3:女の子のような見た目をしている僕が女装して囮になるのはおかしい話ではない。
シェラとの勉強会が終わり購買部の仕事も終わった僕は、帰路に就く。
今日先輩から”十分前に来い”って言われてたから、明日は十分前に着くべきか?でもあの人のいう事だから十分前に着いたら”十五分前に来い”とかいいそうだな。
今住んでいるアパートに向っていると沢山の人とすれ違い、背の高さの関係から嫌でも彼らが首につけている長方形のペンダントに目が行ってしまう。
”魔法適正判別証”、僕も首に付けているこのアクセサリーは、付けている人がどの程度”魔法”を使えるかを色で表していて、色が扱える属性、色の濃さがどの程度扱えるかだ。
色が濃いと、その人は魔法を上手く扱えて、逆に色が薄い人は魔法が下手くそという事がわかってしまうのだ。
そして僕のペンダントの色は”白”だ。これはつまりどの属性も全く扱えないということになる。
「ハァ、さっさと帰ろ。」
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ようやくアパートについた。レンガ造りの3階建てのアパートで入居者は僕以外に裏の仕事の同僚が6人住んでいる。
「ただいまー」
僕は一人暮らしで、部屋には誰もいないけどシショーから「挨拶はちゃんとしろ」と言われているので挨拶はちゃんとしている。
部屋に入ると早速ラジオを付けて、お気に入りのチャンネルに合わせて夕食の準備を始める。
ラジオは好きだ。新聞と違って文字があまり読めなくても問題ない、言葉さえ理解できていれば後はラジオが勝手に音声を流すんだから。
夕食の準備をしながらラジオを聴いていると、通り魔事件のニュースが流れ始めた。
最近、裏通りで女性が何者かに切り刻まれて殺されるという事件が頻発しているらしい。
被害者は上は20歳、下は10歳くらいで警察も調査を続けているらしいけど、犯人の手がかりどころかどうやって女性を殺したかすらわからないらしい。
「って、近所で起きてる事件じゃないか、早く解決してよ。」
まったく、これじゃ怖くて町を歩けない。ただでさえ僕はいろんな人に理不尽な理由で狙われてるんだから。
夕食の準備が終わっておかずをテーブルに並べると、扉のチャイムが鳴る。
こんな時間に誰だろう?新聞の勧誘かな?
扉を開けるとそこにいたのは新聞の勧誘や押し売りではなく、赤色の髪に眼帯をした男だった。
「よぉ、エディ上がるぜ」
「ラスティ、こんな時間にどうしたの?」
彼はラスティ・ショット。僕の裏の仕事の先輩で、仕事ではバディを組んでいる。
「それで、何の用?」
「仕事だ、急いで支度しろ。」
せっかくこれから晩御飯なのに、仕事が終わる頃には冷めちゃうんだけど。
「ご飯食べてからじゃ、ダメ?」
「ダメに決まってんだろ。」
ちぇッ
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「ここら辺で、通り魔事件があるのは知ってるか?」
「うん、さっきニュースで聞いた。」
結局ご飯はお預けで、今僕達は裏路地にいる。
「その通り魔事件の犯人がわかった。」
「だったら、後は警察に任せればいいじゃない。」
「犯人はこの町を仕切っているギャングのボスのバカ息子で、警察もおいそれと手出しできないんだよ。」
「成る程、だったら、これは僕達の仕事だ。」
確かにそう言ったヤツの相手は僕達の仕事だし、ラスティが急かした理由もわかった。
早く捕まえなきゃ他の人が襲われちゃうから、でもねラスティ、一つ聞きたいんだ。
「ねぇ、ラスティ。」
「ん、何だ?」
「何で僕、女の子の格好してるの?僕、男の子なのに」
「ああ、男の娘だな。」
僕は今、女の子の格好をしている。フリフリのスカートで凄いスースーするし、此処に来るまでの間にいろんな人に見られていろんな事を言われちゃったよ。
『わぁ、あの子可愛い♪どこかの家のお嬢様かしら?』
『駄目だよ。君みたいな可愛い女の子がこんな時間に出歩いちゃ、お家の住所分かる?お巡りさんが家まで送ってあげるから。』
『ハァハァ、君とってもかわいいね。これからおじさんと楽しいことしない?デュフフフ♪』
最後のおっさんはあまりに気持ち悪くて、危うく銃で撃ち殺してやろうかと思った。楽しい事って何をする気だったのだろう?
「仕方ねーだろ。犯人が裏路地の何処にいるかわかんねーんだから、囮を使って誘き出すしかないんだよ。」
「それで、何でこんな格好になるのさ。」
「被害者は全員女性、となれば男の格好しても犯人は現れねーだろ。だったら女装して犯人を誘き出す。」
そもそも男にこの仕事を任せることが間違っているんじゃないかな?仕事仲間には女性のバディもいるんだし。
「しかし、お前ほんと女装似合うな。実は女で、男ってのが嘘なんじゃないか?」
「そうだよ。僕本当は女の子なんだ。」
「マジかよ!」
「冗談だよ。」
ラスティが「お前の冗談は分かりにくいんだよ」って言うけど、そんなに似合ってるかな?
そういえばシショーと一緒に暮らしてた時、やたら女装させられたな。
あの時のシショーは、鼻息が何故か荒くなって少し怖かった。
「おふざけはここまでだ。油断すんなよエディ。ちゃんと準備はしてきたか?」
「うん。ちゃんと武器は仕込んできた。」
そう言ってスカートをたくし上げて、ラスティにスカートの中を見せた。
今僕は太腿に銃やナイフのホルスターを巻いていて、いつ通り魔が現れても大丈夫なようにしている。
何故かラスティに頭を叩かれた。おかしいな?ちゃんとラスティの言う通りに準備したのに。
「お前、あんまりそういうことするなよ。」
「そういうことって、武器を見せること?」
「そうじゃなくて!あーもーとにかく、さっさと犯人誘き出してメシ食うぞ!」
「うん、それじゃ犯人を血祭りに上げてご飯を食べよう。」
さあ、犯人よ、さっさと出てこい。じゃないと夕飯が冷めてしまう。
「おまえって、割と物騒なこと言うよな。」
そうかな?
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また別作品も投稿していますので興味があって読んで頂ければ幸いです
「俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~」
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