5話 ゴーレム(?)幼女
「……裸のままは可哀相だから、これを羽織って」
アリスがアイテムボックスから毛布を取り出し、幼女へと歩み寄る。
白目を剥いていたキリリは主の行動に気が付き、目を覚ましその様子を窺う。
「……ん、温かい。そんなに重くもない」
「?」
アリスは地面に膝を突き、ゴーレム(?)幼女に毛布を掛けると抱き上げる。
地面にいつまでも素肌で触れさせるのは可哀相だと考えたのだろう。
ゴーレム(?)幼女はアリスに視線を向け『誰だろうこの人』と言いたげに首を傾げたが特に抵抗せず抱きかかえられる。
アリスが動いてくれたお陰でオレとキリリもなんとか再起動出来た。
「……彼女は何者なんだ」
「ぱぱ」
オレがゴーレム(?)幼女に手を伸ばし触れると、彼女は嬉しそうな声音で『パパ』と呼んでくる。
色々言いたいことがあるが今は脇に置いて、彼女を手で触り確認、観察した。
(髪の毛もさらさらで体温も有るし、肌も人間のように柔らかい。人肌と言われても納得できるぞ!)
しかし毛布からのぞく足首には球体関節が存在しているため人ではないのは一目瞭然だ。
では彼女は一体何者なのかと問われたら答えに窮してしまうが。
「と、とりあえず『鑑定LV9』で確認してみよう。アリス、そのまま彼女を動かさないでくれ」
「……分かった」
オレの指示にアリスが返事をした。
オレは意識を集中し、『鑑定LV9』でゴーレム(?)幼女を確認するが――。
『?』
いつもならすぐさま反応する『鑑定』が首を傾げているのを感じた。
えっ、嘘だろ『鑑定LV9』! この異世界で最高峰の『鑑定LV9』だぞ!?
さらに集中して幼女を見るが……。
『? ? ?』
か、鑑定! 鑑定さん!?
鑑定スキルを担当する上位者、神様的存在が、ゴーレム(?)幼女を前に酷く混乱しているのを感じとる。
『何これ?』『え、また問題』『昨日も仕様に無いスキルを創ったばかりなのに!?』『ふぇぇぇ、何この娘! ……いや、本当に何?』『ちょw ガチでイレギュラー存在じゃんwww』『もう本当になんなのこいつ! イレギュラーばっかりおこして!』『とりあえず何かしら表示しないと!』
複数の神様が問題を前にわたわたするイメージが伝わってくる。ネットゲームの運営側が想定していないゲームの穴やバグを突いてプレイヤーがおこした問題を残業上等で処理しなければならい的空気を感じてしまう。
き、きっと気のせいだ。あくまでオレが感じるイメージでしかないのだから!
「しゅ、シュート様……何か分かりましたか?」
「ちょっと鑑定の調子が悪いみたいで……。もう少しだけ待ってくれ」
「LV9の鑑定の調子が悪いって、怖いこと言わないでくださいよ」
キリリのツッコミを聞き流し、再度スキル『鑑定LV9』で確認する。
大丈夫、上位者、神様的存在を信じろ!
願いが通じたのかフレーバーテキストが表示される。
『新種族?』――ゴーレムにスキルを多様に所持させ、準亜神の血を混ぜた結果、奇跡的に誕生した新種族? 存在自体がイレギュラー。
名前:無し
年齢:0歳
種族:新種族?
状態:正常
LV:1
体力 :100/100
魔力 :100/100
筋力:10
耐久:60
敏捷:5
知力:5
器用:5
スキル:『空気中に漂う魔力吸収』『光魔法LV1』『火魔法LV1』『水魔法LV1』『風魔法LV1』『土魔法LV1』『闇魔法LV1』『身体強化LV1』『MP強化LV1』『頑強LV1』『魔力耐性LV1』『物理耐性LV1』『回復LV1』『超回復LV1』『MP回復速度LV1』『攻撃魔法強化LV1』etc――。
称号 :イレギュラー存在
「……けっぷぅ」
胃を締め付ける痛みと共に、喉から異音が漏れる。
どうやらゴーレムに多数のスキルと準亜神の血を使った準神話級魔力回復ポーションを混ぜた結果、奇跡的にこの異世界には存在しない『新種族』を誕生させたようだ。
ゴーレム(?)幼女に体温があるのは火魔法、瞳の潤いは水魔法、体の柔らかさ、成人男性並に硬いのは土魔法の影響だろう。
また彼女の魔力がLV1にしては高く、髪が黒いのも、オレのことを『パパ』と呼び懐くのも準亜神の血が混ざっているからのようだ。
「……シュート様、鑑定は終わったようですね。全て、隠さずお話してください」
キリリが笑顔を浮かべて詰め寄ってくる。
アリスは鑑定が終わったのを確認すると、ゴーレム(?)幼女をかまい始める。
2人の温度差が激しい。
オレは諦めの境地に至り素直に罪を告白する。
☆ ☆ ☆
「けっぷぅ……」
一通りの話を聞き終えたキリリは、両手でお腹を押さえ先程のオレと同じ異音を漏らす。
「ご、ゴーレムにスキルを多数与えて、準亜神の血を混ぜたら奇跡的に新種族が誕生したとか……ッ。学会に発表したら天変地異……あらゆる学説を覆す危険物……ッ」
一方、同じように話を聞いたアリスは、
「……賢者シュート様の血を引くなら、ちゃんと育てないと」
「? まま?」
ゴーレム(?)幼女がアリスの言葉に反応し、コテンと首を傾げて問う。
アリスは新雪のように白い肌を興奮から薔薇色に染め、普段作り物のように動かない表情を珍しく動かす。
特に口元がニヤニヤと形を崩していた。
アリスの母性がゴーレム(?)幼女に刺激されたようだ。
「……可愛い、可愛い、ちょー可愛い。自分の娘として育てる」
「まま?」
「……そう、自分がママ。名前を決めないと。可愛い名前にしようね。皇帝陛下に頼んで最高の教育環境を作って、LVも上げて何があっても強く生きられるようにしないと!」
「止めて! 姫様、止めて! 自分の娘にしようとしないで! 帝国が混乱しゅるの!」
「……嫌。絶対に嫌。娘にする」
キリリが台詞を噛むほど慌てて止めようと声をあげるが、アリスは取り合わない。
この世界の3割を支配するアイスバーグ帝国3女が、突然『自分の娘』と主張する存在が現れたら、スキャンダル以外の何モノでもない。
「シュート様も見てないで姫様を説得してくださいよ!」
「あっ、はい……あ、アリス、キリリの主張は尤もで……」
「……賢者シュート様には迷惑をかけないから」
彼女はオレ達からゴーレム(?)幼女を隠すように背中を向ける。
振り返って顔だけで反論した。
「……自分が育てる。賢者シュート様に存在を認めて欲しいともお願いしないから」
「そういう問題じゃなくてだな。とりあえず、一度その子を下ろして、席に座ってお茶でも飲みながら落ち着いて話し合おう」
「……嫌、下ろさない。この娘は自分が育てる」
「一旦、下ろして、冷静に話し合うだけだから、な?」
「……賢者シュート様、一生のお願い。育てさせて!」
やりとりだけ切り取ったら、妊娠した恋人に対してクズ男が認知しない発言を繰り返しているようだ。
なんだこれ、メチャクチャだよ。
場がエルエフ王国で廃嫡された時以上に混沌する。
「あぁ、お空が綺麗……」
話が進まず、オレは再び青空を眺め現実逃避してしまうのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
新しい仲間ゴーレム幼女に反応してくださって誠にありがとうございます!
若干『皆様に受け入れられるか心配』だったのですが、杞憂に終わって本当によかったです。
またシュートとアリスの本編やりとりが書けて非常に楽しかったです(再び愉悦的表情を浮かべつつ)。




