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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

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リトキスの活躍と仲間達の実力

 それにしても猫の体温って意外に高くないか? 胸の辺りが、じんわりと汗ばんで気持ち悪くなってきた。猫は目をつむったまま、ぴくりとも動かない。

 胸の上で眠るというのは、よほど信頼しているという事なのかもしれないが、暑苦しくなってきた。──早く起きてくれないかな……


 空に浮かぶ焔日ほむらびは、だいぶ傾き始めているらしい、ずいぶん良く眠ってしまったようだ。

 そうしていると宿舎の門が開く音がした、どうやら仲間達が帰って来てしまったらしい。

「あれ──団長と猫だ」とメイの声がする。

 すると猫が耳をぴくぴくっと動かして目を覚ます。

 ぴょんと俺の上から降りると、地面の上で背伸びをし、大きな欠伸あくびをしてユナの元へ歩き出す。


「猫と昼寝ですか?」

 脚にじゃれつく猫を撫でながらユナが言った。

「まあな、いつの間にか上に乗られていて大変だった」

 そう言うとメイとユナが「いいなぁ──」とハモった。何がいいものか、胸元を見ると汗で湿っている。ウリスとエウラ、リトキス達も側に来ていた。


「おう、ご苦労さん。どうだった? リトキスと魔法の剣は?」

 パーティ統率者リーダーのエウラに尋ねると、「圧倒的でした」という返事が返ってきた。

 危険な「暗黒の大地」ではあるが、魔法の源である魔力に溢れた場所だ。魔法の剣との相性もすこぶる良かったらしい。


「魔法の刃を剣に纏わせた状態を維持していても、魔力の消費はほとんど無いみたいですね。内包する魔力量によるのかもしれませんが」とリトキスが説明する。

 リトキスはこういった事に対する分析力もあるのでありがたい、なにしろ俺が魔法の剣を持って、冒険に出る事が出来ないのだから。


「それで『廃獣ベダンモヒトグフトアモス』と遭遇してしまったのですが」

 廃獣達の中でも危険な奴だ。廃獣と呼ばれる連中は魔法を使わないが、危険な特殊能力を持つ個体が多く。グフトアモスは大きな体に固い皮膚、巨大な角を持ち、体中に生やした魔力鉱石を撃ち出して攻撃してくる上に、それを爆発させる能力があるのだ。

 この危険なけだものは耐久力も高く、「暗黒の大地」で最も危険な敵の一つとして数えられている。それを相手にリトキスの魔法剣と、連続攻撃する剣技の組み合わせで、難なく勝てたという。


「お陰で大量の魔力鉱石と、魔獣の剛角を手に入れられました」

 エウラとリトキスの背負う背嚢はいのうから突き出た、ねじれた角が、その獣の大きさを物語っていた。メイやウリスらもリトキスの強さに驚いたと語るが、リトキスは違う事で驚いていた。


「それよりも僕はユナ──さんの魔法に驚きましたが。なんでもオーディスワイアさんの錬成品で強くなったとか。噂で聞いた事があるのですが、昇華錬成をした錬金鍛冶師ってもしかして……」

 俺はユナに袖をまくって腕輪を見せるよう頷き掛けた、少女は頷き返して銀の腕輪を見せる。


「これが……昇華錬成の──凄い。各属性を示す宝石が入っているんですね」

「それは最初は全部銀製品だったんだ、昇華錬成すると花の装飾部分が宝石へ変化したんだぜ」

 俺が解説すると「凄い」と、また繰り返す。

 いつまでも少女の腕を掴んで腕輪を調べていたリトキスだったが、相手の困った様子を察し、慌てて手を放すと謝罪する。


「あっと、ごめんなさい。つい……しかし彼女自身の魔法も、正確に敵の動きを牽制して止めたり、不意を突いたりと的確で、前衛としては助かりましたね」

 ウリスについても、エウラやメイについてもリトキスは誉め、この旅団の団員は皆、こうなのかと尋ねてくる。


「いや、生憎あいにくと俺は冒険に出ないから分からん」

 お前から見てどうかは知りたいから、全員と組んでみて今度教えろと言うと、リトキスは少し寂しそうな顔をして「そうでした、もう冒険には行かれていないんでしたね」と呟く。


 仲間達の実力を把握したいというのは自分も同じだと言い、リトキスは快く承諾しょうだくした。

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