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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第五章 混沌の海と神々の大地

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改築される鍛冶屋と仲間達の新居

 宿舎からも見える新しい鍛冶屋は急速に建築が進んでいた。あまりの早さに何事かと尋ねると、人員の増加に加えて、建築の最新技術が管理局から提供されたせいだと言う。


「石壁を積み上げる間に塗る接着剤なんですがね、これが巧い具合に石と石を繋げてくれるんですが、接着するのも早く、しかも丈夫で。壁を分解する時は接着剤を融解する液体を吹き掛けると、あっと言う間に柔らかくなるってんで、大助かりですわ」彼はそう言って霧吹きを見せる。

 どうやら技術班の建築担当の連中が、錬金術で新たな技術を開発したようだ。この新たな建築資材がこれからの標準スタンダードとなるのだろう。


 親方気質の男は颯爽さっそうとその場を立ち去って、資材の運搬うんぱんなどを細かく指示している。効率化を図る監督作業を担当していたらしい。


 工事現場の周囲から見てみると、四区画あった土地に一斉に建造を始めるらしく、慌ただしく作業員が石を運んだり、図面を確認したりしながらてきぱきと働いている。

 見ていて気持ちが良い作業風景だ。


 俺はそこから歩いて行き、住宅の多い場所までやって来た。そこにはアディーの借りた住宅がある──壁に囲まれた二階建ての小さな建物があり、庭に置かれた荷物を運び入れている男達が居る。

 敷地内に入って行き、アディーは居るかと尋ねると、二階の開いた窓に向かって声を掛けた。すると窓からアディーが顔を見せる。


「あ、オーディスさん。ちょうど良かった、子供達の面倒を見てもらえますか」

 来た早々に子供の面倒を見る事になってしまった。引っ越しの手伝いをしに来たのだが……まあ、片脚の不自由な奴の手伝いなど必要ない様子だ。三名の管理局の職員らしい男達が庭に置かれた木箱を運び入れている。


「分かったよ、どこに居るんだ?」

「一階の手前です、そこから入れますよ」

 すると窓越しにアドラストスの姿が見えた。少年はこちらを見ると手を振って、裏手に回れという動作をした。

 庭から建物の裏手に向かうと確かに裏口があり、そこから中に入る事が出来た。ここも靴を脱いで家に上がるよう作られている。


「おじさんがきたぁ──」とアドラストスが言うと、退屈そうにしていたリッカが、こちらに駆け出して来て、俺に体当たりするみたいに左足の太股に抱きついた。

 すると膝から下の感触が違う事に気づいたのだろう、拳を作ってすねの辺りをコツンと叩いてくる。


「あっ! 膝がっ!」

 痛むふりをする俺を無視してリッカがズボンをまくった、靴下も履いているので分からなかったのだろうが、そこには金属の義足があるのだった。


「防具?」

 アドラストスはそれを見てそう言った。

「いや、義足だよ。怪我して脚が無いんだ」

 そう言って膝から下を繋げる革帯ベルトを外して見せてやる。

「あし──ないよ?」

 リッカが義足の中を覗いてそう感想を漏らす。俺は笑って少女の手から義足を取り返して右脚に固定する。

「これが脚の代わりなんだ」

 少女は分からない様子で困った顔をする。


 すると部屋の隅に置かれた箱の中から人形を取ってきた。

「ねこぉ──」と言って、小さな白い猫のぬいぐるみを差し出す。

「ねこ、さわりたい」

「ぼくもぉ──」

 少年少女はそう言うが、猫は子供達が苦手な様子だ。

「う──ん、また今度な。今は調子が悪いんだ」


 そんな他愛ない会話をしているうちに、アディーが部屋に入って来た。荷物は運び終わって、後は箱から衣服などを出して箪笥たんすなどに片すだけだと説明する。

 そんな父親にリッカは猫の人形を見せて「ねこ、ちょうしわるい?」と尋ねる。娘と同じ様な困った顔を俺に向ける父親。


「宿舎に居た猫な、子猫を産んだばかりで気が立ってるんだよ。近づくと引っかれるから」

 ああ、と納得して子供達に猫に近づく時は一人でじゃ危ないぞと注意する。──言う事を聞くかどうかは怪しい感じだ。


 しばらくは子供達の相手をしながら昔話などを交えつつ、アディーもまたリゼミラと冒険に出ようと思っている事を確認する。

 レーチェも言っていたが、三勇士のうち二人が現役で入ってくれるとなると、うちの旅団もかなり高い評価を得られる旅団になるだろうな、そう話すとアディーは言った。


「最近聞いたんですが、オーディスさんの鍛冶屋、凄い評判らしいじゃないですか。新しい技術開発に成功したりとか、金色狼こんじきおおかみ時代も錬金鍛冶師として僕達の武具に強化をしてくれましたけど、今はもっと上達したんでしょうね」

 そういった近況報告も話しながら、今月いっぱいで管理局を辞めると伝えたので、来月からは冒険者として、またよろしくお願いします。と頭を下げるアディーに俺は笑い掛けた。


「ばか、俺はもう冒険には行かないよ。団長兼錬金鍛冶師として後援者にてっするからな」

 そう言うとアディーは「そうでしたね」と寂しそうに笑って見せた……




 宿舎に戻るとレーチェとカムイが剣を手に戦闘訓練をしながら、呼吸法を駆使して気を練る練習をしている。離れた場所で同じ事をエアとレンが行っていた。


「熱心なのは結構だが『操気』は連続して行うと危ないぞ。慣れないうちは特にな、目眩めまいや呼吸の乱れなどが出たらすぐに休憩しろよ」

 仲間達に声を掛けつつ調理場に向かい、戻って来る仲間の為に飯の用意をする事にした。

「あっ! 膝が!」は神○月さんがやる、わざとらしい感じで(笑)

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