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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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遠征拠点からの帰り道で

 昼食を食べて拠点へと戻ると、門の前に荷車が停まっていた。

 拠点で待っていたリトキスとカムイとレンネルの三人が荷物を受け取っているところに、俺とユナとメイが戻って来たのだ。

砥石といしが届きましたよ。見てみますか?」

「ああ」

 玄関の前まで運ばれた砥石の機械。

 座りながら踏み台(ペダル)を使って円筒型の砥石を回転させる機械。

 かなりの重量があり、それを四人で部屋まで運ぶ。

 この部屋には武器や防具を置ける棚を設置する予定だ。──すでに棚を作る木の板や棒、釘などはそろっている。


「これでよし」

「壁には以前の家主が使っていたと思われる棚を設置する穴が空いてますね。これを再利用しましょう」とリトキス。

「剣を立て掛ける台なら今日中に作っておこう」

 俺はそう言って三人の男を昼食に行かせる。

 ユナとメイは毛布と布団が届いたら二階の部屋へと運ぶ事になった。

「それまで掃除をしてますね」

 魔法使いの少女はそう言うと友人メイと一緒に奥へと歩いて行く。



 俺は武装庫に入ると、五本の剣を立て掛けられる台座を加工する。木の板を切り、削り、台に乗せられた大きさの異なる剣をしっかりと支えるくぼみを作る。

 我ながら手際良く一台目を作り上げると、二台目に取り掛かった。

 こうした作業は得意なので、毛布や布団が二階の寝室に運ばれ、仲間達が様子を見に来た時には二台目が完成していた。


「こんなもんか」

 そう言いながらリトキスの長剣を台に置く。

 台の手前には四本の短剣を固定する板も取り付けた。

「ああ、いいですね。短剣も置けるんですか」

「さすが鍛冶職人! 大工にもなれますね!」

「それはめているのかいないのか」

 カムイの言葉に首をかしげる。


「槍用の台は無いんですか?」

「槍は長さによるな。短槍なら剣の置ける場所に置けるが長物になると──、別の台を用意しないと。それまでは壁に取り付けるかぎに固定するしかないかな」

 まだ夕方くらいの時間だ。ミスランに帰るまでに、長槍と大剣を置ける台くらい作れるかもしれない。

「よし、残りの時間を使って槍と大剣用の台を作ってみよう」

 俺の言葉にレンネルが「よろしくお願いします」と口にする。──なんだかんだで姉に甘い弟なのだ。




 夕暮れが近づく前にもう一つの武器設置台を作り上げる事が出来た。

 仲間達は再び買い出しに出掛け、俺が注文した道具や棚を作る資材を購入してくれた。

 新しい棚やテーブルなども搬入し、各部屋に運んで行く。


「作ったぞ~槍と大剣を置ける台」

「お疲れ様です」

「そっちもな」

 調理場にも新しい戸棚を設置し、さらに陶製の食器もかなりの数が置かれていた。

 木の器や深鉢ボウルなども用意されている。

 陶製の水槽すいそうも調理場に置かれ、いつでも料理が出来る状態になった。


「これで大体の物はそろいました」

 リトキスが旅団拠点に必要な物を書いた一覧表に印を付けながら言う。

「そうか。では俺はミスランに戻るよ」

「え~、もう帰るの?」

 メイが不満そうに口にした。

「錬成台は用意したからな。回復薬の素材も少ないが準備してある。台を使って自分で作ってくれ」


 冒険者なら回復薬くらいは錬成台で作れるのだ。中には俺がそうだったように、武器を強化するくらいは出来る者だって居る。

「あ、それと余った資金がこれです」

「おう、副団長に戻しておくよ」

 リトキスから皮袋を受け取ると、俺は帰り支度をして建物の外に出た。

 空を見上げると、そろそろ焔火ほむらびが沈む頃だった。


 細い路地を通って大通りに出ると、多くの人が行き交っていた。どうやら冒険から帰還した冒険者達が転移門から戻って来たようだ。

 馬車の停留所に行く前に転移門のある広場を見てみる事にした。──俺が冒険者として遠征に来ていた頃よりも転移門が増えている。

「懐かしい」

 朧気おぼろげだが、ここを訪れた記憶がよみがえってきた。

 アディーディンクとリゼミラの三人の時に何度も遠征に出たものだ。


 ゲーシオンの冒険者達が荷物を背負い、通りにある管理局の素材買い取り所まで歩いて行く。

 その中に居る、一人の男が目に入った。

 その男は幅広の剣を背負い、肩から荷袋をげていた。

 そしてその男の左腕は、肘から先が無くなっているようだった……

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