノーゼル』を預かるミーリスから、メイドを通して相談を持ちかけられる。


 ノーゼルで寝起きする場所の提供や、凶化暴走水精霊(ウンディーネ)と『ドラゴンの牙』問題で、ミーリスには多々骨を折ってもらった。

 ミーリスからの相談を断れるほどオレの神経は太くない。


『了解しました。ミーリスさんの時間に合わせるのでご予定をお聞かせください』と返答。


 すぐに返事が来て、翌日には相談内容を聞くことになった。


 さて、その相談とは……。


「ダンジョン都市の慢性的な問題の解決ですか?」

「こういった話は筋違いで、為政者として非常に心苦しいんだが……賢者殿なら何かしらの光明を見いだせるのではないかと思って相談させてもらったんだよ」


 領主館リビングでオレはテーブルを挟んだソファー越しにミーリスと向き合う。

 今回はオレだけが呼ばれたため、アリス、レム、キリリは同席していない。

 3人はダンジョン探査を休み、アリス私室でお茶会を開いているはずだ。


 オレは1人リビングに顔を出し、頭の痛そうな表情をしていたミーリスから『ダンジョン都市の慢性的な問題の解決』について相談を持ちかけられていた。


 しかし、なぜ今更『ダンジョン都市の慢性的な問題の解決』なんて話が持ち上がったんだ?

 ミーリスが眉間に皺を寄せつつ、理由を説明してくれる。


「賢者殿にちょっかいを出して、伝説の怪物を誤って復活させた『ドラゴンの牙』がいたろう? アイツらはあたいのメンツにかけて全員逮捕、拘束して、罪に応じて罰を与えるが……今回の件で『ドラゴンの牙』の内部を調査した結果、それに関連して色々薄暗い問題が出てきたんだ」


 そう言ってミーリスは少し俯き、言葉を続ける。


「ここまで気付かず、増長させてしまった要因としてダンジョン都市の慢性的な問題が積み重なったことに原因があるとあたい達は判断した。そこで今後『ドラゴンの牙』のような問題を起こさないよう、少しでも改善しようと考えたんだが――」


 考えた程度で、ダンジョン都市にありがちな問題が片づいたら世話はない。


 かといって現状のまま放置も出来ず、ミーリス達上層部は頭を抱えてしまったようだ。


「そこで賢者殿なら、あたい達には思い付かない解決方法を提示してくれるんじゃないかと……」


 文字通り『藁にも縋る思い』で今回、相談を持ちかけてきたらしい。


(『ドラゴンの牙』は本当に最後の最後まで厄介事を持ち込んでくるな……)


 とはいえ、オレとしては渡りに船な部分もある。

 キリリには以前、『スラムの住人達の問題はダンジョン都市が出来て以来1度も解決していない問題なんです。酷な話ですが私達が動いても、手に余る案件です。なので今は自分達のやるべきこと、LV上げに集中するべきです』と注意を受けた。


 しかし、『魔物誘引剤』を持たされスラムのストリートチルドレンの少女が、ジャングルを走らされ、あわや魔物災害(モンスター・ハザード)を引き起こす前に、オレが異変に気付き少女を保護。

 アリス達と協力して、魔物災害(モンスター・ハザード)が大規模化する前に止めることが出来た。


 ストリートチルドレンの少女、弟妹は領主館に引き取られた現在、メイド&下男として教育を受けているが……少女達から聞かされたストリートチルドレン時代の生活を聞いて『オレに何かできないか』とつい考えてしまった。


 流石にミーリスの手前、口を出すのは憚れた。

 しかし、今回は彼女側から相談を持ちかけられたのだ。

 キリリには『ダンジョン都市が出来て一度も解決していない問題』と釘を刺されていたが、やはり見過ごすことはできない。


 オレは軽く息を吸い、吐く。

 ソファーに座り直し、改めてミーリスへと向き直る。


「分かりました。お役に立てるかは分かりませんが、是非協力させてください」

「賢者殿、ありがとう! 賢者殿に協力して頂けるなら、本当に心強い!」

「いや、お役に立てるかどうか決まった訳ではありませんから。まず、解決する問題はどんなのがあるんですか? 軽くキリリから耳にしてはいましたが、具体的には知らなくて」

「ダンジョン都市の問題は大きく分けて4つあるんだが――」


 ミーリスが右手指を4本だし、順番に問題を上げていく。

 簡単に纏めると以下だ。


・人が集まり過ぎて人口過密化し治安が悪化。

・金を稼げない浮浪者、ダンジョン攻略中ケガ等を負い働けなくなった者、孤児達が蔓延し不衛生化。

・食料品、消耗品などの値上がり。

・犯罪組織の跋扈


 以上4つだ。


 この4つが代表的な『ダンジョン都市の問題』らしい。


「恥ずかしい話、あたい達も連日連夜会議で話し合っているんだが解決案の一つも出なくて……。賢者殿、とっかかりでもいいから何か思い付かないかい?」

「……確実とは言えませんが、とりあえずおそらく4つともなんとかなるかと」

「…………えっ?」


 オレの発言にミーリスが首を傾げる。

 言葉は伝わっているが『意味が分からない』と彼女の表情が語っていた。


 言葉を反芻して、ようやく意味を理解しミーリスが再起動する。


「け、賢者殿……4つとも解決案があるってマジか?」

「実際、やってみないと分からない部分もありますが。一番簡単な治安の回復からだと……街に兵士、または周囲の評判が良い冒険者を24時間駐留させ、周囲を見まわりさせる建物、場所を作って複数を街に配置したらどうかと?」


 前世日本でいう交番だ。


 前世の記憶だが、南米方面、たしかブラジルだと思うが、『日本式の交番を導入後、治安が目に見えて回復した』というニュースを見た記憶がある。

 むしろ『海外に交番って無いんだ』とオレ自身が驚いた。当時、『交番』というものは世界中にあるモノだがと思いこんでいたからだ。


 この案にミーリスは顎に手を当て考え込む。


「警備兵士だけだと負担は大きいが、評判の良い真面目な冒険者を組み入れた建物を複数街に配置すれば確実に治安は良くなるか。場所の確保、資金の問題はあるが、冒険者に新しい仕事を作ってやれるのは大きいな」


 彼女は領主らしい顔つきでブツブツと考え込む。

 最初、自身のことを『お飾り』と表現していたが、実際真面目に領主をしていて感心する。

 一通り考察を終えたミーリスも、オレの案に感心を示す。


「駄目元で賢者殿に相談したが、まさかこれほど素速く、実現可能な案を出されるとは想像もしてなかったよ。賢者殿の発想力、いや頭の中身そのものがあたい達と違うモノなのかもしれないな」

「いえ、一緒ですから。ただ単に思い付いたことを口にしているだけですから」


 ミーリスは心底感心し切った表情で、手放しに称賛の言葉を口にしてきた。

 しかし同時に彼女の瞳が『新しい研究対象が出来たか?』と言いたげに怪しく光る。

 オレは彼女の怪しげな視線から逃れるため、さっさと次の案を出す。


 次の解決アイデアは――。

スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

5章に突入!

まぁ5章とか言ってますが、そんなにかからず6章の戦争編に入るんですけどねー。


昨日もお伝えしましたが――短編で『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ』します!』という作品を書かせて頂きました。


お陰様でなんとか連載版の準備が整いそうです。

予定では今月の4月17日金曜日、お昼(12時)には連載版をアップ出来るかと思います!

その際は是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 交番って海外でも『こうばん』の名称で施設が建設されるほど日本独特の文化らしいですね。 交番敷設で治安が回復すれば犯罪組織の跋扈も減るでしょうし、浮浪者や孤児に清掃業務でもやらせれば衛生問題…
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