冒険の方法 ー転移門についてー
若い三人組の冒険者が来た日から、この小さな鍛冶屋に人が訪れ始めた。多くは駆け出しと、以前からこの鍛冶屋を贔屓にしてくれていた客で、そういった客は爺さんが死んだ事を知ると哀しんで、金や冒険で入手した素材などを気前良く差し出してくれた。どこぞの業突く張りの素材屋にも見習って欲しいものだ。
駆け出しの話によると、火の神が住まう都市「フレイマ」で新しい転移門が造られたらしい。
……おっと、この世界について少しは説明する必要がありそうだ。
この世界は混沌に包まれている。我々が今居る大地は、砕かれた丸い惑星の一部に乗って居る様な感じで、混沌の中を小船の如くプカプカと浮かんでいるらしい。確認した事はないが。
それに元は丸い大地だったと、伝承で伝えられてはいるが、今では誰もそんな事を信じちゃいない。
ともかくこの浮遊する大地は、四柱の神によって支えられている。
火の神ミーナヴァルズ。風の神ラホルス。水の神アリエイラ。地の神ウル=オギトの四神である。
この四柱の神はそれぞれの都市に住んでおり、実際に会う事も出来る。会話は通常「巫女」によって神の言葉を代弁するらしいが、その場合は神は人の姿を取るらしい。なにしろ神の本体というか、顕現体と言うらしいが、それはとても大きな(燃え盛る)蛇や竜の姿をしているらしく、一カ所から動く事は出来ないらしい。
らしい、らしいと連呼しているがそれは仕方が無い。なにしろ俺が見た事のある神は、火の神と地の神だけなのである。地の神は大きな男──武装した巨人であり、戦士達の守護神としても考えられているので、人気があるのだが……その半面あの神は、人の姿を取る(小さな姿を取る)事が出来ないらしい。他の三柱の神は人の姿を取って街中に出る事もあるようだが、ウル=オギトのその姿は……失礼ながら戦士達の守護者という貫禄は微塵も無い(思い出したら笑ってしまいそうになる)。
つまりこの浮遊する大地「フォロスハート」は、神々の恩恵によって成り立っているのだが、この大地から得られる資源だけでは、生活して行く事は難しいのである。
それ故に我々は、神々が作り出す転移門を通って、他の世界に様々な資源を求めて、冒険の旅に出るのだ。
転移門は神々が好き勝手に生み出せる物では無い。数々の世界から集めた神鉱石という、神の力に影響する力を秘めた結晶を孕んだ石が、大量に必要なのである。それもそれぞれの神に合った属性の神鉱石が必要なのである。
ともかくそうして得られた神鉱石によって、新たな転移門が都市フレイマにできたらしい。これでしばらくはフレイマの街に多くの冒険者が向かうだろう。新しく出来た転移門の先は、未知であるが故に危険だが、冒険者は、それを乗り越えて数々の素材を持ち帰る事で、認められるのである。
今日も俺はそんな連中の為に、せっせと武器や防具を錬成するのである。




