1話 LV上げ場所
「……自分達のLV上げと一緒にレムのも上げたい。レムは可愛いから、誘拐されそうになったり、手を出そうとした際、相手を叩き潰せる力を付けてあげたい」
「アリス、何を物騒なことを言っているんだよ……」
午後、裏庭にあるテーブルでのんびりお茶を飲んでいると、アリスが提案してくる。
レムとはゴーレムに多数のスキルと『準神話級魔力回復ポーション』を混ぜた結果、奇跡的に誕生した新種族だ。
『準神話級魔力回復ポーション』を混ぜたせいか、顎先まで伸びた髪は黒い。
現在は黒を基調としたゴシックロリータ的衣服を着て、外見だけなら非常に可愛らしい不思議系美幼女だ。
しかし服の下の手首、足首、股関節などが球体関節になっているため、一目で人間ではないことが分かる。
ゴシックロリータ的衣服にしたのもレムによく似合うというのもあるが、球体関節を隠す意味合いが強い。
そんなレムをアリスが非常に可愛がっており、みたらし団子を串ごと『ポリムニ、ポリムニ』と食べている彼女の世話を隣でしている。
アリスは白を基調にしているため、2人が並ぶと白黒で非常に見栄えが良い。
口にする台詞は非常に物騒だが……。
彼女の提案に従者のキリリが賛成する。
「私は姫様の提案に賛成です。レム様はシュート様の血を引いているだけあって、非常に可愛いですから。その手の人間が見たら例え国を相手にしても手に入れようと躍起になっても可笑しくないですよ。なので、いざという時に最低限逃げられるようLVを上げておくべきかと」
「オレの血を引いているからかどうかはともかく、可愛いのは確かだよな」
顎先まで伸びた黒髪にリボンを飾り付け、大きな瞳に睫毛は長く、血色の良い肌に影を作る。
唇は薔薇色で、みたらし団子を食べるたびにちらちら見える歯は磨かれた真珠のように真っ白で綺麗だ。
将来このまま成長すれば絶世の美女に育つだろうと100人中100人が考えるほど顔立ちが整った美幼女だ。
キリリの指摘通り幼女好きからすれば、レムほど食指を動かされる存在はない。
「それにレム様を誘拐されてシュート様の血が原因で作られたゴーレムだと知られたら非常に厄介なことになりますから。その防止のためにも必要かと」
「……? 準亜神剣ならともかくレムが賢者シュート様の血で作られたと知られて何が問題なの?」
アリスが『心底分からない』と言いたげに首を傾げる。
キリリが溜息を一つして説明した。
「いいですか姫様……。偶然とはいえシュート様の血でレム様が作られました。仮にシュート様の血で私達に都合が良い、家畜のような『魔物』を作り出すことが出来るようになる、と多くの人が考え出したらどうなると思います? 日常生活を助けてくれる魔物なら1万歩譲ってまだマシですが、絶対に研究者は戦争に利用する魔物を創りだそうとしますよ。賭けても良いです」
「……それは危険。絶対に漏さないようにしないと」
アリスはようやく危機感を覚えたのか、レムの頭を撫で『絶対に賢者シュート様と一緒にレムも守る』と瞳を燃やす。
キリリの指摘通り、レムのような存在を生み出せる方法が表沙汰になったら、確実に平和利用ではなく兵器へと転用されるだろうな。
そんなことはごめん被る。
「既にゴーレム剣――『ゴーレム・ソード』も作り終えているし、LV上げは最初から規定路線だからついでにレムのを上げるのも問題はないぞ。ただどこでLV上げするかだな」
準亜神剣『クリムゾン・ブルート』を隠蔽するためのゴーレム製武器作製が終わったら、皆でLV上げ場所を話し合おうと約束していた。
オレとしてはLV上げについて慣れている『中央大森林』を提案するつもりだったが、最近勇者教の抗議が無駄に大きいため行くのを躊躇ってしまう。
原因は剣聖との決闘の際、アビスが持っていた魔剣『グランダウザー』を真っ二つにしてしまったためだ。
魔剣『グランダウザー』は勇者教にとってただの武器ではなく、自分達の権威を示すものだった。
オレがその魔剣『グランダウザー』を意図した訳ではないが、真っ二つに斬ってしまった。
結果、修復不可能となった魔剣『グランダウザー』の弁償か、『スキル創造』所有者であるオレを勇者教に引き渡すか、彼らの望むスキルを創らせるか、新しい魔剣をオレに作らせろと勇者教の一部が騒いでいるのだ。
決闘の『何が起きても文句を言わない』という約束事を守らないとは……。
オレなら魔剣『グランダウザー』を修復できるがそこまでやる義理はない。
その訴えが日に日に強くなっている。
『中央大森林』の側の街は勇者教の影響がそこそこ強い。
毎日、宿屋や街中で待ち構えられて訴えてこられたら面倒過ぎる。
「だからアリス、キリリは『中央大森林』に代わるどこか良いLV上げ場所を知らないか?」
「……だったら良いところがある。ダンジョン都市がお勧め」
「うっ、頭が!」
アリスが自信満々に『ダンジョン都市』の名前を上げると、キリリが頭を抱える。
ダンジョン都市は帝国首都から、馬車で5日ほど北上した場所にある『ノーゼル』という名前の都市だ。
ダンジョンが都市内部にあるため、『ノーゼル』ではなく『ダンジョン都市』という名の方が有名である。
「……自分とキリリはダンジョン都市でLVを上げていた時期があるから、色々詳しい。街も自分の姉が統治しているから融通が利く。勇者教もおいそれと手を出せない」
「姫様、ダンジョンの中で罠があると分かっていながら進まないで下さい。LVを上げやすいからとモンスターハウスに突っ込まないで! 食料が足りないから、その魔物を食べる。駄目です! その魔物は食べられないですから!? 止めて! 冒険者を叩き潰しちゃ駄目! しかも相手は国外高官の息子さんなんですから!? ひ、姫さまぁッ――」
自慢気に胸を張るアリス。
トラウマを思いだしているのか青い顔で頭を抱えるキリリ。
対照的な2人を前に、すぐには反応できなかった。
レムはマイペースに団子を食べる。
(ゴシックロリータ美幼女が淡々と団子を食べる姿はシュールだな……)
つい現実逃避でレムをぼんやりと見つめてしまう。
オレの視線に気付いたレムが、手にした団子を食べたいのかと勘違いして、自身の食べかけの団子を差し出してくる。
「ぱぱ、あーん」
「ありがとう、レム。うん、美味しい。あとはレムが食べて良いから」
「やー(はい)」
オレに団子を食べさせて満足したのか、再びもくもくと食べ始める。
アリスはレムに『あーん』されたのが羨ましく、『自分も食べさせて欲しい』とジッと瞳で訴える。
しかしレムには届かず、彼女はマイペースに団子を食べる。
その姿が非常に可愛らしいが、いつまでも現実から目を逸らしてはいられない。
オレは軽く咳払いをしてからアリスの提案を拾う。
「とりあえずアリスの提案通りダンジョン都市でLV上げするか。オレ達やレムのLV上げにもちょうど良さげだしな」
「シュート様……」
オレが賛成すると、トラウマに呵まれていたキリリが復活し、手を握り締めてくる。
「姫様の手綱を握れるのはこの広い世界でもシュート様だけです。だからお願いします。シュート様だけが頼りですから……ッ。本当にお願いします!」
「了解、微力ながら努力するよ」
キリリの必死な言動に、オレは微苦笑しながら返答した。
こうしてオレ、アリス、レム、キリリの4人でダンジョン都市『ノーゼル』でのLV上げが決定したのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
感想返答をアップさせて頂きました。
ついに新章に突入します!
この4章ではダンジョンがメインの話になります。
今度はダンジョンという舞台でシュート達がどんな活躍をするのか?
是非、お楽しみに!
また活動報告に感想返答をアップしました!
よければご確認くださいませ~。




