20:彼女を守るために戦うのはおかしい話ではない
ホテルの駐車場、今此処では僕と大男が向かい合って互いの得物を構えている。僕はナイフとリボルバー、男は回路が掘られた籠手だ。
ラスティは、イヴの近くで周囲を警戒している。ラスティが使う呪いなら、何処から攻撃が来るかわかるから、彼女が襲われる心配はない。僕も安心して大男と戦うことが出来る。
「ふ、それにしても嘗ての同郷と戦うとは、奇妙な感じじゃ。」
「ドーキョー?おっさん僕を知ってるの?」
確か、同郷って言葉の意味は同じ組織に居たとかいう意味だったはず、つまりこのオッサンと僕は以前、何処かで出会っていたんだ。
「ん、ああ、そうか、名乗るのが遅れたの。儂はヴェイン・プレス。”人類進化機関”実験体No.22。コンセプトは”広域範囲制圧を想定した魔法の開発”じゃ。改めてよろしゅうな、実験体No.07。開発コンセプトは確か、”多種多様な呪いの実践データ取得及び代償の因果関係”じゃったか。」
「!!」
オッサンの口からとんでもない言葉が飛び出した。どうやらこのオッサンはあの”人類進化機関”に今も所属しているらしい。
そして、そのオッサンがイヴを狙っているということは、、
「イヴの記憶が無かったり、国のお偉いさんから妙な命令が出てるのは”人類進化機関”のせいなの?」
”人類進化機関”、奴らが関わっているなら、イヴに対して国のお偉いさんが動くのも納得だ。”人類進化機関”に対して表向きは国は排除に動いているけど、一部のお偉いさんは奴らの技術を得るために相当後ろ暗い事をしているという噂で、何人かは”カース”にしょっ引かれた人もいる。
もしかしたら、今回の任務。相当ややこしい事情があるのかもしれない。
「生憎それを答える義務は儂にはないわ。それに知ったところでこの後死ぬんじゃから、意味ないじゃろ。」
「何で死ぬって決定してるのかな?」
「失敗作が成功作に勝てる道理があるわけないじゃろ。それに儂は舐められることに我慢がならん性での。あまり目立つなって上の人間から言われとるけえ、ホテルの奴らは気絶させただけで済ませたが、儂を散々馬鹿にした貴様は許さん。ここで死ね。」
オッサンがそう言うと、籠手が茶色に光る。やっぱりさっきの魔法は土の魔法か。
魔法が使われる前にナイフを投げようとするけど、その瞬間ラスティが叫ぶ。
「エディ、右に飛べ!」
ラスティがそう言った瞬間、僕の目の前にいきなり鉄の壁が現れる。驚くけど立ち止まっている暇はない。
急いで右に飛ぶけど、右に飛んだ瞬間、壁がもの凄い勢いで動き出して僕を潰そうとする。
壁が動きだすよりも速く動いたけど、左腕が間に合わず壁とぶつかり、その衝撃で僕も吹き飛んでしまう。
吹き飛んだ先で受け身を取って、立ち上がる。幸い左腕はくっついているけど、骨折はしていて暫く動かせない。
「ぐ、うう。」
「ほう、よく避けたな。じゃがもう動けんじゃろ。儂の魔法”粉砕”は車すらもぺしゃんこにしてしまうからの。」
オッサンが次々と鉄の板を生み出して、僕を潰そうとしてくる。避けるのに精いっぱいで攻撃する暇なんてない。
ラスティの方も何処からか発砲してくる男の部下の銃撃から、イヴを守るのに精いっぱいで頼ることはできない。
でも、勝機ならある。先程からオッサンの魔法を見てるけど、生み出してる鉄板は動き出して止まった後、塵に代わってそれから新しい鉄板が出てくる。多分一度に作ることのできる鉄板は一枚だけなんだろう。
ナイフを締まって銃を構える。次の攻撃を避けて次の鉄板が作られる一瞬で距離を詰めてゼロ距離で銃を撃つ。これでオッサンを殺すしかない。僕は目を凝らしてタイミングを計る。
回路が光り、僕の数メートル先に先ほどより小さい鉄板が生まれて動き出す。
今だ!鉄板が僕を潰そうとしてくるけど、僕の方が速い。両足に血管のような模様の呪印が浮かび上がり、僕の動きを加速させる。
”過剰加速”使用者の足の速さを極限まで速くする呪い。代償として足にもの凄い負担が掛かり、少しでも力の入れ具合を間違えると両足が骨折してしまう。だからこの呪いは普段の任務でもめったに使わない。
僕が使える”呪い”は一つじゃない。ある理由から複数の”呪い”を僕は使うことが出来る。これも”人類進化機関”の人体実験の結果だ。
僕が一つの呪いしか使えないと思っていたオッサンは驚いた顔で、すぐ近くまで来た僕を見てるけどもう遅い。
後は銃の引き金を引くだけ、それで僕の勝ちのはずだった。
「がは!!」
「いやー、惜しかったのう小僧。じゃが生憎、儂の魔法”粉砕”は、小さい鉄板なら複数作れるんじゃ。」
オッサンの拳には、小さな鉄板が作られていて、それが今僕のお腹にめり込んでいる。”過剰加速”を使ったせいでより強い衝撃がお腹に伝わり、胃の中の物を吐き出してしまう。
オッサンが僕の頭を踏みつけながら、ラスティに向って叫ぶ。
「聞こえとるか!そこのヤツ!お前の相棒は負けた。もうお前らは負けじゃ!大人しくそこの女を寄越せ!」
そう叫んだ瞬間、ラスティ達の方から聞こえていた銃撃が止む。多分向こうの奴らも自分達の勝ちを確信して、攻撃を止めたんだろう。
ラスティはイヴを何とかして逃がそうと考えてるけど、その間にイヴがラスティの元を離れて、オッサンの居る方向へ歩いていく。
「ほう、自分からこっちに来るとは感心じゃのう。」
「わ、私が貴方達についていけば、エディやラスティは助けてくれますか?」
イヴはオッサン相手に僕達の無事を保証してほしいみたいだけど、多分それは無理だ。
「いや、それはできん相談じゃ。この小僧は儂を虚仮にした。その償いは受けてもらわないかん。」
するとオッサンの籠手の回路が光り、僕の頭上に鉄板が作られる。このまま僕を潰すつもりなんだろう。
「ほな、死ね。」
そう言うと同時に鉄板がゆっくりと動き出す。ゆっくり潰して苦しむ様を見るとか悪趣味がすぎる。
ついに、鉄板が僕を潰そうとした瞬間、イヴが叫び彼女の体から血管のような模様が浮かび上がる。
「だ、だめーーー!」
そして、彼女の体から爆炎が発生した。
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