7話 転移
『ガアァァァァァァァッ』
スキル『誘き寄せ』で集まった100匹近いオーガの1体がオレに向かって襲いかかってくる。
赤茶肌のオーガが雄叫びを上げ、鉄の棍棒を振り下ろす。
オレは軽く避けて、手にした『ゴーレム・ソード』を首筋狙いで振り抜く。軽くしか力を入れていないにもかかわらず、まるで最初から切れていたのかと疑うほどの抵抗の無さでオーガの首が刎ねられた。
「思った以上に『ゴーレム・ソード』の切れ味がいいな。重さも形も好きに変えられるから、予想したよりずっと使い勝手がいい」
背後から斧を振るってくるオーガに目も向けず、回避。
振り抜きざまオーガの首を刎ね、左右から襲ってくるのも一回転しつつ首を落とす。
この前戦ったアビスは剣の才能は無かったが、スキル『剣聖』持ちだけありそこそこ強かった。
彼に比べればオーガの剣筋など、目を瞑り、耳を塞がれても余裕で対処できる。
お陰でアリス、キリリの様子も確認できた。
まずはアリスから。
「……ふっ!」
彼女は鋭い踏み込みで地面を砕きつつ、オレ手製の『ゴーレム・ソード(大)』を振り抜く。
この一閃だけで目の前にいたオーガ5、6体が両断される。
さらにアリスは勢いを止めず、むしろ逆らわずに背後から迫っていたオーガへ再び剣を振り抜く。
背後のオーガもその一閃で、4体が上下に体を両断されてしまう。
アリスが使う『ゴーレム・ソード(大)』の切れ味が鋭いのもあるが、彼女の剛力で力任せに断ち切っているというのもある。
普通の剣なら、力任せに使い続ければ切れ味が落ちてただの鈍器化するが……オレが作った『ゴーレム・ソード(大)』にはスキル『超回復』がほどこされている。
お陰で斬った後、潰れた刃が勝手に自動回復してくれるのだ。
なのでどれだけ乱暴に扱っても、切れ味が落ちることはない。
ただの剣では出来ない芸当だ。
(さすがに刀身が折れたらどうしようもないけど)
アリスの要望で重く、壊れ辛くするため魔法も併用しガチガチに硬くしている。
滅多なことでは折れるはずがないが……彼女の戦い振りを見ていると、『耐えきれず壊れるかも』と思わせる鬼神ぶりだ。
続いてキリリに視線を向ける。
「敵を貫け、アイスランス!」
オレとアリスの剣が届かない距離に居るオーガが、投石などの遠距離攻撃をしかけようとするのをアイスランスで狩る。
『自分で殲滅』というより、オレとアリスのサポートに徹していた。
片目を眼帯で塞いでいる割りに視野が広い。
「うわぁ、うわぁ魔法抵抗が高いオーガをアイスランス1発で倒せるとか。ちょっと前の私じゃ考えられない。これがシュート様から頂いたスキルの力なのね……凄過ぎるでしょ」
魔法でサポートしつつ、自身の実力を前と比較する余裕を持っていた。
アリスはともかく、キリリには助けが必要かとも思ったがその心配はなさそうだ。
一応念のため2人に気を配りつつ、LVアップのためのオーガ討伐に勤しむのだった。
☆ ☆ ☆
「今日はこんな所でいいだろう」
「よ、ようやく終わりなんですね……つ、疲れました」
オレの言葉にキリリが手にした杖に体重をかけて、肩で息をする。
今日だけで数百体のオーガを相手取ったのだから当然といえば当然の反応だ。
「……確かに疲れたけど賢者シュート様の『デコイ』、『誘き寄せ』のお陰でLVが10も上がった。レムも強くなって嬉しい」
「やー」
アリスはレムを抱っこして嬉しそうに頬擦りする。
彼女の指摘通り、スキル『デコイ』、『誘き寄せ』が大活躍した結果、オレ達全員がLV10アップした。
以下が皆のステータスになる。
名前:シュート
年齢:14歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:61
体力 :20000/20000
魔力 :10000/10000
筋力:4000
耐久:4200
敏捷:1500
知力:850
器用:1100
スキル:『スキル創造』『剣聖』『時間操作LV7』『デコイ(new!)』『誘き寄せ(new!)』『転移LV4(new!)』『騎士LV8』『光魔法LV8』『気配遮断LV8』『隠密LV8』『気配察知LV8』『健脚LV8』『逃走LV8』『韋駄天LV8』『直感LV8』『剣術LV8』『格闘LV8』『火魔法LV8』『水魔法LV8』『風魔法LV8』『土魔法LV8』『闇魔法LV8』『身体強化LV8』『HP強化LV8』『MP強化LV8』『頑強LV8』『魔力耐性LV8』『物理耐性LV8』『精神耐性LV8』『鑑定LV9』『ステータス擬装』『スキル経験値増大』『LV経験値増大』『裁縫LV8』『皮加工LV8』『鍛冶LV8』『生産技能LV8』『抽出LV8』『索敵LV8』『槍術LV8』『斧術LV8』『回復LV8』『超回復LV8』『MP回復速度LV8』『攻撃魔法強化LV8』『アイテムボックスLV8』『魔力ボックスLV8』etc――。
称号:廃嫡貴族のスキルマスター(準亜神)
名前:アリス・コッペタリア・シドリー・フォン・アイスバーグ
年齢:14歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:60
体力 :5000/5000
魔力 :30/30
筋力:3000
耐久:2500
敏捷:400
知力:0
器用:400
スキル:『アイテムボックスLV6』『超怪力LV7』『直感LV7』『マルチウェポンLV6』『頑強LV7』『身体強化LV6』『超回復LV6』『ウォッシュLV8』『大食いLV6』『騎士LV5』『剣術LV5』『格闘LV5』『怪力LV5』『気配遮断LV5』『隠密LV5』『気配察知LV5』『健脚LV5』『逃走LV5』『韋駄天LV5』『HP強化LV5』『回復LV5』『魔力耐性LV5』『物理耐性LV5』『精神耐性LV5』『スキル経験値増大』『LV経験値増大』
称号 :アイスバーグ帝国3女
名前:キリリ・マルチネル
年齢:14歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:55
体力 :1800/1800
魔力 :2000/2000
筋力:250
耐久:270
敏捷:190
知力:300
器用:60
スキル:『魔眼』『鑑定LV7』『火魔法LV7』『水魔法LV7』『MP強化LV6』
『光魔法LV5』『風魔法LV5』『土魔法LV5』『闇魔法LV5』『気配遮断LV5』『隠密LV5』『気配察知LV5』『健脚LV5』『逃走LV5』『韋駄天LV5』『HP強化LV5』『MP強化LV5』『身体強化LV5』『頑強LV5』『回復LV5』『超回復LV5』『MP回復速度LV5』『攻撃魔法強化LV5』『魔力耐性LV5』『物理耐性LV5』『精神耐性LV5』『スキル経験値増大』『LV経験値増大』『直感LV5』『アイテムボックスLV5』『魔力ボックスLV3』。
×
称号:帝国3女の従者(帝国1の苦労人)
名前:レム
年齢:0歳
種族:新種族?
状態:正常
LV:35
体力 :800/800
魔力 :800/800
筋力:160
耐久:210
敏捷:190
知力:80
器用:80
スキル:『空気中に漂う魔力吸収』『光魔法LV5』『火魔法LV5』『水魔法LV5』『風魔法LV5』『土魔法LV6』『闇魔法LV5』『身体強化LV5』『MP強化LV5』『頑強LV5』『魔力耐性LV5』『物理耐性LV5』『回復LV5』『超回復LV5』『MP回復速度LV5』『攻撃魔法強化LV5』『アイテムボックスLV5』『魔力ボックスLV3』etc――。
称号 :イレギュラー存在
オレ、アリス、キリリがLVを10上げ、レムはあの後5上げた。
初日にしてはかなりの良い結果になったと思う。
オレなんてついに魔力が1万に到達。
他ステータスもかなり伸びた。
この状態で準亜神剣『クリムゾン・ブルート』を握ったら――。
もうオレ自身がラスボスのような状態になるのではないか?
そんなアホな事を考えていると、キリリに声を掛けられる。
「オーガも回収済みですし、地上に戻りましょうか。急がないとダンジョンを出るのが遅くなって深夜になっちゃいますからね」
「帰り道なら心配しなくていいぞ。オーガとの戦いで新しいスキル『転移』がLV4になったから、帰りは一瞬で一階に戻れるから」
「……え、なんだって?」
キリリが難聴系ハーレム主人公のような台詞を口にする。
「いや、だからスキル『転移LV4』があるから帰りは一瞬で1階に戻れるぞ」
「て、て、てて転移って!? いつそんな神スキルを取得したんですか!? あれは魔力が1億ぐらい必要だから当分取得できないとかなんとか言ってたじゃないですか!?」
彼女が驚きつつ、ツッコミを入れてくる。
オレは自分達以外、周囲に人影が無いため素直に答えた。
「キリリの言う通り『時間操作』や『剣聖』を取ったから、オレ自身『転移』は当分取得できないと思っていたんだが……準亜神剣『クリムゾン・ブルート』と『準神話級魔力回復ポーション』のお陰で、『魔力ボックス』に魔力を溜めるスピードを上げることが出来てさ。つい最近、取得できたんだよ」
今までは昼夜問わず『魔力ボックスLV8』に魔力を溜めていた。
夜の寝る間際になると魔力を使い切り、回復ポーションを飲みつつ溜め込んでいた。
しかし準亜神剣『クリムゾン・ブルート』でステータスを底上げして、魔力を強化し、『魔力ボックスLV8』へと流し込む。
魔力が切れたら『準神話級魔力回復ポーション』をひと舐めし全回復。
これを繰り返して、魔力を溜めたのだ。
「準亜神剣『クリムゾン・ブルート』も便利だが、『準神話級魔力回復ポーション』が特に良くて。前は魔力回復ポーションを1本まるまる飲まないと回復しなかったけど、ひと舐めで済むから効率が段違いで本当に助かったよ」
オレの説明にキリリが頭を抱える。
「も、もう凄すぎて、何から驚けばいいか分かりませんよ……」
「……キリリは難しく考えすぎ。賢者シュート様は伝説中の伝説である『スキル創造』。偉大なのは今更。頭を抱えるようなことじゃない」
「ぱぱ、すごい、かっこいい」
キリリとは正反対にアリスは『賢者シュート様ならこれぐらい出来て当然』と胸を張り、レムは素直に賞賛してくる。
オレはレムの頭を撫でつつ、皆に告げた。
「それじゃ忘れ物が無いなら戻ろうか。『転移LV4』だと長距離移動できる人数は4人までで、オレの体のどこかに触れていてくれればいいから。皆、準備はいいか」
「……問題無し」
「私も問題ありません。ちょっと事実を認識しきれず頭が痛いぐらいで」
「やー」
アリスがレムを撫でるオレの手に重ね、キリリは肩に触れる。
皆が触れているのを確認して、意識を集中。
1階イメージを描く。
転移先に人や障害物が居る場合、弾かれるようだが……現在はそんなことはないため問題なく飛べそうだ。
「1階に転移……ッ」
慣れていないため声に出す。
視界が暗転し、青空、草原、森、川が流れていた25階から、一瞬で1階の洞窟空間へと移動する。
文字通り一瞬で景色が切り替わった。
移動した場所は背負子を準備した広い洞窟空間だった。
運良く周囲に人はいなく、転移した様子を見られずに済む。
「……本当に1階に移動している。25階まで姫様達の足で2時間以上かかったのに戻りは一瞬とか。だ、ダンジョン探査の常識がく、崩れる……」
キリリは呆然とした表情で当たりを見回す。
まるで狐か、狸に化かされたような人の態度だった。
「……賢者シュート様、キリリ、早くダンジョンを出よう。暗くなる前に冒険者ギルドに行きたいから」
呆然とした様子のキリリ、彼女を眺めていたオレをレムを抱っこしているアリスが声を掛けてくる。
彼女はマイペースにダンジョン出口へ行こうとしていた。
オレ達は彼女の声に促され、初日のダンジョン探査を終えるため出口へと向かうのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
レムだけではなく、目的通りシュート達もLVアップ!
このまま素直にLVアップしていければいいですが……。
まぁ当然色々問題が発生するですけどね!




