クエスト2日目→3日目・天界のお仕事
クエスト2日目、
一日前に比べて悪魔の血管の処理工程は格段に増していた。
新たに村の住人を雇ったのだ。
早朝からダガンは枯れた森の木を伐採していく。それから集まった大量の薪で、小分けにはせずほぼまるごと燃やしていく。足りなくなった薪調達は村人に任せる。
ダガン達は悪魔の血管の無力化に専念すればいい。
作戦は大成功し、午前中の間で2本もの悪魔の血管の処理に成功した。
その結果、ダガンの接近戦、火魔法、根を掘り返す為の土魔法、フレアから習った、解毒魔法、耐瘴気魔法が大幅に上がった。
ザックは心の中で、あれ?あいつもう俺より強くね??と、後輩に追い越された劣等感を感じて更なる努力を誓った。
フレアは獲得に苦労した付与魔法をダガンに一日でマスターされ、自分には才能がないのかと悲観し、ズルイとダガンに文句を言った。
午後からも悪魔の血管駆除はさらにスピードを増した。
ダガンの火属性付与で、属性効果をもったフレアの弓矢、ザックの剣盾、ダガンの斧盾の攻撃は今までの駆除の時間を半分以下に短縮した。
無力化し倒しきれる頃には半分か炭化しているため、燃え尽きる時間もかなり短縮された。
クエスト2日目、この日の成果は10本以上の駆除に成功し、その日4人は祝杯をあげた。
酔ったザックはダガンに文句を言い始めた。
強くなりすぎ、絶対訓練してだろ、斧を剣と同じスピードで振るなんて反則だ、何で1日で俺より強くなってんだよ、そしてそれを自慢げにしないところもさらにムカつく、などなど。
それに便乗したフレアも、なんで付与魔法を一日で覚えるのよ、絶対前から使えたんでしょ、弓は絶対教えないからねとダガンを攻めた。
最初はまあまあと二人をなだめていたアリシアも途中から、自分に合わせすぎる。もっと上を目指し欲しい。家事をやりすぎる。もっと女を立てて下さいと愚痴に変わっていた。
さらにフレアとダガンに、同い年なのに敬語なのもムカつくと、敬語を使われるたびにウォッカを飲まされた。
ダガンはこの日、人生で初めて大声で笑いながら酒に堕ちたのだった。
クエスト3日目、この日は休養とした。
フレアと二日酔いのザックは道具の買い出しに、
ダガンは二日酔いのアリシアを看病していた。
すみません、と謝るアリシアにダガンは、いいよ、楽しかったし、となだめた。
この日俺はは、女神様に呼ばれた。
なんで呼ばれたかわかる?
女神様はそう言った。明らかに怒る時の顔だ。
俺はこの時、ダガンの前世、岩田さんが隣にいて欲しいと思った。
「わ、わかりません」
「じゃあ教えてあげる。ダガンについてよ、あ、ダガンてわかる?あんたが転生させた岩田和夫よ、思いだした?」
「は、はい」
俺が勇者だった頃の女神様はもっとお淑やかな口調だったのに、、天界に来た途端、口うるさいOL上司のように変わってしまった。
いや、これが元なのか。
「あんた今口うるさいOL上司みたいだとか思ったでしょ」
「いえ!そんなことは!」
「そんなことはどうでもいいの?それで?え?どういうことなの?」
「どういうこととは・・・・」
「はあ、全く、教えてあげる!
ダガンはどうしてあんなに言い神才を与えたのに、未だに低級冒険者のクエストやってんの?え?」
「あ、いえ、その、しかし、あのクエストは銀等級の資格がないと受けれないものですし、中級ぐらいにはいってるかと」
「バーカ!あんないいの与えたんだから白金にいってやっと普通よ!それ以下は低!!級も一!!緒!!」
女神の怒声が天界響く。ああ、おそらくどこかの世界では雷が雨のごとく落ちるているだろうな。
「す、すみません」
ふう、と女神は一息つき落ち着く。
「まあ、いいわ、呼び出したのはもう一つ用があったのよ」
「は、はい、」
「あんたの世界にいるアルフォードってやつ。知ってるでしょ」
「彼が何か?」
「鈍いわねー、彼堕ちかけてるわよ」
女神はそういった。堕ちる。
元はといえば異世界人や、神の加護を与えるのもその世界により良い影響を与えるためだ。
しかしそうはうまくはいかない。
神にだって間違いはある。異世界人の場合でも生前の俺のように加護を与えた者でも、力を持つことで悪に染まるものもいる。
その時俺たちは<<器を間違える>>と言っている。
私が生前に倒した魔王もその失敗から生まれた者だ。
アルフォードもそうだ。悪に勇敢に立ち向かい命を落とし転生した一人だ。
だが異常な力を持ったことで、方向を間違えようとしている。
「まだ、罪のない人を殺したりはしてないし、やってることは全部、善行をだわ。
女漁りはまあいいとして、これからの行動次第ね、彼の器間違ってるかもしれない。
気をつけといた方がいいわよ」
「、、、ご忠告ありがとうございます。ちなみにアルフォードを転生させた神は今どうなって」
「担当してたもう一人が魔族寄りの殺人鬼になっちゃってね。バカなこと考えてるみたいで天界との扉を開こうとしてるんだって、色々とあるみたいでね、こっちには対応できないみたい」
「そ、そうですか」
「だからアルフォードについてもあんたが対応しなさい。まあその代わりと言ってはなんだけど、また何十年かは受肉しなさい。あの装備も持って行っていいわ、アルフォードが殺人鬼になったら、今のダガンじゃ到底勝てないし、止める相手もあんたぐらいしかいない」
「そういうことですか。わかりました。ですが、、、そのぉ、その間の変わりの担当は?」
「私がしてあげるわ。まあ最初に担当した世界だもの、愛着もあるしそれぐらいはするわ」
「心遣いありがとうございます」
俺は頭を下げ、すぐに準備に移る。
また世話になる。そう言って探したのは生前に装備していた剣と装備一式。整理整頓が下手のいつも妻の魔法使いに怒られてたっけ。
ようやく装備を見つけ。懐かしさを感じなが早速俺は装備し始める。200年前の代物、着ることもないと、修理すらしていない。
閉めたベルトがボトリと壊れ。
軽く振った愛剣はオリハルコンの机に当たり根元から折れてしまった。
ショックだ固まってしまった所を嫁に見つかり、この後、嫁にこっ酷く怒鳴り散らされ、掃除を余儀なくされた。