AIと人間
初めまして、すこくらげ☆と申します
初めての投稿です
少しでも目に止まるものがあれば…と
展開には無理があっても…文章が破綻しないよう
注意しました
ご一読頂けましたら本当に嬉しいです
舞台は近未来の地球…今からもっともっと先の話である
俺の名はジョウ…要らないロボットを解体して
ジャンク品として闇市場でそれを売りつけている
しがないメカニック崩れ…
今日も戦争の跡地からロボットの死骸を見つけ
金になりそうなのを見つけようと物色してると
「おい!」
え?…振り返ると…頭は坊主、丸いサングラス、体格は細身なれど
身長は高く…引き締まった体であるのは服の上から分かる
そんなことを考えていると
「そんなジャンク品ばかり相手したって金にならねえだろ?」
「それはそうだが…いやまず君は一体誰だ?」
「俺の名はニウラ…まああだ名は要らねえよ」
(初対面なのに何だこの馴れ馴れしさは…)
驚く間も無く
「もっとうまい儲け話があるぜ…乗ってみる気はないかい?」
そう言われても今のこの暮らしは質素なれど安定してるし…それに…
「やるのかやらないのか…俺は割と気が短けえんだ」
いきなりの驚きと…でも冷静さは失ってないのか…問われて考え込むジョウ
安定を捨てこの男の言うことを聞く…いやまずこの男が信用たる人物
なのか確認しないといけない
「言いたい意味は分かるけど…あんたに着いて行って今以上の生活が
出来るという保証は?」
ニウラは困った様子もなく
「その手の台詞はもう耳にタコが出来るくらい聞いたぜ…その用心深さ
ますます気に入ったよ」
問いかけを無視して話を進めるニウラに少しばかり業を煮やしてしまったのか
「質問に答えてくれないか」
問い詰めると
「良くも悪くもなるもあんた次第ってこった」
返答に困るジョウ…うまい話にしては持っていきかたがあまり上手く無いな…
そんなところから…ある程度この男を信用したのか
「まあ…とりあえずどんな話なのか聞かせてくれないか」
「よしきた」
こうして男二人は薄暗い工場へ向かうのだった
「で…話とは」
ジョウが先に口を開くと
「あんたロボットの残骸を毎日相手して…それで生計立ててるんだろ?
ここは一つ…完成品のロボットを手にする気はないかい?」
(完成品のロボット…これはしかしこの時代大変に高価なもので
一部の富裕層か大企業の上役など…その持ち主は限られてる代物だった)
「え?!」驚きを隠せないジョウ
そんなジョウに対し
「俺はあらゆるところにコネを持ってる…使えそうな部品を寄せ集め
完成品のロボットを作ることを考えつくのも…そんな深刻に考えるほどでも
ねえってね…ただし俺にはそのスクラップ共を一つのロボットとして
完成させる技量がねえ…そこでだ」
ジョウとて毎日毎日残骸をレストアして市場に売り出してる身
一度くらい本物のロボットを見てみたい…そしてあわよくばそれを自分の…
しばし熟考が続く…何分経ったんだろうか
ニウラは事務所の椅子にふんぞり返り…タバコなど吹かしている
考えが少しまとまったのか
「ニウラ…君の言ってることは例え嘘でも魅力的な話だ…が…俺はここでの
生活もこれでも気に入っている…その話と両立は出来ないのか?」
こう尋ねるが早いか
「ジョウ…お前さんがここにどれだけ暮らしてるのか…それは知らねえが
新しいことを始めるのにここの暮らしが邪魔になるってことを
まず知らなきゃいけないな」
熟考も切羽詰まってきて焦りに変わってくる頃
ニウラも待ちくたびれてしまったのか
「よし…まあ俺も今日すぐにって話でもねえんだ
また明日来るからそのときでも…」
言葉を遮るように
「分かった…あんたの言う通りしてみようじゃないか」
ニウラはパッと顔が明るくなり
「よし!そうか!じゃあ商談成立だな…ただ今日のところは最後の晩餐ってやつだ
別れを惜しむなり気持ちの整理をしておくほうがいいぜ…ただ身支度だけは忘れるなよ」
いきなりの話に戸惑うジョウ…ニウラが去って工場で一人ぽつんと佇んでいると
「何であんな得体の知れない男の口車に乗ってしまったのか…それとも俺も気がつかない
冒険心を揺さぶられているというのか…」
ニウラが言った通り…最後の晩餐のようなものを済ませ
(一体何が待ち受けているんだ…期待はほとんど持てず…不安ばかりで
寝付けない…)
気がつくと朝…日光の光がジョウの頬を照らす
「ああそうだった…昨日は…」
それでもあまり変わらない様子で身の回りのことをしてると
「あの男だ…」ニウラがこちらに近づいてきて
「よお!夕べはよく眠れたかい?」
「ああ…まあ」
「よし…それじゃあ俺の計画を少しばかり聞かせてやるか」
(すでにニウラの思うままに事が運んでることに恐怖を感じながら
でもこの男…悪人ではないような気がする…根拠は無いが…」
ニウラが説明するには
ロボットがする競技を見世物にし
それが大衆の人気を掴み…AIロボットは無くてはならない
存在になっているという
「そこでだ」ニウラが口を出す
「AI搭載じゃない…生身の人間が操縦するロボットって触れ込みはどうだ?
常識を覆すとまでは言わねえが…それでもそんなロボットは戦時中の話で
今現在は存在しねえ…希少価値はすげえものがあるはずだが」
(どうだいって言われても…しかし確かに以前のロボットは戦争下において
AIの性能より人間の持つ反射力、認識力…共に優位であったので
乗り込むスペースはある…が)
「ニウラ…あんたの言うことは分からないでも無いが…自分が乗り込むとなると
身体中がAIに命令されるロボットに勝ち目はあるのかい?」
「そこよ…」含み笑いでこう答えるニウラに内心恐怖を感じながら
「長年スクラップを相手してるってことは…知らない間にそれぞれの部品の特性
やら欠点やら…ロボットの全てを知り尽くしてるってことだ…
最も最新鋭のものはまだまだ未知のものなんだろうけどな…だから
AIロボットがいくら正確かつ緻密な動作であろうとも…お前さんに
かかれば乗り込んだロボットの全ての能力を発揮出来るということさ…
AIとロボットの完全なシンクロというのはまだまだ先の話だと
見た限りそう感じた…うまくやればAIを出し抜くことは十分可能ってことさ」
「そんな話が…いやしかし…」
「動揺するのも無理ないさ…だが俺は嘘はついてねえぜ…ここにあんたにこんな話を
持ちかけてること自体が一つの証拠と考えられないかい?」
「確かに…」
(この時点でニウラに相当に心を許している自分に気付く…この男一体…)
「どのみちこの話はあちこち転々としなきゃいけねえんだ。考え事があるなら
乗り物の中でしたらどうだ」
「そうかもだな」
この時点でジョウは…見知らぬ不安よりこれから先に起こるべくことに
どこかしら期待を持っているようにも感じられた
「まずは部品調達だ」ニウラがこう言う
「とりあえずだな…AIの息のかかってない…旧世代のロボットの残骸じみたものを
探すんだ…もちろん完成品があれば申し分ない話なんだが…先の大戦で全て失って
しまったと聞く…政府の発表はあやふやなものが多いが…これに関しては
長い調査で裏を取り…間違いないものだと保証はするぜ」
「分かった…まあ俺のところに流れてくるものも…売り物になるのは
一部の装甲とか手のひらの一部とか…まあそれをAIが加工して資源として
成り立ってるからこの商売もあるんだろうけどな…」
「まあ言えばそのAIといずれは勝負することになる…その覚悟は出来てるか?」
(なかなかに親身にこちらのことを考えた物言い…この男…悪い人でも無さそうだな)
そんなことが頭にあったのか
「AIが敵か…悪い話でも無さそうだな」
「よし」ニウラはこう頷き…
「まずは…ロボットの完成を急ぐにしたって情報が無いと話になんねえ」
そう言うが早いか…ニウラの両手には小型の端末のようなものが
「これは放送でもやってるAIロボットの競技の中継があるところをモニターしたものだ
つまり…この放送でAIどもが関係無いところがある程度だが分かるという代物でね」
画面を見てみると…確かに大都市はこの放送が引っ切り無しに行われていているのが分かる
「そうじゃない地域を見て探すんだ…旧時代の遺物ってやつをな」
(非常に手間がかかりそうな話だ…しかしそうするしか無さそうだ)
故郷を捨てたジョウには今のところ失うものがない…この境遇が
頼れるものはニウラしか居ない…そう感じざるを得ない心境にある
「分かった…じゃあ一体…」
「この辺りはどうだ……よし…ジョウ…最初の行き先が決まったぞ
これだとあと4時間くらいはかかる…少し仮眠でも取っておくんだな」
「分かった」ジョウは昨日の寝不足から…スッと眠りに落ちた
ニウラの乗り物から降りると…
「さぶうぅぅ!」ニウラがこう大声を上げる
(確かにこれは冷えるな…というかここはどこだ?)
「ニウラここは一体…」
「すまんがこれは機密になり教えることは出来ねえ…が…ロボットの残骸を
集めるのが役割じゃねえのか?」
(確かにその通りだと一応の納得はしたジョウ)
「さ〜てスクラップ置き場をしらみつぶしに探してみっか」
(行動して間もないけど…ニウラのこの楽観的なところに惹かれてるのかもしれない)
車で移動し…鉄くずが山のようにある廃工場のようなところに到着した
「こりゃまた大量だな…役に立つものがあればいいんだが…」
車から降り…瓦礫の山を登るのか観察するのか…とりあえず使えそうな部品を
探す
「これは!」「う〜んなんかこれは…」「よし!」「いやダメだ」
こんなやり取りが何回続いただろう
(ここには何もないかもしれないな)
ジョウもニウラもどこかしらそのような雰囲気になり
「あー!もうしょうがねえ!次当たるか」
(そうだな…と思いきやニウラの足元に何やら場所に似つかわしくない丸く光沢を放つものが)
「おい…足元のそれは…」
ニウラがそこに目をやると…
「おお!これは!旧時代の…これは頭部だぜ」
やったぜ!と大はしゃぎしたいニウラに対し…冷静なジョウを見かねて
「ま、まあこれで来た甲斐はあったぜ…」
そう答えるのが関の山なニウラだった
ここから先も似たような展開が続き…地元の警察に追われるなんてこともあった
この道中
部品も着々と揃っていき…頭部、胸部、下半身、両腕、右足
そう…残るは左足のみとなっていた
「さて左足の在り処はと…」
ここまで割とすんなり事が運んでいたので…どこか余裕を感じさせる二人
モニターに映るそれを見て
「よしここだ…」ニウラの決定に口出すこともなく…言えば忠実な部下のように
なっていたジョウ…元々人をああだこうだとこき使うような人物ではないのだが
「分かった」
(これでもし左足が見つかれば…一体ニウラはどうするつもりなんだ)
「さてお仕事お仕事」いつもながらの軽さでニウラが瓦礫の山に手をつき始める
(まあそのときはそのときか…こんなことを考えてる自体…今ひとつ俺も覚悟が決まって
無かったようだな…)
後悔なのか自責の念なのか…分からない感情をジョウが襲う
考えてると手が止まり…作業に没頭出来ないのを尻目に
「あった!あったぜ!」歓喜とも呼べる声でこちらを嬉しそうに見るニウラ
そんなニウラを見て…
(この男に付いていこう…長い間かかった部品集めも…ニウラの情熱があったからこそ)
そんなことを考えてると涙目になってるジョウ
かといって泣き崩れるようなこともなく…ニウラはニウラで
「よく頑張ってくれたな…まあここ数日はこの旅のようなもので心底疲れたろ
うまいもんでも食って英気を養おうぜ」
「そうだな」
戦利品である左足を抱え…宿泊先へと向かうのだった
ここ数日は穏やかな日を過ごす二人
が…ジョウが最初から思っていた疑問が…旅の忙しさから考える余裕が無かったものが
「なあニウラ」
「なんだ?」
「こうしてロボットの部品は揃った…自分の腕があれば修復して先の大戦同様に使える
ものになるだろう…それを何に使うつもりなんだ?」
珍しくニウラは無言で
「さあメシにしねえか?今日はこれでもちょっとは張り込んだんだぜ」
「そっか…じゃあ戴くとするかな…うんこれはうまいよ」
「だろ??」
(ニウラは本当に不思議な奴だな…でもなぜここまでして自分に接近
手伝いとはいえ身の回りの世話もしてくれるし…)
まあ考えても…そのままベッドに直行して就寝するジョウだった
それから1ヶ月は経ったのだろうか
ようやく部品をそれぞれ結合し…一体のロボットが完成していた
「スクラップの山から…よくここまで…」
ニウラは純粋な感動なのか…それとも…とにかく大喜びで
「よくやったなジョウ!見込んだ甲斐はあったぜ!」
ジョウはニウラの喜びに特に同意することもなく
「そろそろ聞かせてくれないか…あんたこれで一体何をしようと…」
しばらくの沈黙ののち…ニウラが説明を始めた
「AIロボット同士を戦わせ…それを賭けの対象にしてる連中が観戦するところがある」
驚きなのか呆然なのか…言葉が出ないジョウに構わず話を進める
「実は俺も先の戦争でそんなことをやらされる羽目になってしまった
志願制では無かったが…勝利者には莫大な報酬があるという
金に目が眩んだ訳じゃ無かったが…これで家族にもっといい暮らしを
して欲しいって気持ちがあったのは否定出来ないがな」
話が今ひとつ整理出来ないジョウ…でもその混乱の頭で分かる範囲でもと
「ニウラ…それじゃあ…このロボットでAIロボットと戦えと…」
「そうだ」
「ち、ちょっと待て!相手は最新鋭のAIを組み込んだロボットだぞ!
勝ち目があるとでも思っているのか!」
珍しく逆上するジョウ…その気持ちは分かると言いたげに
「AIの動きは緻密なように見えて…どこかパターンじみた動きをするところがある
それを教えてやる。俺の知る限りの対AI戦略を」
ここまできて乗せられたと考えるのが普通だ…ジョウ自身もそう思っていた
しかし…最後の最後までそれは分からない
奇妙な魅力をニウラに感じていた…いや最初からそうだったのかもしれない
そんなことを考えながら…事務所の大型モニターに映し出される
AIロボットの動作パターン、どういう判断を下すのか…攻撃と防御の切り分けは…
「見ろ…ここががら空きだ」「ここで装甲の隙間が見えるから…銃撃する」
「相手はAI…何をするにも躊躇が無い…そこを逆に狙うのさ…」
こうした説明を聞くうち…うまくいけばAIロボットに勝てるかもしれない
そう思わせるに十分なニウラの説明だった
その気になってきたジョウを横目で確認しながら
「今日のレクチャーは終わり…また明日だ」
「ええ…」
(いつしか教官と一兵卒のような関係になってしまったな…)
でもリーダーシップ気質でないジョウは
「まんざらでもないかもしれないな」
そうしてまた夜は更けていくのだった…
実際コクピットに乗り込み…手足を動かすようにロボットも操縦出来るように
「ジョウ…予想以上の適応力だな…これなら…」
ジョウがニウラの側まできて
「AI無しでAIロボットに勝った英雄ジョウ…派手に宣伝してくれよな」
「そうだな」そう答えるニウラの声は…いつもの張りのあるもので無かったのを
ジョウは気が付かなかった
それから数日はロボットのメンテナンスやバランス調整の日々
そのようなものに明け暮れ…ジョウはそんな中で更に自信を深めたのか
「いつでも来やがれ…」そんなことを口にするようにまでなっていた
ジョウのそんな気持ちが乗り移ったのか
「ジョウ!試合の日程が決まったぞ!」
血相変えて迫るニウラに少し怯みながらも
「そうか」
冷静を失わないこのジョウの姿を見て…自分と同様…いやそれ以上かもしれない
必要以上の感触に打ち震えながらも…もう一人の男のことを気にしていた
それから4日経ち…いよいよ対戦の日が
会場というのか…そこはドーム型の施設になっていて
防音設備も申し分無い様子
「ここだと中で何が起こってるのか…皆目見当つかねえな」
「そうかもだな」
淡々とした会話を交わし…いざドームの中に
入ってみたら予想以上に質素なもの
「まだ始まりの時刻から7時間もある…さて今のうちにマシンの最終点検と
いこうぜ」
「ああ…」
「AIが組み込まれてないロボットか…」
呟くようにニウラが言うと
「ああ?何だって??」聞き返すジョウに対し
「いやいや特にな…」生返事で返すニウラだった
客はまばらでも…前座のロボットが対決するのが始まった
銃火器の携行は許されず…いわばロボットプロレスのような形相で
引き分けに終わることも珍しくない
そんな様子を見つめながら
(しかしAIの動作の機敏さに…ニウラの情報とは少し…いやかなりの
開きがあるな)
どうやっても出番は来る…その思いが細かいことまで考えられなくなってしまった
かのようなジョウであった
それから次々とカードは進み
いよいよジョウの出番が…
「いいかジョウ!これまで教えたことを忘れるんじゃねえぞ!
相手の弱点だけを見ろ!そうすると必ず勝機は訪れる!」
「ああ…」そう答えるジョウは緊張感より…絶対に勝つという気迫じみたものが
身体中を支配していた
銃火器の携行が許される戦いなので…入り組んだ壁のようなものが
地面からせり上がってくる
「これでは相手が確認出来ないな…というか前情報は無かったのか?」
疑問に思うも…3、2、1…0!
開始時刻を回るも…微動ともしないジョウの機体
無線で「おいおい!そのままじゃ敵に蜂の巣にされちまうぞ!」
モニター越しだが…ライフルに目をやり
「そうはさせないさ…」こう思わせるのは…ニウラに対する忠義なのか
それとも自己の持つ闘争本能なのか…
そんなことを考えているうち
「ガシュゥゥゥン!」
敵のライフルの銃弾が近くの壁に命中したようだ
「場所を…」銃声とは反対側に足を進めるジョウ
「奴は今どこに…」とりあえずこちらも応戦だとばかり
ライフルを敵陣の方向に向け…射撃!
「キュウゥゥゥン…」
でもここで妙なことに気が付いた
(AIならここでこういう動作をするはず…なのだが…今対峙しているこれは…)
何か不具合っでも起こしているのか…そう考えたらこれは勝機!
思うが早いか…勇敢にも敵陣近くまで乗り込むジョウ
壁の隙間から敵が目視出来た
「そこか!」頭部に装備されたバルカンを連射する
(壁に守られてるのを計算するのはさすがAIだな…)
「だがそれ故に…動きを予測するのは容易い」
「こっちだ!」命中必至でバルカンをまた連射するも
「おかしい…何故ここに居ない…」
予測と違う展開に戸惑うジョン
「しかし…眼前に迫る敵には違いない…この勝負に勝てば…」
結局金銭に目が眩んでしまったことに対する後悔の気持ちがここにきて…
「姿を見せろ!」戦場では当たり前の物言いなのか…逆上しているのか
それとも突如湧き出る邪念のようなものを振り切ろうとしているのか…
狡猾に忍び寄るイメージというのをジョウは感じていた
(AIも随分進歩したものだな…)
自分は負けるかもしれない…そう思ったとき…何故か恐怖では無く
達観的とも言えるものがジョウの全身を包み
その安堵じみたものからなのか…さらに敵陣の奥まで侵入する
「これで奴を目視出来るはず…どこだ…」
不気味なほどの沈黙…俺はペテンにかけられたのか…
呆然とするジョン…しかしその呆然を打ち砕く強い衝撃
敵は壁を巧みに利用し…ここまで近づいたジョウの機体の頭上に…
「これは…」乗っかられたのを振り払おうと…必死で振り落とす
動作をしても…離れない…
「どうする……」震えと恐怖の中…敵の足元が胸の辺りにきてたので
これを右腕でパンチするも…何度やっても離れない
しかし妙なことに攻撃してこない…
「どうなってるんだ…」押し迫る危機の中冷静になってきたジョウは
「今ここで右腕のライフルで敵を撃てば…決着は付くだろう…しかし…」
ジョウは兵隊上がりでは無いので…軍の教育は受けておらず
(何でまたこんな男をこの舞台に…)
ニウラの決定は…いやあいつはそもそも何がしたいのだ…良い者なのか悪い者なのか
考えるも…こちらが銃撃を受けたら最後…命が無い…
死の恐怖というのか…半狂乱のような状態に陥るジョウ
「なにライフルでロボットを爆破したところで…相手は人間じゃないんだ」
それで何かしら吹っ切れたのか…銃口を敵ロボットに…
「撃つ…撃つ…撃つぞ!!」
ズガガガガガガガガガガ
ドーム中に銃声がこだまする
敵ロボットは弾丸が全て命中して…機能を停止している
「自分の…勝ちなのか…」
満足感には到底至らず…呆然としているジョウ
ロボットから降り…ドームに居る観客からうるさいばかりの拍手を受ける
敵のロボットを見てみると…キャノピーと胴体の隙間から
血のような赤い液が流れているのが確認出来た
「血?いやAIの部品が欠損したのか…それとも…しかしこれは…」
ロボットの前まで行き…その液体が何であるのか確認しようと
「こ、これは!」
ジョンの手にあるものは…血液そのものだったのだ
「中に…人間が…」気が付くのが早いかキャノピーを開けるボタンを押し…
中には…銃撃を食らって息も絶え絶えの男が…
「そんな…相手はAIロボのはず…何故…いやまずこの男を早く病院に!」
「い、いや…」瀕死の男が口を開こうとしている
「い、いや…なんだ??」聞き返すジョウ
「俺は…先の大戦に参加した…ぐぼっ!…でも…危険な前線に送り込まれ
仲間をそこに置いて逃亡したんだ…うっ!…言えば戦争犯罪人でね…
裁判にかける前に…君と同行しているニウラと知り合ったんだ…」
「………」
「ニウラはこう言ったんだ…どうせ死ぬなら投獄してからというものより
名誉の戦死を選ばないかと…私はAIというものが死ぬほど嫌いでね
AI無しのロボットを今一度作るのが私の夢だった…げぼっ!
夢が実現したなら…憎いAIロボットをこの手を借りずとも…同士が…
このロボットには通常のAIロボットよりかなりロボットだけの存在に
なっている…AI無しって訳じゃないけどね…
だがニウラのことを恨まないでやってくれ…というのも
ニウラは当時としては性能が良くないAIの技術に疑問を感じ
そのことを政府に訴えたんだ
このロクでもないAIの補助…いや補助にもならねえもので
どれだけの命が犠牲になったのかと…全くそこはニウラと同意見という
ことさ…
「………」
政府にそんな風にたてついたものだったから…ニウラの身は
無事だったんだが…帰宅したら家族全員が殺されていた
奴はAIに異常なまでの憎悪を感じてるのさ…
だから人間同士で戦い…雌雄を決する
本来こうあるべきだというのを映像やアーカイブを調べること
じゃなく…この目で確認しないと気が済まなくなっているのさ
どうやら俺はここまでのようだが…ニウラのことを恨んじゃいない
いやむしろ…ううっ!
男は息絶えた…
ニウラ…貴様は…
そう考えたいジョウであったが…戦争犯罪人という重いものを間の当たりにし
本当に憎むべきは…そうした戦争を生み出した狂気の背景なのかもしれない
思い直そうにも…
おしまい
短い話ながらも…先に考えた結末にどうやって文章を
繋げていったらいいのか…考えつつ書きました
短いのでサクッと読めると思います
また何か思いついたら投稿しようと思ってます
読んでもらえた方へ…お疲れ様でした