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井戸  作者: 佐分利
2/6

まさか、ナース長に怒られると思ったら、全く怒られないなんて...

むしろ俺のことを気にしているようだったけど


「どうしたんだろう?もしかして知らず知らずの内に、俺に謎の力が身に付いたのかも...」


これで俺は、もう誰にも文句を言われずにサボり続けることができるぞ。


「ちょっと!漢御さん!いつまでサボり続けるの!!もう仕事終わったのよ!!」


10分後・・・


「ガミガミガミガミ」


30分後


「ガミガミガミガミガミガミガミ」


「あ、逃げよう。」

俺は、ガミガミ言っているナース長にばれないようにこっそり逃げた。


俺は、一人だけの男子更衣室で帰り支度を行った。

隣の女子更衣室はにぎやかだというのに、

独りぼっちはつらい...でも慣れてるしな...むしろ心地よい。


でもこれだけ女子更衣室がにぎやかだと、何を話しているのかが気になってしまう。

僕は、うすい壁に耳を当てた。

「……知ってる?この病院って出るらしいよ。」


「え、幽霊?やっだぁ!どこに出るの?」


「それがね。ここっていう場所で出てないらしいのよ。噂では、水場のところで出るらしいのよ。」


「えー。そんなんじゃ、いつでも出るじゃない。特定の場所なら全部、漢御にやらせたのに」


「でも、なんで水の出るところなの?水が好きな幽霊なの?」


「それがね、あくまで噂なんだけど...昔、ここは井戸のある場所だったの...ある日、村で集団失踪事件があって、1か月後にいなくなった全員が井戸の中で死んでいたの。」


「え、もしかしてその怨念が、今になっても続いてるってこと...」


俺は、壁に耳を当てるのをやめた。

まさかこの病院に、そんな都市伝説があったなんて、

でも俺、幽霊とか全く信じないんだよね。

そもそも幽霊なんて人間が恐怖心に駆られて、生み出した想像上の存在なんだよ。

つまり、幽霊は、いない。昔が井戸だかなんだか知らんけど


「帰ろ。ばかばかしい。」


俺は、男子更衣室のドアを開けて、病院の従業員出入口を目指した。

ちなみにナース長は、まだ誰もいない壁に向かって説教をしていた。

「あの人、洗脳でもされてんのかよ。」


なんだかあまり見てはいけないような気がしてきた...

でも帰るためにはナース長の横を通らないといけないんだよな。他のやつらどうやって通ったんだよ。


薄暗い病棟で、蛍光灯が今にも消えそうにパチパチと音をたてる。こういうのを不気味な雰囲気というのだろう。

病院は声が響きやすいこともあってナース長の大きな声とドクンドクンという自分の心臓の音が聞こえる。


バレないようにバレないようにと抜き足差し足忍び足でナース長の横を通った。


「もう少し、あともう少しだ...」


陰キャである意味を証明するかのように、俺は存在を消して歩いた。




ちょうど、ナース長の真後ろを通った時だった。


聞こえたのは、僕の心臓の音だけだった。


「あら、お疲れ。随分と女子更衣室で怖い話をしていたみたいだけど、あなたも聞いてた?」


ナース長の急な雰囲気の変化に戸惑っていた。出るのは、返事ではなく脂汗だけだった。


「どうなの?聞いたの?どうなの?聞いたの?」


答えなきゃ...


「はい。聞きました。」


「そう。聞いたのね。まぁ、昔の話だし関係ないんだけどね。今までもこの噂を信じる人がいたけど...」


「は、はい。」


「分かったのならいいの。お疲れ様。」


俺は、ナース長に「さようなら」も言わずに帰ってしまった。

俺はこの病院の幽霊伝説に首を突っ込みかけたらしい。

幽霊がいないとは言っても、関わるといい気がしない。


「もう、帰ろう。」


いつもより駆け足になっていた。

そして、心なしか水の出ていない水道の音がいつもより気になっていた。



明日から、毎日21時に更新となります。


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