31:僕が負けるのはおかしい話ではない
「オラオラ、どうした逃げてるばっかじゃ勝てんぞ、クソガキ」
「だったら、少しは手を抜いてくれてもいいんじゃない?」
「そりゃ、相手に失礼と言うもんじゃろ!おらあ!さっさと死ねぇ!」
ラスティ達と別れてから十数分後、僕とイヴは”カース”の所持している訓練施設の一つである廃工場で、襲ってきたヴェインのオッサンの相手をしている。
とはいっても相手はBドラッグで自分の魔法を強化している状態、一方のこっちは”呪い”しか使えずしかも片腕は骨折、イヴも戦いに関しては素人(なので、廃工場の別室に隠れてもらってる)、正直少しきつい
それでも何とか 過剰加速でオッサンの攻撃を避けながら、拳銃でこちらも攻撃してるけれど、その度に巨大な鉄塊が僕の攻撃を邪魔してくる。
以前は鉄板は一度に一枚か、小さいのに分けて複数作っていたのに、今では複数の鉄塊をとんでもない速さで僕にぶつけてしようとしてくる。
過剰加速で避けているけど、少しでも気を抜くと両足が折れそうだ。でもチャンスはある。Bドラッグの仕様上、いずれ薬が切れて魔法が使えなくなるはずだ。
そこを狙って、きつい一撃を喰らわせてやれば僕の勝ちだ。この戦い一見怪我をしている僕が不利なように見えるし、実際今の所僕が不利なんだけど、長引けば長引くほど僕の方が有利になっていくのだ。
「おい小僧、お前儂のBドラッグ切れを待っとるようじゃが、それは意味ないぞ。」
「えっ?」
僕の考えを言い当てたヴェインのオッサンは再度、懐からのBドラッグを複数取り出してバリバリとかみ砕く。
何やってんだあのオッサン!あんな大量に取り込んだら、魔法が使えなくなるどころか一気に体がガリガリに痩せるぞ。自殺したいのか?
敵ながら僕がそんな心配をしていると、先程まで茶色の光を放っていたオッサンの体がさらに光りはじめる。オッサンが光るって何だかシュールな光景だな。
「おぉぉぉらぁぁぁぁl!」
そしてオッサンが叫んだ瞬間、一気に複数個の鉄塊が現れて僕に向って飛んでくる。まずいこれは全部避けられるかわからない。
何とか、避けようと頑張るけれど、鉄塊の数が多いうえにスピードを出しすぎると僕の両足が折れちゃうので、結果としてオッサンが放ってきた鉄塊の内、最後の二つが僕の左腕と左足をプレスして、肉塊に変えられてしまった。
「ぐ、うう。」
痛みに思わず、うめき声をあげるけどあれだけBドラッグを取り込んだんだ。ヴェインのオッサンも今頃はガリガリにやせ細って、まともに動けないはず、拳銃をヴェインのオッサンに向けるけど、そこにあり得ない光景が広がっていた。
「え、何で?」
「ははは、驚いたか、クソガキ!」
そこにいたヴェインのオッサンは、先程と変わらぬ巨体でBドラッグの副作用が全く見られない。どうして?
「忘れ取らんかクソガキ、儂らは”人類進化機関”の人間じゃぞ。Bドラッグの副作用も知っとるし、対策もしてあるわ。儂らはな、ある程度副作用を抑えられるように改造を受け取るんじゃ。それだけじゃない、このBドラッグも儂ら用に調整された物じゃ、当てが外れて残念じゃったのう。」
そう言ってオッサンは、近づいて僕の髪の毛を掴む。振りほどきたいけど左手は肉片に変えられてるし、右手もさっきの衝撃で痺れて動かない。
「おらおら、どうした?手も足もでんのか?お?この間までは威勢が良かった癖に無様じゃのう。」
髪の毛を掴んで僕の頭を振り回すけど、いろんな所の痛みが酷くて文句を言うことも出来ない。
でも、ある意味この状況で良かったかもしれない。僕は血まみれでヴェインのオッサンは僕に近づいている為、僕の血で出来た血だまりを踏んでいる。
「でもまぁ、よく頑張ったのう。刃物を引き寄せる呪いと足が速くなる呪いだけで此処まで儂を苦戦させたんじゃからな。少しは誇ってもええぞ。まぁ誇る相手はいないんじゃがな。」
「・・違・・して・・よ。」
「ああ、何じゃよく聞こえんぞ。」
「オジサンは勘違いしてるよ。僕の”呪い”はその二つじゃない。僕が使える呪いは一つだけだ」
僕の言葉にオッサンが?を頭の上に浮かべているけど、知った事か。
僕が全身に”マナ”を走らせると体中に血管のような呪印が浮かび上がり、それが血だまりにも広がっていく。
「喰らえ!」
僕が叫んだ瞬間、ヴェインのオッサンが踏んでいた血だまりから、血の粒が弾丸のような速さでヴェインのオッサンに向って飛んでいく、何発かは当たって、少しはダメージを与えられたけど、殆どが避けられてしまった。くそ、無駄に感が良いなこのオッサン。
「何じゃ、今のは何をしたクソガキ!」
「わざわざ、教える必要はないでしょ。」
今使ったのはこういった大怪我をした際の緊急時に仕える切り札の一つだったんだけど、これも避けられるとは困った。
完全被血弾、血を弾丸のように放つことが出来るんだけど、血が出てないと使えないし、水の魔法で同じような魔法があるから全く使う意味が無いって、殆ど使われなかった”呪い”だ。
「ふー、どうやらお前は他にも使える呪いがあるみたいじゃの。まあ油断しとった儂が悪いか、」
ヴェインのオッサンはそう言うと今度は離れた場所から、鉄塊を作り出して僕に狙いを定める。
避けたいところだけれど、生憎足が肉片になっちゃったから、避けることはできない。
あーあー、ここで死んじゃうのか、まあ僕が死んでもラスティや他の”カース”のメンバーがヴェインのオッサンを倒してくれるだろう。
ああ、でもイヴを助けられないのは心残りだ。何とかイヴを助けてあげたかったけど僕が死んじゃったらそれはもう無理だ。
「ほんじゃ、今度こそ死ね。」
そう言って、オッサンが僕に向って鉄塊をぶつけようとする。でもその瞬間。
「だめぇぇぇぇぇぇ!」
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