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5話 新装備

 まだ午前中で時間に余裕があるためオレ達は早速、ダンジョンへと踏み込む準備を整える。

 オレはいつものレッサーブラックドラゴンから作られた黒革鎧に、今回のために準備した『ゴーレム・ソード』を準亜神剣『クリムゾン・ブルート』の代わりに腰へと差す。


 アリスもいつもの白い鎧に、オレが手製で作った『ゴーレム大剣』を所持している。『ゴーレム大剣』は大きいのでアイテムボックスに入れており、戦う時に出して使う予定だ。


 キリリは特に装備変更無し。

 魔術師のため武器、防具より『スキル創造』で多数覚えたスキル系の方が重要である。


 オレとアリスの武器以外、大きな装備変更は無かった。


 一番変わっており、目立つのはレムである。


『中央大森林』奥地に生息するビックスパイダーの糸を黒く染め、ゴシックロリータ服に編み上げているものを装備。

 魔力を通すことで並の装備以上の防御力を発揮するのだ。

 さらに胸当てとブーツは、オレと同じレッサーブラックドラゴンの革を使用している。

 ここまでは金持ちのお嬢様なら準備できる代物だが……頭部のウサギ耳ヘッドホンはオレの完全お手製だ。

 オレが作らない限り絶対に手に入れられない。


 黒いゴシックロリータ服に革装備、頭にウサギ耳ヘッドホンというレムの姿に、アリスは両手で頬を押さえうっとりと眺め、キリリはツッコミを入れてくる。


「……レム、可愛い、ちょー可愛い」

「な、なんですかこれは……シュート様の趣味でしょうか?」

「違う違うって。嫌、絶対に違うって訳じゃないけど、意味もなくウサギ耳の形になっているわけじゃないんだ。それはゴーレムで、ウサギ耳をした集音装置なんだよ」


 レムは新種族のためどんな力があるか分からなかった。

 なので色々実験した結果、ゴーレムと非常に相性が良かったのだ。


 どれだけ相性が良いかというと、敵ゴーレムの支配権を奪えるレベルである。

 元ゴーレムに準亜神の血が混ざったせいで、ゴーレムの女王的存在になっているのかもしれない。

 あくまで仮説だが。


 故にゴーレム操作、命令、支配などの能力が非常に高いことに着目し、多種多様なゴーレムで武装させることを思い付いたのである。

 ウサギ耳の形をした集音装置ゴーレムのその一つだ。

 音を拾うことで、ダンジョン内部でも敵の位置を正確に把握できるという優れものである。


「ただの集音装置を装備させるより、可愛さと性能を追求した方がいいと思ってこういう形にしたんだ」

「……賢者シュート様は天才。ちょー天才! 神様より偉い」

「姫様、興奮し過ぎですよ。まぁ確かに非常に可愛いですが。しかしシュート様は料理だけではなく、こうした服飾デザインもセンスがあるんですね。本当に多芸で驚きますよ」


 アリスには大受け、キリリも説明を聞いて納得するとレムの可愛さに頬を弛めた。


 装備も調えた所で早速出発する。

 馬車を用意する云々と言われたが、辞退。

 街の空気を知るため徒歩で向かう。


 アリスが先導し、オレがレムを抱きかかえ、背後ではぐれないようキリリが付く。


「想像以上に人が多いな」

「貴族街から来たから、そういう印象を受けるというのもありますけどね」


 オレの独り言に背後に居るキリリが反応する。

 前世日本の新宿、渋谷ほどではないが、それなりに人がいて貴族街との落差に驚く。

 また貴族街はダンジョン出入口が一番遠い。

 ダンジョンの出入口とは真逆にある。

 徒歩移動だと時間がかかった。

 この理由もキリリが説明して教えてくれた。


「貴族街からダンジョン出入口が遠いのは、もし魔物災害(モンスター・ハザード)が発生した際、被害を減らすためなんです。ダンジョン出入口を城壁のような壁で囲っていますよね? あれも魔物災害(モンスター・ハザード)対策に準備されたものです」

「過去に魔物災害(モンスター・ハザード)は起きたからあんなに厳重なのか?」

「いえ、過去、別のダンジョンで起きたため一応警戒して貴族街を反対側にしたり、城壁のような壁も作り兵士を常駐させているんですよ」


『ノーゼル』のダンジョンは常に冒険者達が潜っているため、魔物災害(モンスター・ハザード)が起きることはほぼないとか。

 だが念のため対策を施しているらしい。


 人混みを抜けると、ようやくダンジョン出入口に到達する。

 城壁のような壁に、鋼鉄製の扉が大きく開き、その奥に暗い怪物が大口をあけているようにダンジョン入り口が見え隠れしていた。

 入場するため兵士達が冒険者タグを確認。順番に中へと入場させている。オレ達もその列に並んだ。


 ダンジョン出入口周辺も非常に賑わっている。

 両端には屋台が並び、中に入るため列に並ぶ冒険者に『地図はいるかい? 安くしておくよ』、『美味しい携帯食料が今ならこのお値段』、『回復ポーション、毒消しポーション、魔力(MP)回復ポーションなんでも揃っているよ』などと売り子が話しかけていた。

 他にも気になる点として、


「あの壁前に屯している子供達はなんだ? 痩せているし、衣服もボロボロで、ダンジョンに潜る冒険者ではないよな」

「……あれは孤児院にも入れないスラムの子供達。ああして冒険者に荷物運びの仕事をもらうのを待っているの」


 アリスが悲しげに表情を曇らせる。

 つまりストリートチルドレンか。

 幼い子供のああした姿は胸に来る。

『彼、彼女達のような子供を減らすために何かできないか』と頭に案を巡らせるが、キリリが釘を刺す。


「姫様、昔もお話しましたが安易に手を出そうとしないでくださいね。シュート様もです。ああいうスラムの住人達の問題はダンジョン都市が出来て以来1度も解決していない問題なんです。酷な話ですが私達が動いても、手に余る案件です。なので今は自分達のやるべきこと、LV上げに集中するべきです。集中力を欠いてダンジョンで致命傷や命を落としたら洒落になりませんから」

「……分かっている。キリリの言うことは正しい」

「確かにキリリの言葉通りだ。あの子達に同情してオレ達が怪我や命を落としたら元も子もないよな」


 彼女の自ら進んで泥を被る姿勢は本当に感心させられる。

 いくら諫言のためとはいえ、冷たい発言は本人だって気持ちいいモノではないし、場合によって主に煙たがられもする。

 勇気がいるものだ。


 しかしキリリは躊躇わず諫言してくる。

 その姿勢は尊敬できるものだった。


 オレ達の番になる。


「タグを拝見します」

「どうぞ」

「ッ!? あ、ありがとうございます!」


 オレとアリス、キリリのS級ランクタグを見て担当した兵士がピンと背筋を張り、敬礼してくる。

 他冒険者とはあまりに違う態度に、周囲は首を傾げるが、オレ達は気にせずさっさとダンジョン内部へと足を踏み入れた。


「……ここがダンジョン内部なのか」

「シュート様、立ち止まると後続の邪魔になるので、ダンジョン見学はもう少し移動してからにしましょう」

「悪い。直ぐに移動するよ」


 キリリが慣れた様子で背後からダンジョン内部奥へと進むよう指示を出す。

 オレは逆らわずレムを抱き上げたまま、さらに奥へと進んだ。


 ダンジョンの壁には薄ぼんやりとしたコケのような植物が生えているため薄暗くはあるが、光源に困ることはない。

 床、壁、天井全てがごつごつとした岩で、若干湿っている。

 まるで洞窟内部を歩いているようだ。


「しかし広いな。これでまだ地下1階なんだろ?」

「地下1階だけで『ノーゼル』とほぼ同じ広さがありますから」

「……地下深くに行くともっと広さがある」

「へぇ~」


 経験者2人の会話に思わず感心の声音を漏らす。

 地上であれだけ冒険者が溢れているから、ダンジョン内部はもっと密集しているかと心配していたが、それだけ広ければ心配する必要はなさそうだ。


「……この辺でいいかな」


 アリスは立ち止まると『アイテムボックス』から背負子を取り出す。


「? アリス、なんで背負子を出すんだ?」

「……1階はゴブリン、スライム程度しかいない。LV上げには不向き。もっとLV上げに適した階層にさっさと行くべき」


 アリス達は30階層まで進んだらしい。

 ちなみに現在は40階層だ。

 25階層にLV上げに適した敵がいるので、そこまでの道順も知っているためさっさと向かおうというのである。


「……シュート様と自分の足なら2、3時間で付くはず」

「了解、それじゃレムはオレがこのまま抱っこするよ」

「やー(はい)」

「予想はしていましたが……ダンジョン内部でまたコレに乗る日が来るとは……」


 キリリが諦めた表情で背負子に座る準備をする。

 過去、同じように移動したんだろうな。


 準備を終えると、オレ達はLV上げに適した25階層に向けてアリス先導で走り出したのだった。


スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

次はいよいよダンジョン内部での戦闘になります!

是非お楽しみに~。


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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョン突入! はたして、キリリは無事にたどり着くのか!? 次回、キリリ(の尊厳)死す!デュエルスタンバイ!!
[一言] ウサ耳やネコ耳などのケモ耳って良いものですよね!
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