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仔邪竜ちゃんは普通に育ちたい

お久しぶりですヽ(=´▽`=)ノ

 ミミアはおチチがほちいの〜

 おチチなのー

 藍色の小さな身体を上に向けて小さな手足をバタバタさせる小さな小さな小さな仔邪竜(主人)の愛らしさに下僕(保護者)たちは鼻血が吹きそうになったと後に語った。


 聖獣と邪竜が程よくいるから世界はつつがなくめぐると言われている。


 最近、この辺の邪竜は代替わりした。

 昔であれば卵からでてすぐ成体くらい、なんか暗いもんが多かった世界も明るくなりすぎて超ちっちゃい仔邪竜ちゃんが誕生した。


 この辺りの邪竜は立派な豪邸に住んでいて昔ながらのおどろおどろしい城よりもよっぽど機能的である。


 最近、世界も近代化の一途を辿り、都会でもない田舎の広大な敷地の美しい豪邸も魔動車で行き来楽ちんなので辺境感はどこにもないのである。


 ご近所の田舎町住人とも仲がよく、仔邪竜(主人)をベビーカーに乗せて散歩をしたりする様子も微笑ましく思われているようだ。


 世の中、ちみっこい仔竜がいようと、もふもふの獣人がいようと誰も気にしない、なにせ多種多様な種族が暮らしているからである。


 可愛いねぇと覗き込んだ幼年学校な児童はトカゲ人と人族の血が濃いし、お菓子食べる? と仔邪竜ちゃんにたまごボーロをあーんしてくれたのもエルフのおばちゃんだ。


 そんな田舎町の隣町には迷宮(ダンジョン)があるのでそこそこ発展している。


 もちろん、仔邪竜ミミアちゃんの誕生もあり、リニューアルオープン? した迷宮(ダンジョン)なのでそこそこ危険度は高いらしい。


 それはさておき、仔邪竜ミミアちゃんは豪邸の中心の吹き抜けがある寝室が今のところメインの生活の場所である。


 先代がのこしたキングサイズのベッドは大きいため竜体のときの寝室を使っているのだ。


 ミミアちゃん、いわくあの部屋おすくさいのー消臭剤入れてなのーと騒いでいた。


 先代の嗜好を考えれば、当たり前なのであるが、明言は避けよう。


 ふわふわの産毛は藍色でおっきい金の目の人族の赤子くらいのちみっこい仔邪竜ミミアちゃんにはまだ牙もないのに下僕(保護者)たちは()()のように血なまぐさい食事をさせようとしていた。


 どーんと置かれた肉々しい料理の数々にミミアちゃんは切れて寝室にこもったのである。


 おチチがいいのーと可愛らしい声が吹き抜けに響いた。


 「おチチ? 御血々か? 」

 「それならいきの良いほうがいいですな」

 「早速とらえてきましょう」

 邪竜が弱体化したためにもふもふ度がました下僕(保護者)たちは財宝部屋(ベッドルーム)にあふれかえる先代が集めた、金銀財宝(布団)の山のふもとでヘソ天でフワフワなワンコベッドでジタバタする仔邪竜(主人)を抱き上げてポンポンと背中を叩いてあやしながら相談した。


 ちなみにこのワンコベッドもフワフワのおふとんフワフワのーおふとんがいいのーと可愛い主人が騒いだのであわててホームセンターで買ってきたのである。


 ちなみに、下僕(保護者)たちが男ばかりなのは先代(雄)の趣味である。


 そして、可愛い仔邪竜ミミアちゃんは女の子である。



 かくして下僕(保護者)たちはからまわった。


 冒険者のお嬢さんを仔邪竜ちゃんの(お城)につれてきたのである。


 「さあ、遠慮なく御血々をたっぷりお飲みください」

 赤い髪に茶色の目のお嬢さんにちっちゃい仔邪竜ちゃんを押し付けた。


 「おチチ……出ないの? 」

 「出ないわよ」

 うるうるした金の目にたじろぎながら冒険者ギルドの冒険者、エメルは答えた。


 実はエメルはもふもふの下僕(保護者)な狼魔獣人ビッコスと虎魔獣人エグランにホームセンターユウスイで家のちび主人を助けてくださいーと連れてこられたのである。


 「おチチ〜、ミミア、おチチがいいの〜お肉はむりにゃのー」

 「ああ、ミミア様〜涙が……」

 「なんて、尊い」

 「……もふもふ……」

 下僕(保護者)たちがエメルにしがみついてえぐえぐ泣くミミアちゃんにもだえた。


 なんだ、こいつら筋肉イケメン獣人にインテリ筋肉美形獣人にゴリマッチョ美丈夫筋肉獣人のもふもふのくせに……とエメルは内心ため息をついた。


 エメルは中堅冒険者である、ホームセンターユウスイにはリニューアルオープン? の仔邪竜の迷宮に行くために冒険の買い出しに仲間と来てたのである。


 ホームセンターはスーパーベルガとファッションセンターエレガントを同じ建物、園芸センターを別棟にもつ大きな店舗である。


 隣はヤライドラッグというドラッグストアで地元冒険者なエメルたちも仔邪竜ちゃんの下僕(保護者)たちもよく来てるお店である。


 「私、子供いないから母乳は出ないわ」

 「きゅ、おにゃかすいたにょー」

 ちっこい仔邪竜ちゃんが悲しそうな顔でしがみついた。

 くっ反則すぎる可愛さとエメルは内心もだえた。


 「ねぇ、筋肉獣人ず……この子に何食べさせてるの? 」

 「もちろん、力がみなぎるように血の滴るステーキとかユッケとかだが? 」

 インテリ筋肉美形獣人ことメガネ獅子獣人クイティスが腕を組んで答えた。

 「しゃぶしゃぶとかすき焼きとか鳥刺しとかとですね」

 と筋肉イケメン狼獣人ビッコス手を上げた。

 「レアハンバーグにローストビーフに唐揚げも準備しましたな」

 と顎に手をやりゴリマッチョ美丈夫筋肉虎獣人エグランが得意げな顔をした。


 「こ、このどアホ〜、こんな赤ちゃんが食べられるかーい」

 「し、しかし我が君はじゃ……」

 エメルの剣幕に耳を抑えながらクイティスが反論しかけた。


 「おチチが赤ちゃんご飯ってアレンちゃんから聞いたの」

 キラキラした目で仔邪竜ミミアちゃんがエメルを見上げた。


 あのクソガキと毒づいたビッコスはエメルににらみつけられて黙り込んだ。


 アレンは豹獣人の赤ちゃんでまだまだ人型が取れないもふもふである。


 月齢がほぼ一緒のミミアちゃんの未来の側近候補で、親がこの町に住んでるため散歩でよく合うのでそこでキューキュー、ぴすぴす話を聞いたようである。


 「哺乳瓶と赤ちゃん用粉ミルク買ってこい、あとおんぶ紐」

 エメルが高圧的に筋肉獣人ずに指を突きつけた。


 こ、この小娘……と思いながらも震えが止まらないクイティス、耳が下がりっぱなしのビッコスにひいっといってバックをつかんだエグランにエメルは拳を突き上げた、は、や、くと威圧追加で筋肉獣人どもは一目散に戦略的撤退(逃亡)した。


 恐ろしき戦乙女である、ちなみにエメルは体術も得意なバリバリ前衛な斧使いで、可憐な容姿に似合わない、撃破のエメルの二つ名を持っていることは筋肉獣人どもの知らぬ話してある。


 小娘、怖い、小娘、怖いとつぶやきながら魔動車を運転するクイティスの隣の助手席でシートベルトをしてガタガタ震えるビッコス、後ろでほ、にゅ、びん……といいながら上がらない耳を押さえながら通信機画面を操作するエグランもちろんシートベルト装着済みの三人の心はただ1つつ……怖いーである。


 かくして筋肉獣人どもはいつものホームセンターユウスイに飛び込んだ。


 隣ー薬局ですぞーと騒ぐエグランに恐怖にかられてる二人は一目散にサービスカウンターに……


 「ちょっと、お尋ねしたいだが、エメルをいずこに? 」

 高貴な雰囲気のイケオヤジがエグランの腕をつかんだ。


 その先でサービスカウンターまで行き着かず帯剣した美女に首根っこ捕まれてジタバタしてるクイティスと屈強な竜人に後ろから持ち上げられたビッコスが、手ぐすね引いて待っていたエメルの仲間たち(パーティー)に捕獲されたのであった。


 実はエメルは一流冒険者のパーティーに所属している。


 「捕まえましたか〜」

 熊耳の赤い髪のローブ姿の美少年が向こうから走ってきた。

 「これから、お聞きするところだ」

 どこか色気のある低い声でイケオヤジが黒い目を細めた。


 このイケオヤジ、実は王族である。

 立憲君主制の昨今、王族であろうとも食い扶持を稼ぐのは必須と王国立冒険者ギルドに登録して活動している変わり種であるが、果たして本当のところは? である。


 「わ、我が主に指一本触れさせん」

 「それより哺乳瓶と獣人用赤ちゃんミルクを買いに薬局に行ってですな」

 「僕、人形じゃないですよ」

 完璧に頭パニックな筋肉獣人ずを見て王族イケオヤジ、エリオットはなるほどとつぶやいた。


 「とりあえずフードコートに行きましょう」

 「そうしよう、店員殿に叱られそうだ」

 魔法使いイリアスとイケオヤジ王族エリオットが仲間たちに目で合図して筋肉獣人ずを隣のスーパーと繋がってるフードコートに連行した。


 剣を帯びた警備員と制服姿の店員がこちらに意識を向けたのが見えたのである。


 フードコートのテーブルに少々強引に座らされ、目の前に眼光鋭いイケオヤジと美少年、両側に圧迫感ありまくりの美女ティアナと竜人ケインに押されて、さて君たち何にすると低い良い声で言われた時には筋肉獣人ずは失神しそうになった。


 おかしい、我らは邪竜様の邪悪なる下僕のはずだ、なのになぜ震えが止まらない? クイティスは思った、本当は仔邪竜ちゃんの間抜けなる下僕(保護者)が正しい評価であろう。


 みんなの飲み物を美少年と竜人が運んできたところでイケオヤジが筋肉獣人ずに鋭い眼差しを向けた。


 「さて、話していただこう、私の愛しいエメルはいずこに? 」

 「……いつの間にできてたんですかー」

 「あら、知らなかったの? 」

 筋肉獣人ずが答える前に美少年魔法使いと美女剣士が突っ込んだ。


 本当にやばい奴らと関わったのですとビッコスは背筋に冷汗が伝わったのを感じた。


 「エメル殿は我が君の居城にお招きしている」

 クイティスがクリームソーダのアイスをつんつんつきながら目線を上げず答えた。


 城? お城なんてあったかしら?

 いえ、見たことも聞いたこともありません。

 そうだよな〜

 コソコソと冒険者たちが話している。


 居城といっても現代風の豪邸である。

 メガネ筋肉獅子獣人も格好つけたいお年頃らしい。


 「では、そこにお連れいただこう」

 「……は、わははは、残念だったな、我が乗り物は四人乗りのベビーシート付だ〜」

 クイティスが妙に嬉しそうに拳を突き上げた。

 「行く前に赤ちゃんの哺乳瓶と赤ちゃんミルク獣人用とおんぶ紐を購入したいのですぞ」

 「エグラン〜」

 下がる耳を立たせながら主人の買い物を主張するエグランにビッコスが慌てて肩を叩いた。


 ちなみにエグランの前にはロイヤルミルクティー、ビッコスの前にはアイスカフェオレがおいてある。


 「うむ、心配は無用だ、虎くんは哺乳瓶と赤ちゃんミルク獣人用とおんぶ紐をケイン君と買いに行きたまえ」

 「わかった、行くぞ」

 立ち上がりひょいとエグランを肩に担いでケインはあるき出した。

 エグランはまたまた耳が下がったまま、隣のヤライドラッグにつれていかれた、筋肉男の2乗……ある意味ご褒美……いや視覚の暴力と言えよう。


 「さて、狼殿には案内をしていただくとして」

 「あ~僕、魔動車運転できません」

 はいとビッコスが手を上げた。

 うむ、狼殿は、うちの車の助手席に乗るといい、ティアナ君が運転するとエリオットは答えてクイティスに目を向けた。


 「さて、獅子君、行こうか」

 イケオヤジの妙に色気のある微笑みに一瞬呆けたクイティスは肉球アタックをくりだした。


 すごいモフモフ攻撃である、当たっても幸せすぎるとうらやましそうにイリアスがつぶやいた。


 当然ながら避けられたのである。

 昔なら、切り裂けたのにと思いながらも悔しげにクイティスは肉球を見た。


 「余裕かよ……あ、でも赤ちゃんせんべいは買わないとか? 」

 あと茶菓子と飲みもんだなと主夫、クイティスが肉球付の指を曲げた。


 「赤ちゃんせんべいを頼む、獅子君と駐車場に行ってる」

 エリオットがイリアスに視線で頼んでクイティスの手首をつかんだ。


 お、おい〜……茶菓子と爽快茶ーと騒ぐ主夫なクイティスは連行されていった。



 かくしてダメダメ下僕(保護者)どもはエメルの仲間たちによって捕獲され仔邪竜城(豪邸)に連行されたのであった。


 

 豪邸の豪華な居間のソファーに女性が小さい仔邪竜ちゃんを膝に抱いてくつろいでいる。


 「お腹すいたの」

 小さい仔邪竜がスリスリと頭を赤毛の女性の胸にくっつけた。

 「役に立たないわねー、エリオットに連絡入れようか? 」

 エメルが腰のウエストポーチ(空間拡張バッグ)から通信機を取り出した。


 「それには及ばない、待たせたね、エメル」

 居間の扉が開いてイケオヤジが獅子獣人を引きずって入ってきた。


 「……あら、じゃあミルクはなし? 」

 「おチチほしいのー」

 小首をかしげたエメルをうるうるしい目で仔邪竜ミミアちゃんが見上げた。


 「ミミア様、きちんとケイン殿のご助力でおチチは購入しましたぞ〜」

 荷物を持った、竜人ケインを従えたエグランがぶんぶんエコバッグを振った。

 ケインは兄弟姉妹が多いのでこういうことに慣れているのである。


 「おチチなの〜ありがとうなの〜」

 ちっちゃい仔邪竜ちゃんがピコピコと短い尻尾をふりニコニコした。


 うわー反則な可愛さとイリアスが顔を押さえた。


 「赤ちゃんせんべいも購入したよ」

 イリアスがスーパーの袋を手に近づいてお兄ちゃんだれ? と小首をかしげた仔邪竜ミミアちゃんを撫でようとした。


 「我が主に危害を加えるなら、俺のシカバネを越えて」

 「クイティス〜刺激しちゃまずいです〜」

 ビッコスがティアナの後ろから叫んだ。


 「さて、邪竜殿? 私の愛しいエメルを返していただこうか? 」

 イケオヤジエリオットは迫力満点でエメルの膝から仔邪竜ミミアを抱き上げた、あ、ズルいですとイリアスが騒いでる。


 ちっちゃい産毛フワフワの藍色の体がブルブルふるえて金の目から涙があふれそうだ。


 「わーん、お姉ちゃん〜怖いのー」

 「ちょっと、エリオット! やめなさいよ! 」

 ミミアを取り返そうとエメルが手を伸ばしさらに高くエリオットがかかげた。


 ミミアはギャン泣きである、たじろいだエリオットはエメルに返した。


 「だいたい、先代邪竜(父親)はどこにいった? 」

 「……先代様は……」

 「親父殿は……」

 「なんで言わなきゃいけない」

 ミミアちゃんの鳴き声とほら赤ちゃんせんべいでちゅよとイリアスの甘い声とそれよりミルク〜というエメルとかの騒がしいバックミュージックを尻目にズーンと暗くなる筋肉獣人三人組に、勇者とか名乗るゴロツキに滅された? とエリオットは思った。


 最近、()()()()というゴロツキに聖獣の神殿()や邪竜の()が荒らされる被害が出てるのである。


 「伴侶の王都の姐さん(主の母親)と筋トレ旅にでてます」

 ビッコスが困ったように両手を組んだ。

 そう、先代の趣味は筋トレでスメル臭い居城? がミミアちゃんのお気に召さなかったようである。


 先代邪竜と先代王都邪竜は筋肉を愛する似たもの夫婦で仲良しさんで早めに引退したようである。


 「ああ、王都の新邪竜様の方が同じ夫婦から生まれたんにおっきくて、肉とか食ってたし、先代主は肉好きだし、あれでいいかと思ってたんだが……ってなんで言わなきゃならん」

 ツンっとクイティスが顔をそむけてお茶の準備にキッチンにいった、手伝うぞと竜人ケインがあとに続いた。

 「主より、ほんの20年だけ年上なだけですなのにですぞ、成体なんですぞ」

 王都の闇は深いですなとエグランがしみじみと遠くを見た。


 20年違えば、大人になる種族も多い。

 邪竜にいたっては世界の澱とか淀みとかが多ければ多いほど成体で大きく生まれてくるのであるが、ミミアちゃんの地域は平和でどうにもならず、あのちびっこさである。


 「……なるほど、それであのちびっこ……」

 「邪竜退治に俺様参上だぜ」

 エリオットが言いかけたところで派手派手しいツンツン頭な男が勢い良く扉を開けた。


 後ろに露出過多の女性たちがきゃー素敵〜勇者様〜と三人従ってる。


 千客万来である、この屋敷のセキュリティはどうなってる? とエリオットは自分たちを棚に上げて頭を抱えた。


 「たいじされちゃうの? 」

 イリアスに抱かれてちっちゃい仔邪竜ミミアちゃんが赤ちゃんせんべいを両手にもったまま金の目で()()()()を見た。


 きゃー可愛いですわ〜

 なんだいその子〜

 ちび邪竜ですね

 露出狂なお姉さんたちが騒がしい。


 ()()()()がたじろいだ。

 ちっちゃい仔邪竜の純真な目……自分の有名になりたい欲のために倒して良いんかと少し思ったが、今更引けるかよと拳を握った()()()()である。


 「仔邪竜殿が()()()()()理由がわかってないのかな? 」

 イケオヤジ、エリオットが冷たい笑みを浮かべた。

 

 「な、なんだよ、邪悪な竜なんて退治して当たり前だろ! 」

 ()()()()が剣を引き抜いてエリオットに切りかかった。

 エリオットはフレイルで受けイリアスが杖をかかげた。


 「おバカが()()()()だなんて世も末ですね」

 「うるせーだれが自称勇者だ! 俺はきちんと神殿の選別を受けた勇者だ! 」

 イリアスに蔑んだ目で見られ()()()()が叫んだ。


 一応、光を導く主神の子神殿で選ばれたお飾り勇者(名誉職)なのである。


 ()()()()にイリアスが電撃を落とした。


 ()()()()ヘデインの仲間らしい黒いスケスケレースのローブにへそ出しワンピースの栗色の髪の魔女オルガナが障壁と唱え半減させた。



 光を導く主神の子神殿の聖印を胸の谷間に揺らしたスケスケの白いベビードールみたいな長衣と超ミニのチューブトップのワンピースを着た神官キノミが指を組んで術を唱えようとしたところでクイティスがワゴンでお茶とお菓子を運んできて床で感電してピクピクしているヘデインの足を引いた。


 「うわー、なんで侵入者が増えてんだよ」

 「獅子君はのんきだね」

 どこか寒い笑い顔を浮かべてうめくヘデインにとどめを刺そうとしたエリオットをビキニアーマーらしきものを着た? 水色の髪のローリンがレイピアで攻撃した。


 豪邸の居間は大荒れである。

 クイティスと一緒に帰ってきたケインが腰を落として戦闘態勢をとりティアナは攻撃してきたローリンのレイピアをファルシオンソードでうけた。


 「クイティス、ミルクはできましたのかな? 」

 エグランがのんきに手を振った。

 「あ、ああ」

 「わーいおチチにゃの〜」

 仔邪竜ミミアちゃんがエメルの腕の中でピコピコ短い手を振った。


 あれ、何のために戦闘してるんだっけとみんなの心は一つになった。


 「あ……ほら……」

 あほらしいとヘデインはなんとかワゴンから足を抜いて手足を投げ出した。


 光導く主神の子神殿でお飾り勇者呼ばわりが悔しくて邪竜退治に出たものの、守護を求めて行った聖獣はちみっこいワンコ系が十匹コロコロとなつかれうまったり踏んだり蹴ったりだったとヨロヨロと座り込みヘデインは思い出した。


「そういや、おっさん、邪竜の役割ってなに? 」

「邪竜の役割とは、世界の瘴気を調整する、滅亡を防ぐものだ」

 エリオットがヘデインに鋭い眼差しを向けた、瘴気が溜まると世界が滅びるようである。


 わーいおチチなの〜と両手でミルク瓶を持って飲む仔邪竜ミミアちゃんと良かったですなとよろこぶエグラン……()()()()はガリガリと頭をかいて立ち上がった。

 「帰るぞ」

 「え? 光導く主神の御子の為に役割をはたすのでは無いのですの? 」

 キノミが狂信的な笑みを浮かべて手を掲げた。


 空から圧倒的な光が降り注ぎ天井が蒸発する。


 「邪悪は滅び、光導く主神の御子が再び光臨すべし」

 キノミが手を前に突き出した。


 危ない〜と言う誰かの声と光に周りがホワイトアウトする。


 

 みんな確実に死んだと思ってしばらくして視界が戻ってきた。


 エメルの腕の中にいたはずの仔邪竜ミミアが中空に浮きミルク瓶に何か光るもんを溜め込んでいる。


 「おチチが……おチチがぁ〜」

 うぇぇぇぇんとミミアちゃんはエメルに抱きついた。


 そして立派な豪邸の屋根まで蒸発して青い空が見えた。


 そんな最上級の神聖魔法が……とキノミが力尽きたように床に座り込み竜人ケインとローリンに両腕をつかまれた。


 「離せ〜世界は清浄でなければ〜主神の御子が治める地に邪竜などー」

 「おチチが〜おチチがー」

狂ったように暴れるキノミとうぇぇぇぇんと光り輝く哺乳瓶を振り回すミミアちゃんが同レベルに見えて仕方ない一同である。


 「あのね、あんたがどうに神様を信じようと勝手だけど……」

 エメルが泣く仔邪竜ちゃんをクイティスに押し付けてウエストポーチ(空間拡張バッグ)からグレードアックスを引き出した。


 「可愛いミミア(うちの子)をいじめたのは承知しないからね〜」

 哺乳瓶弁償しろーと斧で風圧を起こしてキノミと一緒に()()()()一行を器用に無くなった青空が見える屋根から放り出した、次の瞬間、耐えきれなくなった豪邸の一画は崩れ去った。


 遠くに先代邪竜が作ったアスレチックがみえた。


 おやおや、君がお母様なら私は仔邪竜ちゃんのお父様だねとエリオットはのんきなことを言ってる。


 もふもふ筋肉下僕(保護者)は恐ろしさのあまりミミアちゃんを抱えてブルブルふるえて外を見ている。


 ありゃすごいねとティアナが額に手をさしかけてのぞいた。

 イリアスがとっさにシールドを展開したので人的被害はないようだ。


 「そ、その凶暴女は返すから、あんたらも帰ってくれ」

 「ミミア様、哺乳瓶なら予備がありますぞ」

 「明日からどうします? 」

 「お家なくなっちゃったの? 」

 戸惑う主従にエメルが大丈夫、エリオットんちになおるまでくればいいわとミミアちゃんを奪われた。


 さあ、行くぞとケインにエグランは抱えられ主を返せとクイティスが追いすがり、あのお世話になりますとビッコスがヘコヘコ頭を下げた。


 仕方なく世話になったエリオットんちがこの地方の離宮でミミアちゃんの可愛さにやられた女官とか侍女にミミアちゃんが甘やかされまくったり、ミミアちゃんが力を封じ込めた哺乳瓶を狙う謎の一団に襲撃されたり、王都の仔邪竜ちゃんのお兄ちゃんな美青年邪竜がやってきたりするのはまた、別の機会に語ろうと思う。


 後にエリオットたちは『仔邪竜ちゃんの子守り冒険隊』と近々から二つ名をかえることとなる。


 そして、ミミアちゃんはまだまだ超ちっちゃい仔邪竜である。


 「わぁぁぁん、ミルク粥が良いのービーフシチュー無理なの〜」

 「また、あんたらかい! 」

 「主は邪竜だぞ! 」

 「このアホー」

 今日もにぎやかにまだまだなおらない邪竜の豪邸でなく離宮をもふもふ筋肉下僕(保護者)爆裂冒険者(お母さん)がミミアちゃんの食べ物をめぐって大騒ぎである。


 今日も世界は平和でまだまだ続くようである。

読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いなぁ、もう。 聖竜がこの地で生まれたら最初から大きいのかしら? いる場所で成長速度とかが調整できるなんて、もふもふ好きにはたまらない世界ですね。 コロコロワンコ、わしゃわしゃしたい…
[一言] 可愛いね(笑)
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