自信ありますよ!
魔法使い達は酔っ払いながらも光の魔法を発動させ、店の様子を確認していた。窓は割れ、ドアが倒れ、店内は目茶苦茶だった。
冒険者ギルドのマスターであるデットと、居酒屋の店主アルバは、それぞれ奥から出てくると、立ち話をした後、冒険者たちに告げる。
「緊急クエストだ。街の中にも相当の被害が出ているだろう、冒険者の力を借りたい。パーティ単位で、街で困っている住民を助けてあげて欲しい。それと万一のため、上級冒険者のパーティがいれば、このギルドホールに残って欲しい。街や国からの要請があったとき、すぐに動けるようにしたい」
「あぁー。本日の飲み食いした料金は請求しねぇ。だから、街の皆を助けてやってくれ、街の住民の安全が確保できたら、また店に戻って来い。今度も無料で飲み食いさせてやる」
冒険者たちは言われなくても、町の住民を救うつもりだ。結局クエストを発注しているのは住民であり、住民あっての冒険者なのだ。
「行くぞ、野郎でもっ!!」 「「「「「おぉぉぉっっ!!」」」」」
先程まで酔っ払っていた冒険者たちの顔が急に変わった。住民を助けるべく、それぞれが出来ることをするため、明かりの消えた街に、所々出火している街に、消えて行った。
ベスパは倉庫から新しいランプを持ち帰ってきた。新しいランプは1つしか在庫がなかったのだが、店の中央、精霊樹に括り付けると、店内の掃除を始めた。
「ベスパ、窓ガラスや割れた皿に気を付けるんだよ」とミレが注意を促す。
「うん…。怖かったね。アレって何だったの? 神様が怒ったの?」
「うふふっ。そっか、そうだね、ベスパは地震知らないか。私は、別の出身だから、そこで体験したことがあったけど。アレはね地震って言うの。なぜ揺れるかは知らないわよ?」
冒険者は基本、食べ残ししない。今夜は、廃棄される食べ物が山ほどある。
「おい、ベスパ暗い中の作業になっちまうが、裏庭に残飯を埋める穴掘ってくれないか?」
居酒屋の店主アルバの依頼だ。ベスパに断れるわけがない。
「はい。わかりました」
ベスパは倉庫に行くとスコップを片手に裏庭に行くため、外に出ると馬に乗った騎士とすれ違った。恐らく、冒険者ギルドのマスターであるデットを呼びに来たのだろう。しかし地震とは何なのだろう? 魔法なのか? 魔神でも目覚めたのか? さっぱりだ。ベスパは残飯や割れた食器の等の量を考えて、それが埋まるだけの穴を掘る。
冒険者ギルドには、次々と街の被害状況が、救援依頼と共に伝わってくる。倒壊した家屋の下敷きになった家族の救援依頼が最も多く、その中には治療できる回復役を求める声も多かった。通常であれば、病人や怪我人は自らの足で教会に行き治療してもらうのだろうが、今回はそうもいかないのだ。
そんな状況の中、古い建屋の多い西地区から来た代表者と貴族街から来た代表者の双方が回復役を要望していた。ギルドに残っているのは上級冒険者1パーティであり、回復役は1名だ。ギルドマスターのデットは、どちらを優先するべきか悩む。しかし時間の無駄だと決断する。上級冒険者達を貴族街に派遣することを決め、西地区には…。
「おい、アルバ! ベスパは何処にいる?」デットはベスパの回復役の秘めた力に賭けることにした。Lv1でありながら、瀕死の重症患者を生還させたのだ。今はそれを信じる他無かった。
ベスパは呼び出され西地区への救援活動を指示された。しかし西地区の代表者は憤怒する。
「こんな子供を…。いくら何でも酷い扱いじゃないかっ!」
「安心して下さい。見た目は子供ですが、腕は一流です。必ず期待に答えます」
ギルドマスターのデットが、西地区の代表者の目を真っ直ぐに見て、自信満々に答えたのだ。




