5:変態に出会ったら、つい銃を撃ちたくなってしまうのはおかしい話ではない。
囮として女装している僕に声を掛けてきた男、この男が連続通り魔事件の犯人だって事は、さっき男の口から確認が取れた。
だったら、此処からは仕事の時間だ。さっさとコイツを片付けて晩御飯を食べよう。
男の刺青型の”回路”が光ると同時に風が吹いて、砂煙が舞い上がり風向きが僕のいる方向へと変わっていく。
ッ!、危ない!咄嗟に右斜め上に飛び、回避行動を取る。けれどよけきれず、スカートが切り裂かれ足に切り傷を負ってしまった。このスカート経費で落ちるかな?
「へ~凄いね、お嬢ちゃん。今までの女は避けきれずに腕を切り裂かれていたのに。」
「風魔法で薄い刃を飛ばしてるの?」
「正解!”鎌イタチ”っていって見えない刃を飛ばすから、みんな避けれずに切り裂かれちゃうんだ。」
確かにこれを戦いのイロハを知らない人に避けろと言っても無理だ。
僕も風で動く砂煙の動きを見ていなかったら、直撃を喰らっていたと思う。
それにしても妙だ。男の放った鎌イタチの威力は地面やレンガ造りの家を削り取る程の威力、でもラスティから教えてもらった情報だと、この男は風魔法は使えるけれど人や建物に傷を負わせられるレベルではなかったはずだ。どういう事だろう?
って、今はそんな事を気にしてる場合じゃないか。とりあえずスカートが邪魔だから、膝下まで破る。
さっき、鎌イタチで縦に切り込みが入ったのも併せて大分動きやすくなった。
「ダメだよ、お嬢ちゃん!そんな足を見せつけて誘惑しようだなんて!興奮して俺のマグナムが火を噴いちゃうじゃないか!」
また男がおかしなことを言い始めた。男の足に興奮するなんて頭大丈夫かな?って今は女装中か。
マグナムが火を噴くってことは体のどこかに銃も隠し持っているんだろう、気を付けなくちゃ。
「ところで、何で通り魔なんてやってるの?しかも女性ばかり狙ってさ?」
僕が攻撃するチャンスを伺う時間稼ぎに質問をすると、男は黙ると急に顔を上げて叫ぶように声を荒げながら喋り始めた。
「君みたいな、かわいい子にはわからないだろうねえ!ギャングのボスの息子なのに全然魔法や武器が使えず、部下からも馬鹿にされる男の気持ちなんてね!だから俺の強さを見せつけてやったんだ!裏路地に迷い込んだ馬鹿な女どもを殺してさあ!やっぱり俺は強いんだ。だって今まで殺した女共は全員俺に怯えて助けを求めたんだからさ!」
「うん、全然わかんない。」
いいじゃないかショボくても魔法が使えるんだから、僕なんて全く使えないせいでサンドバックにされたり、職場の先輩からパワハラを受けたりしてるんだから、それよりはずっとマシでしょ。
それに強さを見せ詰めたいなら、、、
「だったら、何でその鎌イタチを部下に見せないの?見返したいんでしょ?」
見返したい気持ちは分かる。でもそこから関係ない人を襲う理由がわからない。
少なくとも僕だったら、見返したい奴に鎌イタチを見せるけど、もしかしてこの男は自分より弱い人にしか強気に出られない器が小さい人なんだろうか?
「もしかして、部下が怖いから関係ない人を襲っていたの?魔法の腕が上がっても部下にバカにされるかもしれないって怖くて、路地裏に迷い込んだ人を襲っていたとか?」
僕が疑問を口にすると、また男が黙って俯いてしまった。
でも耳を澄ますと小さい声で何かブツブツ言っている。もっと大きな声でしゃべれ。
「違う違う違う、俺の方が強いんだ。あんな使えない部下よりも俺の方が強いんだ。だってこんなにすごい魔法も使えるし、沢山の女も殺した。そうだ。俺は強い、コイツも殺して俺の強さを証明してやる。そしてパパに認めてもらうんだ。」
もの凄い早口で喋ってるけど、目の焦点が合っていない。危ない薬でもやってるんだろうか?
「俺を馬鹿にしたテメーは絶対殺す。犯して殺して俺がギャングの次期ボスだと認める為の生贄になってもらう!」
男はそう言うと同時に”回路”が光り、鎌イタチが僕を切り裂こうと飛んでくるけど、もう遅い。
質問をしている間に距離を詰めて、鎌イタチが発動する前に相手の懐に飛び込む。
驚く男を無視して、僕は太腿のホルスターからリボルバー式の銃を抜いてハンマーを上げ、男の腹に突き付けた。
僕が愛用しているこの銃は、下手くそでも当たる代わりに射程が短いので近づかないといけないのだ。
男は急いで距離を取ろうとするけど、僕が引き金を引くほうが早かったようだ。
ドパン!!
音が響くと少し遅れて、男の体が後ろに吹っ飛んで何処かの家の壁にぶつかる。
銃の口径から考えると、普通ならあり得ないくらいの威力だけどこれにはちゃんと理由がある。
僕が愛用している5連発式のリボルバー拳銃に使っている弾は普通の弾ではなくショットガンの弾を使っているのだ。
これのお陰で下手くその僕でも相手に当てることができるし、接射の威力も段違いなんだけど、代わりに射程が短くなっていることが不満だ。
とりあえず通り魔は退治したことだし、ラスティと連絡をとって男を回収しなきゃね。いつ人が来るかもわからないし。
まずは男の止血かな?このままだと大量出血で死んじゃう。内臓のいくつかは潰れているけど命に別状はなさそうだし、今までの事を考えたら自業自得だと思う。
「フフフ、アハハハハハ!」
「っ!」
僕が男の止血をしようとしたら、男が立ち上がって笑い始めた。
なんで?ちゃんと弾は直撃して重傷を負わせたはずなのに?
驚いていると、更にとんでもないことが起こった。男に負わせたはずの傷が無くなってる。完治しているんだ。
「ダメだよ。君みたいなかわいい子が銃を振り回しちゃ、お仕置きしてあげなくちゃね。」
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また別作品も投稿していますので興味を持って読んで頂ければ幸いです
「俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~」
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