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11話 アリスの想いは?

皆様にご好評だったので、今回は3つ(10、11、12話)を12時、14時 17時連続でアップします!(本日2話目)

 剣聖対策の話し合いが終わった日の夜。

 離れに宛われた私室でキリリがアリスを鏡台前に座らせる。

 お風呂に入って汗を流し、寝間着に着替えて就寝する前にキリリがいつものようにアリスの銀髪をタオルで乾かしているのだ。

 慣れた手つきで絹糸のような彼女の銀髪を丁寧にタオルで拭き、最後に梳いて整える。


 彼女達にとって会話をしてコミュニケーションをする大切な時間だ。


 キリリが髪を梳きながら、溜息混じりで漏らす。


「今日は色々衝撃的なことが多かったですね。多数のスキルオーブを差し出されたり、スキル『剣聖』を目の前で創られたり、シュート様のステータスが爆上がりしたり、極めつけは魔剣を作るどころか神剣の2つ前、準亜神剣なんて規格外の剣を作り出したり……。シュート様は存在自体がもう規格外なんだってしみじみと思いましたよ。私としてはもう決闘で戦う剣聖さんに同情するほどです」

「…………」

「姫様? 珍しいですね、考え込むなんて……。湯冷めして体が冷えて風邪でもお引きに――いえ、その可能性はありませんね」


 従者にもかかわらずキリリは酷いことを言っているようだが、実際アリスは今まで風邪どころか一度も病気にかかったことがない健康体なのも事実だった。

 アリスも気にせず、キリリに疑問をぶつける。


「……賢者シュート様が仰っていたお言葉の意味を考えていた」

「何か言ってましたっけ?」

「……『剣聖との勝負でオレが勝ったら一つだけお願いを聞いてくれないか』って。賢者シュート様は一体どんなお願いをするつもりなのか気になって」


 シュート相手ならスキル関係以外はどんな願いでも叶えるつもりだ。

 帝国建国の父である『スキル創造』所有者の遺言に従い、大恩を果たすためなら例え、自分の命を望まれても応える気でいる。

 なのに尋ねたら適当にはぐらかされてしまった。


 さらにスキル『剣聖』や準亜神剣など、インパクトが大きい話題が多数出てきたため考える暇がなかった。

 日が暮れて、寝る間際になってようやく時間が出来たため考え込んでいたようだ。


 アリスの疑問にキリリが『やれやれ』と櫛を手に肩をすくめる。


「姫様は男心を何も分かっていませんね」

「……キリリは分かるの」


 主従というより姉妹に近い距離感。

 キリリの物言いにアリスは珍しく『むっ』と表情を作り返答する。

 鏡越しにアリスの表情を見るキリリは怯むどころか、からかうように笑みを浮かべた。


「シュート様が望めば大抵の願いは叶うのにわざわざ『剣聖との勝負に~』なんて婉曲な要求をしてきているんですよ。ならお願いは一つしかないじゃないですか」

「……? 分からない。賢者シュート様は一体何を望むの?」


『はぁ~やれやれ姫様は~』とキリリはオーバーリアクション的態度を取り、答えを告げる。


「あの年頃の男性が婉曲的に要求することは『セッ○ス』に決まっているじゃないですか」

「……!?」


 最初、キリリが言わんとすることが分からずアリスが小首を可愛らしく傾げる。

 言葉の意味が脳に到達し、理解すると風呂上がりとは別の意味で顔と言わず、耳、喉まで真っ赤に染まり出す。


 キリリは主の羞恥的反応を前にニヤニヤと楽しげに言葉を続けた。


「シュート様だって立派な男性なんです。あの年頃の男性が考えることは99%は『セッ○ス』や『エ○チ』しかないと思ってください」

「……け、賢者シュート様はふ、普通の男性とはち、違う! そ、そんなことばかり考えていない!」

「姫様も良い年なんですから、男性に変な幻想や理想を持たないでくださいよ。そんなんだから『剣聖との勝負に~』なんて言い出しちゃうんですよ」

「……そ、そうなの?」

「はい、間違いありません! だって本にもそう書かれてありましたし、皇城に務めるメイド達も言っていましたから!」


 キリリが自信満々に胸を張る。

 彼女も別に男性経験があるわけではない。

 むしろアリス共々、冒険者として活動していたためある意味似たりよったりだ。

 ただしキリリの場合、アリスと違って若干性に興味を抱き、自主的に書物を読んだり、人の話を聞いたり耳年増なだけである。


 彼女は櫛を鏡台に置くと背後から、アリスの胸を両手で掴み揉む。


「幸い姫様は顔と体はいいんですから、きっとシュート様も喜んでくれますよ。あと姫様って感度がいいですよね」

「――!?」


 アリスの筋力(STR)は1000あるが、背後から胸を揉まれて体が反応し上手く力が入らない。

 お陰でキリリの手から逃れるのに時間がかかってしまった。

 彼女は背後を振り返り、真っ赤な顔&涙目でキリリを睨む。


「……いくらキリリでも、怒る」

「すみません、あまりに姫様が可愛かったのでつい」


 キリリは睨まれても怯えず、慣れた様子で謝罪する。


「ですが個人的には姫様とシュート様が結ばれることは良いことだと思いますよ。シュート様は顔も整って格好いいですし、性格もちょっと常識外な所がありますがお優しくて、気遣いが出来て、姫様だけではなく私にまで気を遣ってくださる良い人です。考え無しに無茶をする姫様とバランスが取れていると思いますよ」


 容姿はともかく――気遣い部分は、前世日本人の標準装備である『空気を読む』が自動稼働しているだけでしかない。

 この異世界の住人にとってこの『空気を読む』だけでも、『気遣いが出来る人』という評価を得られるほど優れているに過ぎなかった。

 キリリが続ける。


「シュート様が現れなかったら、姫様は一生独身で死ぬまで帝国の地位や名声、困っている人々を助けるためモンスターなどと戦うだけの人生を送りそうで内心冷や冷やしていましたから。本当にシュート様が現れてよかったです。それに政治的に考えて『スキル創造』所有者の血が帝国に入るのは非常に重要なことですから」

「……賢者シュート様を生臭い政治に巻き込むのは許されない」


『血が帝国に~』の所で、アリスが胸を揉まれた時以上の怒りで、キリリを睨み付けた。

 一般人がこの目で睨まれたら、その場で腰を抜かすほどの圧力がある。

 しかしキリリは慣れた様子で受け流す。


「姫様がシュート様を俗世から護ろうとするお気持ちは理解できます。ですがシュート様がずっと独り身で居る事は絶対にありえません。いつか妻を娶り、子供を授かり、育てることになります。そこに政治的意図が絡まないなど不可能です。人の世で生きることはしがらみに絡まれ、義理と恩義が発生する以上、決して逃れらないモノですから。魚に泳ぐな、鳥に飛ぶなと命令するようなものです」

「……むぅ」


 アリスは知力(INT)ゼロだが馬鹿ではない。

 キリリの言わんとすることは理解できた。

 人間社会で生きる限り良きにせよ悪きにせよ人間関係が生まれ、『政治』とまではいわないが自分に有利な状況を意識、無意識に判断し選ぶのが人間である。

 いくらアリスでもそこまでシュートを護ることは出来ない。護ろうとしたら、それこそ彼をどこかに監禁して一切他者に触れさせないようにするしかないだろう。


「帝国のためにとかはちょっと脇に置いて……姫様はそれでいいんですか? シュート様の隣に姫様以外の人が立っても。姫様が自分以外の女性がシュート様の隣に立って、それでも護り続ける道を選ぶというなら、私はもう何もいいません。ですが、姫様自身がシュート様をどう想っているのか判断をくだしておいてください。シュート様が女性を求めたら、姫様が嫌な場合は他の女性をお薦めしますから。男性は意外と繊細なので、この件でシュート様との仲が拗れるなんてこともあるんですから今のうちに準備しておかないと」

「……き、嫌いではない。けど、だ、段階というものがあって……」


 アリスは真っ赤な顔で、両手の人差し指をコネコネと動かす。

 瞳を潤ませて真っ赤になって照れる主を前に、キリリが肩をすくめた。


「恥ずかしがる気持ちは分かりますが、その点はハッキリ気持ちを固めておいてくださいね」


 夜も遅いため、今日の話し合いはこれでお開きとなる。

 アリスはそのままベッドへ。

 キリリは退出し、自分に宛われている私室へと向かう。


「……自分の気持ち。賢者シュート様をどう想っているのか」


 いつもなら3秒かからず眠れるアリスだったが、自身の気持ちがどうなのか考え込んでしまい。

 今夜はなかなか寝付くことができなかったのだった。


スキルマスターを読んでくださり、誠にありがとうございます!

2話続けて主人公シュートの話ではありませんでしたが、アリスの心情、掘り下げのために必要だったため書かせて頂きました。

アリスはシュートをどう想っているのか?

彼女の恋心にも是非注目して頂ければと思います。


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[一言] だぶるばい、せっぷす  両手ガッツポーズ的なぼでーびるぢんぐのポーズ。 よくわからないが、ばいせっぷすは上腕二頭筋(ちからこぶー)とかの意味ではないか?  M字だとえっちになるのでS字。…
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