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3話 お買い物

 翌朝、オレ達は帝都観光&大豆購入のために市場へと向かうため、変装してから離れを抜け出すことになっていたが……。


「アリス、本当にいいのか? 『スキル創造』で髪の毛や目の色を変えるスキルか、最初から認識し辛くなる認識阻害スキルを創ってもいいんだぞ」

「……大丈夫、必要ない。目立たないように変装するのは慣れているから」


 護衛、案内のために付いてくるアリス、キリリの場合、元々有名冒険者で、容姿も整っている。

 とくにアリスは目立つ銀髪をしているため、帝国人なら一目で何者か理解してしまう。

 目立つのを避けるため先程も口にした通り、髪の毛や目の色を変えるスキル、認識阻害スキルの込めたスキルオーブを2人に渡そうとしたのだが、この提案をアリスが拒否したのだ。


 アリスの言い分としては……。


「……自分がスキルオーブを頂いたら、賢者シュート様の奴隷になってスキルを得ようと帝国貴族達が娘や孫娘なんかを送ってくる。自分にはスキルオーブを贈って、なぜ自分達の娘や孫娘は駄目なのかと騒ぎ出すのが目に見えている。そういう隙を生み出さないためにも、スキルオーブは必要ない」

「姫様の言う通りです、下手に彼らに隙を与える必要はありませんよ。絶対、ろくなことにならないので。それにさらっと諜報に便利な規格外スキルを出さないでくださいよ……。お腹が痛くなるじゃないですか」


 アリスの意見にキリリが付け足し、胃の辺りを押さえる。

 個人的にお世話になっている2人にスキルオーブを渡すのは吝かではないのだが……。

 ここは大人しく忠告に従う。


 何より『スキル創造』関係なくオレ自身のことを心底心配してくれているのが伝わってきて嬉しかった。


 オレは既にどちらも所持しているのでスキルの力を使って、髪の毛を黒から金色に。

 瞳も青色に変化させる。

『スキル創造所有者は黒髪、黒目』という噂が先行しているため、これならオレだと特定されることはないだろう。


 一方アリス、キリリは旅人用ローブを頭からスッポリと被る。

 ローブのお陰で体形が誤魔化され、顔も隠れているせいでひと目で性別も分からず、外部情報から2人だとバレる心配もなさそうだ。


 準備が整った所で、オレ達は離れの裏手からこっそり外へと出るのだった。




 ☆ ☆ ☆




 最初は観光より、市場を回る。


 市場にもいくつか種類があって、今回は食料メインの市場へと向かった。


「想像以上に人が多いな!」

「……賢者シュー……若様、迷子にならないように気を付けて」


 アリスが『賢者シュート様』と言いそうになり、すぐさま事前に決めていた偽名『若様』と口にする。

 オレは帝都外部から見聞を広めるために来た大店の次期跡取りという設定になっている。

 2人はそんなオレの護衛だ。


 キリリが慣れた様子で先導し、人混みをすり抜け説明する。


「この市場は食料品メインで、特に個人客を中心に据えた市場なんです。なので朝、昼、夕方になるともっと人手が溢れるほど集まるんですよ」


 現在は朝より遅く、昼には早い時間だ。

 なのでこの程度の人混みで済んでいる。

 イメージ的に東京上野のアメ横を歩いている感覚に近い。


 前世、日本時代の記憶があるためこの程度の人混みに苦労することはない。

 これより酷い池袋、渋谷、新宿――夏と冬にあるオタクイベントに比べれば隙間風が吹いているレベルだ。


「若様、ここが個人市場でも豆の種類が揃っているお店ですよ」


 キリリの案内で目的の店に到着する。

 屋台骨は木で、屋根は日焼けした布で作られていた。

 深めの籠が並び、多種多様の豆が置かれている。


「すみません、商品を見せてもらってもいいですか?」

「あら劇場役者さんのように格好いいお兄ちゃんだこと。もちろん大歓迎。買ってくれるならおばちゃんオマケしちゃうわよ」


 豆売りの店員さんは恰幅の良いおばさんで、打てば響くように答えてくれる。


 オレは『ありがとうございます』と笑顔で答えつつ、豆類を見せてもらう。

 基本的によく分からない、この異世界産のが多いが……『鑑定LV9』のお陰で、どれが何なのか直ぐに把握することが出来た。


(おおぉ! ちゃんと大豆がある。他にも小豆やトウモロコシまであるのか)


 大豆を買うのが目的だったが、小豆、トウモロコシがあるなら見過ごす訳にはいかない。

 3つとも全て購入する。


「この3つをあるだけください」

「えっ!? こちらとしては買ってくれるのは嬉しいけど……そんな細い体で持てるのかい? 後ろの子達を合わせても無理だろう。なんなら後で使いを出して運ばせるけど?」

「大丈夫です。アイテムボックス持ちなので、これぐらいの量なら余裕です」

「アイテムボックス持ちなんて凄いじゃない! アイテムボックススキルを得るのが商人達の夢なのよね」


 アイテムボックスだと驚かれた後、おばさんから商品を受け取り、金銭を払うまで延々と話しかけられる。

 実際に一抱えある袋×3つをあっさりアイテムボックスに収納すると『うちの娘と会う気はないかしら? あたしに似て気立ても良い美人だよ』とハニートラップ的な勧誘すら受けた。


 おばさんの言う通りアイテムボックスを得ることは商人にとっては夢なのだと実感してしまう。

 オレは適当に微苦笑を零し、辞退しつつ店を後にする。


「無事に若様も目的の品物を買えたようなので次は観光でもしましょうか。若様、見て周りたいところとかありますか?」

「帝都は初めてで、有名な観光地も寡聞にも知らないから2人に任せるよ。アリス――アイリス(偽名)はお勧めの観光スポットとかある? ……アイリス?」

「…………」


 話を振ったアリスの耳にオレの言葉は届いていなかった。

 彼女は市場の一角にある串焼き屋の焼ける音、匂いに首っ丈だった。


「まだお昼には早いですが、姫、じゃなくてアイリスさんは本能に忠実というかなんというか……」

「あははは、でも確かに小腹も空いた事だし、折角だからご飯でも食べようか?」

「なら、お勧めのお店があるので、そちらをメインに。屋台は当たりハズレがありますから、あくまでつまむ程度にしておきましょう」


『お昼ご飯を食べ終えたら、帝国の観光スポット見て回りましょうね』とキリリが締めくくる。


 オレは同意すると、アリスがジッと見つめる屋台へ向かって一歩踏み出すのだった。


本作『【連載版】廃嫡貴族のスキルマスター ~廃嫡されましたが、『スキル創造』スキルで世界最強のスキルマスターになりました!?~』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


スキルマスター以外にも、『【連載版】しんじんまおうのダンジョン経営。ようこそ! 『ドリーム・ダンジョン』へ! ~娯楽ダンジョンで日本製エンターテーメント無双~』を連載作品として書き直させて頂きました。

こちらの方も是非チェックして頂ければ嬉しいです。


一応作者の名前をクリックすれば移動できますが、他にも移動しやすいようにアドレスを下に張らせて頂きます。

『【連載版】ようこそ! 『ドリーム・ダンジョン』へ! ~娯楽ダンジョンで日本製エンターテーメント無双~』

https://ncode.syosetu.com/n5169fz/

です。


他にも『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』をアップしております。

こちらは現在毎日更新中で、1章が終わって現在2章に入っております。

2章では『軍オタらしい盛り上がり』が多々あるので、是非チェックして頂けると幸いです。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  この様な作品傾向の中でもハーレム臭(現時点)が薄いのが、作品に集中できます。(=姫様の残念度が原因か?)  確かに自分の作品だけど皆さん夢を突っ込みすぎ・・・ [一言]  本日よりお邪魔…
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