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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第六章 休養と若手の育成

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様々な想いを抱いて

 夕方に遠征組から荷物が届いた。明日の夕方には帰るむねが書かれた簡易な手紙と、冒険で手に入れた素材や、水玉葱の瓶詰めが入っている。

 明日はパールラクーンへ出向く事になったが、別に泊まる事にならないだろう。──今日は素材を倉庫にしまう作業を俺一人で行い、団員にはニオとフィアーネの訓練に集中させた。


 それにしてもだ、ナンティルは行商ではなかったのか、あの業突く張りっぷりは演技だったというのだろうか。とてもそうは思えないが……


 素材を全て倉庫に入れ終えると、さすがに疲れてしまう──以前なら、こんな程度の運動で息切れするなどあり得なかった。

 将来──数十年後、老化によって体力が落ちた時は、こういった状態になるのだと、前もって体験しているみたいだ。


 自力で歩くのも困難になるなど、若い時には微塵みじんも考えなかったが、けいを傷つけ、気が巡らなくなっただけで、この様な状態になるとは──逆に考えれば、今からこうした経験をした事で、未来に備える気持ちが出来たのは良かった。

 筋力を付けて体を維持するのはもちろん、気を巡らせるのに効果的な食べ物や、薬なども作ったりしてみるべきだろう。


 夕食をカムイとエアネルだけに任せるのも気が引けたので、手伝う事にする──塩漬け肉を焼いたり、蒸したりするだけだ。それにちょっとしたタレと付け合わせを用意する。


「暗生草の入った調味ダレが無くなりそうですね、俺が作ってみてもいいですか?」

 カムイがそう言うので、調理場にある調理法を記した帳面ノートを取り出してやる。

「材料を揃えて、後は材料を刻んで混ぜるだけだから」



 今日はニオとフィアーネの分も作る──それでも、遠征に出ている五人分は減るのだ。

 夕暮れ前に冒険から仲間達が帰って来ると、いつも通り、素材をしまってから食事を始める。今日は食事の前に、俺が明日パールラクーンの神アヴロラの、治療を受けに行く事になった経緯などを説明しておいた。


 管理局からフォロスハートを巻き込んでの大事になった今回の件、あくまで平和を求めての条約が締結されただけとはいえ、魔法の武具の製造方法を別の世界の人間(別種族)に教えるというのは危険な事だ……もちろん、その為の和平条約も合わせて結んだ訳だが。


「はっ、大袈裟おおげさだね。男一人の治療に神様が出て来たり、条約結んだり、武具の製造方法を要求したり……もう、何が何やら」

 リゼミラはそう言って不満をあらわにしていた。──政治的な判断、みたいな事柄が昔から苦手な奴だった。


 食事を終えるとパールラクーンへ出向する事と、さらに明日は、三人の女性上級冒険者と共に冒険に行く事になったと説明する。


「そこで、向こうの実力に合わせて、こちらも上級難度へ行きたいと思う者に行ってもらおうと思う。上級に挑戦したい者は居るか?」

 そう問うと、リゼミラ、リーファが真っ先に手を挙げた──その中にカムイと、遅れてヴィナーも手を挙げる。


「……上級難度の注意点は現役のリゼミラから聞いておくように、それでも明日の冒険で上級に挑戦する気持ちがあるのなら──まあ、認めよう。ヴィナーは魔法使いとして個人的には、まだ中級難度で成長して欲しいと思っているが。──カムイに関しては、最近の成長振りからすると問題は無いだろうと思う──ギリギリ及第点って感じだが」

 カムイは成長を認められて自信を持った様だ。過信は駄目だが、自信を持てなければ、仲間に頼りっぱなしの、使えない冒険者になってしまう。


 リゼミラとリーファは、二人の面倒を見ながらの冒険になると思うが、よろしく頼むな。そう言って各自の予定を決める相談を行う。


 部屋に戻ろうと、通路の一番奥にある自室に向かうと──部屋の前で母猫にじゃれついている子猫達の姿が。

「ウニャァ──」

 ドアを開けて部屋に入るとライムも部屋に入って来た。子猫達も母猫の後をついて来て、部屋に入って来る。


 どうやらまた俺の腹の上に乗って、気の流れを回復してくれるつもりみたいだ……ライムは。

 子猫は、おしっこを漏らさないでくれるならいいのだが……部屋の隅に小さな猫砂を入れた箱を用意しているが、寝台ベッドの上で眠ると子猫達が降りれないので、床の上に横になる事にする。


「よしよし、今日もよろしくな」

 ライムの喉を撫でてやると、彼女は喉を鳴らして応えた。


 床の上に座布団などを敷き、毛布を掛けて横になると早速ライムがへその辺りに辺りに乗って来た。子猫達も母猫に寄り添ったり俺の胸の上に乗って暖まろうとする。

 猫達の体温を感じながら、ゆっくりと眠りに落ちていく──

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