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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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忙しい日々 ーさらば閑古鳥ー

 翌日には多くの客が鍛冶屋へやって来た。──今はこの店は「オーディス錬金鍛冶工房」と名乗って、看板も鍛冶場の壁にかかげている。小さな物だがその看板には「黒き錬金鍛冶の旅団拠点」とも書いてあるのだ。

 別に他の旅団員が来てはいけない規則など無いので、客はこのくらい来てしかるべきだったのだが、何故かここ最近は一日に三人来たらいいくらいの客しか来なかったのである(おそらく壁や柱の修理をしていたので休みだと勘違いした客が居たのだろう)。


「ふん、誰だ。閑古鳥が鳴き始めているなどと言った奴は」

 俺はそう毒を吐いて気持ちを落ち着けると客の要望を聞き、金額と強化予測値を伝えて、数日後に取りに来るという客の対応をした。──その中の一人は壁に架けられた掲示板を見て、金属から打ち出して武器を作って欲しいという鍛冶屋らしい依頼をしてくれた。


「それ見た事か、鍛冶屋でもりっきり? まったく、閑古鳥が聞いて呆れる。尻丸出しのエロい格好ばかりしているから、おかしな幻覚でも見たのだろうな」

 俺が錬成材料を取り出しながら、そう独り言を呟いていると後ろに人の気配が──


「えいっ」

 どすっ、と小さな人影が軽く体当たりしてきて、俺は精霊石を手にしながら狼狽うろたえる。

「もう、そんな事を言っているとレーチェが()()怒るよ」

 小さな人影はメイだった、その後ろにはユナも居る。


「最近は腰から下げた防具も身に着けているじゃないですか。た、確かに以前はちょっと……見えてましたけど」

「そうだろう? あんな風に尻を出しているなんて、きっと(いん)ら──」

 そこまで口にしてはっとした、鍛冶場の入り口にレーチェが立っていたからだ。だが幸い彼女は入り口から外を見ているようで、こっちの言葉は聞こえなかったらしい。


「おっと、依頼のあった真紅鉄鋼アウラバルカムの剣を作る準備をしなくては」

 俺は炉の側の作業台に精霊石を置き、素材保管庫から真紅鉄鋼の延べ棒を取り出す。

 入り口前に居たレーチェは、侍女(旅団員でもある)のリーファと何かしゃべっている様子だ。しばらくすると鍛冶場に入って来て朝の挨拶をする。


「あら、今日はお仕事が入ったんですの? 閑古鳥が鳴き始めなくて良かったですわね」

「おかげさまでな。ところでリーファと何を話していた?」

「ああ、それなんですけど。何やら()()()()()()()()()が、こちらをじっと見つめているとかで、まあ危険な様子が無いのなら放っておきましょうと──」

 おかしな格好の少女と言うと──カーリアの事であろうか。まあ何か用があるのなら店に入って来るだろう、こちらは炉を使う準備をしながらレーチェ達に簡単な指示を出す。


「昨日に引き続き冒険に行くのは止めはしないが無理はしないように、疲れた状態では本領は発揮できないぞ。だが、探索に行くと言うのなら今日はこの四人で『炎の丘』に行って燃結晶や火の精霊石などを集めて来てくれ、ただし! 火の悪鬼『ヴァルノクス』には注意しろ、戦う場合はユナはまず──」


 こうして彼女らに綿密な作戦を伝え四人を送り出す。今日はカムイ達三人は休みの日だ、なんでも昔住んでいた宿舎でお別れ会をして貰ってくるらしい。

 今は彼らは「黒き錬金鍛冶旅団」の団員宿舎で、レーチェやリーファ、ユナにメイと共に生活しているのだ。


 俺も宿舎に鍛冶場ごと移り住めばと声を掛けられたが、遠慮しておく事にした。折角せっかくこの鍛冶場をゆずり受けたのだから、この場所も残しておきたいのだ。


 炉に火をおこして燃結晶を投入し、真紅鉄鋼を融解させる──火力を上げる為に、さらにふいごを使って風を送り込む。

 こういう時は右脚の義足でも簡単に鞴を扱えるので、炉の前で鞴を踏みながら真紅鉄鋼を柔らかくし、金床に乗せて手早く金鎚で金属を叩いて延ばしていく。激しい火花を散らしながら真っ赤に焼けた金属が、形を変えながら不純物を火花として外へ放出しどんどん硬さを増してゆく。


 かん、かん、かん、かん、かん、かん……

 炉の中に入れて金鎚で打ち、剣の形が整ってくると、ここから慎重に作業を進めていく。


 今回の依頼は真紅鉄鋼の剣に「硬化」「劣化防止」「斬れ味強化」などなどの強化錬成を同時に行う、昔ながらのやり方(完成した物に「強化錬成」をするのは新しいやり方、剣を作っていく行程の中で強化も行うのが昔ながらのやり方)で剣を作っていく。


 作業の途中で鍛冶場に客が入って来たが、用件をテーブルの上にある紙に書いておくか、後でまた来てくれと声を掛けると、了解したという合図をして店を出て行った。

 これはいよいよ鍛冶場を手伝う人間を雇うべきだな。

 そんな事を考えつつ、剣を作り上げていった。

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