23:彼女が殺されなきゃいけないのはおかしい話だ
無事、アパートに帰り追っても来ないことを確認した僕とラスティは翌日、”カース”の支部に来ていた。今回の任務の結果を報告するためだ。
イヴには僕のアパートで待ってもらっている。まだ彼女の正体がわからない以上、下手なことをしても混乱するだけだからだ。
もし、僕達が支部に行ってる間に何者かがアパートを襲撃するかもしれないけれど、幸い今のアパートには他の”カース”のメンバーが待機しているから、余程のことが無い限りは安全だ。
建物の中に入って室長室に向う僕とラスティ、室長室のドアをノックして入ると部屋の中にはゴリラ室長と胡散臭い議員のオッサンがいた。名前は忘れた。
「さて、エディ&ラスティ、今回の任務の結果を聞かせてもらおうか?といっても失敗は許されないんだがな。」
挨拶もなしに室長が任務の結果を聞いてくる。そんなに結果が気になるの?
「ああ、それなら問題ねーよ、室長。ちゃんと物資は破壊した。」
ラスティがそう言うと室長は苦い顔をして頷く。多分室長も極秘物資の正体がイヴであることを知っていたみたいだ。一方の議員は凄い嬉しそうな顔をしている。何か腹立つな。
「そうか、物資を破壊してくれたか。ありがとう!!」
議員のオッサンは嬉しそうに喋りながら僕達と握手をしようとするけど、このオッサンも中身を知っているはずだ。女の子が一人殺された(本当は違うけれど)のに嬉しそうにするとか、良い趣味してるよ。
僕とラスティは握手をしようとする議員のオッサンの手を振り払う。正直こんな奴とは握手したくない。
「んで、一つ聞きて―事があるんだが、室長。」
「何だ?」
「俺達は物資の中身を見た。」
「!!」
ラスティの台詞に支部長が体を震わせる。やっぱり室長は正体を知っていたのか。
「物資の正体は女の子だった。何でそれが国を揺るがす物資となるんだ。答えてくれよ!」
強めの語気で問うラスティに室長は苦い顔をしながら答えようとするけど、そこに議員のオッサンが割り込んでくる。邪魔だぞオッサン。
「それについては私から説明させてもらおう。君達には感謝しているしね。」
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「彼女はこの国の人間ではないんだよ。」
そう言って説明を始めた議員の顔には喜びが滲んでいる。多分不安材料が消えたことで喜びが隠せないんだろう。
「彼女はこのヴィネリア合衆国に密入国してきた女性の子供。生まれはヴィネリア合衆国だが戸籍はない。そして彼女の母親は日銭を稼ぐ為に水商売に手を出していた。」
水商売って何だ?何となく周りの空気から聞いちゃいけない事は分かるけど今度シェラに聞いてみるか。
「そんなある時、とある大物議員がその女性に入れ込んでね。女性と恋仲になり結果、その女性は今回の極秘物資である彼女を妊娠したという訳だ。ただ此処で一つ問題が発生した。」
そこで議員は一端話を区切る。多分此処からが重要なんだろう。
「議員には当時家族がいてね。女性とは浮気関係だったんだよ。そんな中発生した浮気相手の妊娠。これが世間にバレれば議員はお終いだ。そして議員はあることを思いついた。」
何となく、もの凄い嫌な予感がする。心がムカムカして議員のオッサンに殴りかかりそうだ。
「当時、大物議員は”人類進化機関”と関りを持っていてね。その時に新開発の魔法の回路の設計図を譲ってもらう条件に実験体を斡旋する取引をしていたんだよ。これ幸いと議員は浮気相手とその娘を渡して、浮気の証拠を消したという訳だ。」
「じゃあ、その娘さんとお母さんは議員の浮気を隠すためだけに”人類進化機関”に売られたって事?」
「うん?そうだが。それが何か?」
何でも無いことのように言う議員に思わず銃を撃ってしまいたくなるが、それも我慢だ。まだ彼女が殺されなければならない理由を聞いてない。
「それでそこから何でその女の子が殺されなきゃいけねーんだ?」
ラスティも怒りに震えているけど、必死に我慢して続きを促す。
「ああ、そうだね。それで続きだが、母親は間もなく死んだんだが、娘の方はしつこく生き延びていてね。そしてある時我々の耳にその娘が”人類進化機関”から脱走したという情報が入ってね。しかも”呪い”を使える上にギャングの取引で他国に渡されるという訳だからね。我々は急いで彼女を殺さなくてはいけなくなってしまったんだよ。」
「成程、そういう事か。」
議員の説明を聞いてラスティが納得しているけれど、納得したくないような顔で頷いた。
「どういう事?ラスティ」
ラスティは納得しているみたいだけれど、僕には全然意味が分からない。説明してよ。
「”呪い”は世界中で重罪だって知ってるだろ。」
「うん?」
「そして”人類進化機関”は世界中から狙われている組織って知ってるだろ。」
「う、うん?」
「それでだ、俺らの国の大物議員が密入国者に手を出したってだけで大問題なのに、証拠隠滅として”世界中から目を付けられている犯罪組織”に母娘を差し出した上に因果関係が不明だが、”世界中で重罪となる呪い”を使えちまうんだ。もしこれが他の国に知られたらとんでもねー弱みになって、他国との政治取引で足元を見られちまうって訳だ。だから殺さなきゃいけない」
「理解が早くて助かるよ。」
「っで、その大物議員は今どうしてんだ?」
「?普通に今も活動しているが。」
「じゃあ、その女の子は国の面子を守るために殺されなきゃいけないって事?」
ふざけないでよ。それじゃイヴは完全に被害者じゃないか!お偉いさんの不正を隠すために実験体にされて、挙句に殺されるなんてあんまりじゃないか!
「ちょっとまってよ。その大物議員は”人類進化機関”と接触したんでしょ。じゃあ何でカースに粛清されずに生きてるのさ!」
「ははは、そんなのその大物議員が権力で無理矢理もみ消しているからに決まってるだろ。いくらカースが権力に関係なく犯罪者やそれに類ずる者を処罰する権利があっても、それは国から与えられる執行書があっての事だ。圧力を掛けて執行書の発行そのものを抑えてしまえば意味はない。それにその大物議員は我が合衆国になくてはならない存在でね。いなくなると我々も困るんだよ。」
そう言って、議員のオッサンは部屋から出ていった。後には僕とラスティ、ゴリラ室長だけが残った。
正直言って今すぐ下位議員のオッサンや大物議員を撃ち殺してやりたいくらい怒っているけど、まだ話は終わっていない。
「それで、お前達殺していないんだろ?」
ゴリラ室長が口を開いた。
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また別作品も投稿していますので興味を持って読んで頂ければ幸いです。
「俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~」
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