29:俺が未来を視ることができるのはおかしい話ではない
「よお、よくもまあこんなところまで逃げたもんだ。取り敢えず俺の相手はアンタって事でいいのかい。」
「その認識で間違ってねーぜ。」
回路が刻印されたナックルダスターを構えながら、”人類進化機関”の聞いてくるので、俺、ラスティ・ショットも愛用のマグナムリボルバーに弾を入れながら、答える。
奴らと対峙してから、数分。何とか”人類進化機関”の奴らを分散させて別の場所に移動することが出来たが、他の奴らは大丈夫だろうか?
今俺達は、”カース”のアパートから少し離れた廃工場にいる。此処は見た目は寂れた廃工場だが、実際は”カース”の実行部隊が普段訓練に使用している施設の一つで俺達のホームグラウンドでもある。
エディや双子もきっとここ以外での訓練施設に移動しているはずだ。場所がわかっていれば後で合流しやすい。取り敢えず今は目の前にいる男をぶちのめそう。
俺の目の前にいる男は、ナックルダスター以外に武器は見当たらない。だが、あの鉄板男がBドラッグを使って、自分の魔法適正を底上げして事とコイツも”人類進化機関”のメンバーである事から、コイツもBドラッグを使っているはずだ。
Bドラッグはいずれ魔法が使えなくなる、いや正確には”マナを用いて過程を組み立てる機能”が使えなくなるデメリットがあるが、その分デメリットに見合った効果がある。
俺とエディが依然捕まえた通り魔は、本来なら人を殺せるような威力の魔法は使えないはずだった。
だが、Bドラッグを使う事で一流の魔法使いと言っていいレベルまでの魔法を使用できていた。
落ちこぼれですらそうなのだ。普通に魔法が使える人間がBドラッグを使ったらどうなるかなんて、言葉にしなくても分かる。
取り敢えず、相手は俺の出方を伺って動かないみたいだし、今は互いに離れてて武器が銃である分俺の方が有利だ。数発を牽制として”人類進化機関”の男に向って発砲する。
「へえ、”カース”の人間だって言うから、”呪い”を使うと思ったけど、アンタは使わないんだ。」
「何!」
俺が発砲した瞬間、奴のナックルダスターに刻まれている回路が赤く光ったと思ったら、次の瞬間左右のナックルダスターから蛇ような形をした炎が出現したと思ったら、その蛇が弾丸を喰いやがった。
「可愛いでしょ、こいつ等。これが俺の使う魔法。追尾双蛇だよ。」
「追尾双蛇?何だそりゃ、相手を勝手に追い詰めてくれんのかよ。」
「その通りさ!この蛇たちは俺を傷つけようとするやつを許さず、俺の代わりに攻撃を防ぎ、俺の代わりに相手を焼き殺す。”人類進化機関”が作った魔法の中でもかなり凄い魔法さ!」
興奮しながら男が自慢するけど、俺はそんな事よりも奴の使う魔法の見た目が気になっていた。蛇を思わせる炎の魔法。
まるで、イヴの嬢ちゃんが使っていた”呪い”のようじゃないか。俺とエディが以前”人類進化機関”のヴェインに追い詰められた時に思わず使ってしまった魔法、あれもこいつが使う魔法のように炎が蛇のような形をして相手を追い込んでいた。
「なあ、その”魔法”って元は”呪い”だったりするのか?」
相手が堪えてくれるわけが無いと思いつつも、イヴの嬢ちゃんの呪いの正体がつかめるかもしれないチャンスだ。質問するに越したことは無い。
そう思っていたら、ぺらぺらとしゃべりだしてくれた。どうやらコイツ自分が有利になると油断するタイプらしい。
「そうだよ。よく気づいたね。これは元は火傷双蛇っていう呪いだったんだ。内容は今と同じだけど、代償として使う度に自身の体に火傷を負うっていうのがあってね。そこからモルモットとしてあの女の子を使ってデータを取りながら改良を加えていったんだ。ほんとは教えちゃダメなんだけど、アンタもうすぐ死ぬし、別に教えてもいいでしょ」
そう言いながら、蛇が俺を睨んできやがる。多分次の攻撃で決めるつもりだろう。俺も知りたいことは知れたので、コイツを倒すことにしよう。
「そうかい、教えてくれてありがとうーよ。んじゃ、取り敢えずテメーはぶちのめすことにするよ。」
俺は眼帯を取る。右目には現在の光景が、左目には少し時間のズレた光景が映し出される。何度やってもこの光景にはなれない。
「ぶちのめす?やれるもんならやってみてよ!」
二匹の獄炎の蛇が俺に襲い掛かってくるが、既にその光景は視ている。俺は体を少し捻ると蛇を避け、”人類進化機関”の男の頭に向って発砲しようとする。
慌てて男が操る蛇の一匹が男を守るように眼前に立ちふさがるが、それも知っている。蛇が目の前にいる事で俺を見ることが出来なくなった”人類進化機関”の男に再度二発ほどクイックドロウで攻撃を仕掛ける。
残って一匹の蛇が俺の意図に気づいて再度男を守るが、俺が地面に向って打った一発、跳弾を利用した攻撃には気づけなかったらしい。
跳ね返った弾丸は見事に男の鳩尾を貫き、余りの衝撃に男が使役していた二匹の蛇は消え男は後ろに向って倒れた。
「悪いが、俺は最初から最後までアンタが負けることを知ってたんだよ。」
男が俺に魔法の詳細を説明してくれたように、俺も血管のような模様が光っている左目を指さしながら、説明する。
「予知の”呪い”だと、だけどその”呪い”常に未来しか見えないはずだ。」
「おっよく知ってるね。だからこれ結構きついんだよ」
伊達に”人類進化機関”に所属しているわけじゃなかったらしい。俺の使う”呪い”の正体も知っているとは。
俺の使う”呪い”の正体、予知。名前の通り、数秒先の未来を予知し、それを景色として見ることが出来るのだが、欠点として一度でも使用すると常に未来しか見えなくなるのだ。
過去にこの”呪い”を使った”呪い”使いは、目に見える未来の景色と現実の世界とのズレに耐えられず、自殺してしまったらしい。
俺は幸い、ある事情で左目だけに予知の”呪い”を使用しており、右目は現在の景色を見ることが出来るから、普段は眼帯を付けることで何とか耐えることが出来ている。
俺は男の右手首に手を添えて、脈を確認する。脈を打たないことから、男が絶命したことは確実だろう。俺の弾丸は特別製で威力が桁違いだからな。
「さてと、そんじゃ知りたいことも知れたしエディのとこに加勢するとすっか。」
イヴの嬢ちゃんの呪いの正体が知れたことは幸運だったな。後はこの情報をエディに知らせるだけだ。
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