短編『飼い主お嬢様とペットな奴隷』
注意事項
・全てタイトルとあらすじ通り
・描写力を上げるために奮闘中
・ガバガバ人称
・どんな話の展開になるかは気分次第
・最終目標は満足できる連載小説を書く
――セルシア学園。
世界でもトップクラスの名門校に、お昼休みを伝える心地よいチャイムが鳴り響く。
教室で授業をしていた者達は挨拶を終え、それぞれが自由に行動し出す。
先ほどまで静まり返っていた廊下には活気が。
そんな名門校に、一人の美女がいた。茶色く艶のある長い髪をゴムで縛り、ポニーテールを作り。頭から耳、そしてお尻から尻尾が生えている。目は黒く澄んでいて、笑顔がとても可愛らしい。そして可愛さだけでなく、成績も優秀。特に多くの人が苦手とする武術では、学園内でも敵うものは誰もいなかった。その姿に惚れるものも多く、男女問わず告白する人が絶えない。
お昼休みということもあり、多くの生徒が廊下にいる。そんな中でチャレンジする人が今日もおり、人だかりが出来ていた。
野次馬の円の中には先ほど言った美女と、その後輩にあたる一年生の女子が。
一年生は口を開くと。
「サティー先輩。私と付き合ってください!」
そう言って前に手を差し出す。
すると野次馬の、特に男子達が盛り上がる。一年生の容姿は申し分なく、告白されたのが男子であれば大抵手を取るだろう。
だがサティーがその手をとることはなく。
「ごめんなさい。気持ちだけ受け取るわ」
やんわりと断った。
その言葉を聞いて納得が出来ないのか、一年生は前から気になっていた事を聞く。
「リエラ先輩と付き合っているから、私では駄目なんですか?」
同性だから断られたという選択肢は無いといった感じで、そう問いかける。
リエラとは、サティーとよく一緒にいるもう一人の美女だ。しかも住んでいる家が同じで、学園内では二人が出来ているといった噂が広まっている。
野次馬達も気になっている事なのか、一言も漏らさないといった静けさ。
そんな空気で少し言いにくそうなサティーは。
「今までも何度か質問されたけど、それは――」
「サティー。こんな所にいたの?」
それは違うと言おうとしたところで、突然割って入ってきた女性の声で中断される。
声の主はサラサラの金髪をし、ミディアムな髪型。薄く青みがかった目をしており、強気な少女といった感じだ。そしてこの美女こそ、いつもサティーといるリエラ本人であった。
リエラが歩くと野次馬は割れていき、自然と道ができる。
その道をさも当たり前の様に堂々と通り、サティーの手を握ると。
「一緒にご飯、食べるわよ」
「はい」
先ほどとは違い、素直に返事をしたサティーを連れて、学食へと向かっていった。
振られた一年生や野次馬達は、その様子を暫く呆然と眺めたが。
「リエラ先輩、サティー先輩。待ってくださ~い。私も一緒に食べます」
「私も」
「俺も」
ついさっき振られた一年生の言葉に続き、何人かの生徒は後を追いかける。それがいつもの日常であり、リエラとサティーが人気者である証拠でもあるのだろう。
▼ △ ▼ △ ▼
――四年前。
簡易に、だが頑丈に造られた建物の中。
広さは中々あるが置いてあるものは机と椅子ぐらいで、主な用途は雨風を凌ぐことと食事、そして寝床だ。
現に今も、二十人ほどの女性が固まって寝ている。
寝ている床には申し訳程度の獣の皮が下に敷かれているが、地面の固さと冷たさを直接感じていると言ってもいいだろう。
上に掛けているのは毛布といった高級なものでは勿論なく、こちらも獣の皮。体全身を覆えるはずもなく、最早乗せているといっても過言ではない。
更には着ている服が薄い。全員真っ白な服と呼べるか分からないものを羽織っている。前が空いているため、人によってはずれてしまったのか完全に胸が見えているものも。辛うじて下の布は着用されているといった感じだ。
右腕には、全員腕輪の様なものが着いている。
一体何の罰なのかと思ってしまうかもしれないが、女性達にとってはこれがいつもの日常だ。
寧ろ今は夏で、女性達からすれば冬に比べて大分ましとも言えた。
そんな夜も次第に明け、鉄格子の窓から朝日の光が差し込む。
それと同時に、ガチャリと重いドアが開き。
「お前ら、朝だぞ! 喰ったら持ち場に着け!」
中に入ってきた男はそう言うと、机の上に人数分のパンと食器。鍋に入った野菜スープを置いていき、ドアを閉めないまま奥へと消えていく。
起きた女性は、未だに寝ている仲間達を起こす。
そして、各々がパンを手に取り黙々と食べ、いつの間にか出来ていたスープ担当の者が取り分けた器を受け取る。
パンはぱさぱさしており、野菜スープもほとんど具がない。最低限度の栄養しか摂取できないだろう。
だが誰一人文句を言わない。いつものことだから。寧ろ、最低限度の生活を送らせて貰えていることに、有り難いとすら感じていた。
全員が朝食を食べ終わると、持ち場に着くため男が開けたドアの奥へといく。
毎日の様に往復している薄暗い廊下を渡り、複数あるドアの一つを開ける。
中は真っ直ぐに続く通路。そして両脇には鉄で出来た檻、檻、檻。
その檻には番号が割り振られており、自分の檻へと各々が自主的に入って行く。
全員が檻に入ったのを見計らったようなタイミングで、もう一度男が来る。
一つ一つの檻にしっかりといることを確認しながら、鉄の檻に頑丈な鍵を閉めていく。
――今日も退屈な一日が始まる。
13番の檻に入り、男が鍵を閉めるのを眺めながらそう思う者がいた。
頭に耳、お尻に長細い尻尾を生やした猫人族。彼女の名は――無い。正確には覚えていないと言った方が正しいか。だが歳だけは何故か分かっており、今年で十歳。だが、誕生日は分からない。
背中まで伸びた長くボサッとした、艶が失われた茶色い髪。黒い瞳には辛うじて光が残っている。
全ての檻の鍵を男は閉じると。
「お客様には失礼のないようにな」
それだけ残してドアを閉める。
薄暗い檻がある部屋に静寂が訪れた。
だが、仲間達がいるのに誰一人話そうとしない。いや誰一人話せない。
女性達に着いている腕輪。それの名は奴隷の腕輪。
主の命令に逆らおうとすると痛みが走り、己で己を苦しめる拘束具。命令の一つに『檻の中では声を出さない』があるため、誰一人として話さない。
けれど奴隷にも人権がある。だからこそ最低限度の生活は保障され。無理な命令などをすることはできず、その場合は奴隷も反論できるし主は罰せられるのだ。
そしてここが何処かと問われれば、答えは奴隷商店。
――と、ドアに近づいてくる足音が。
薄暗かった部屋に僅かな光が差し込み、三人の人間が中に入ってくる。
一人はよく見慣れた奴隷商の男。先頭を歩き、お客様が求める奴隷の案内をしているのだろう。
それに連れられるようにして、地味な服で身を包み、フードを深々と被った少女が入ってくる。顔はハッキリと確認できないが、フードに収まらない少し長めの金髪が見え。そしてその後ろから、白髪でいかにも紳士といった感じの少し老いた男性。普通の人なら子連れで奴隷商店に来たと見えなくもないだろう。だが男性は一切無駄な足取りをせず、まるで前にいる少女を護衛するように歩いている。見る人が見れば、すぐにでも察しがつく。少女は貴族か何かのお金持ちのお嬢様。格好からしてお忍びで来た感じだろう。
流石奴隷というべきか。より良い主人に買ってもらうため、目利きに関しては他人よりはるかに鋭い。ほとんどの女性は気付き、自分の前を少女が通ると礼儀正しくお辞儀したり、体をアピールする。
13番も気付いたが、なにもしない。ただ選ばれたらラッキー程度で、少女が前を通るのを待つ。
因みにだが、いつまでも奴隷としていられる訳ではない。成人なら五年の内に買い手が付かなければ、労働力として何処かへ送られる。成人前なら五年経っても成人まで奴隷としていられる。なので、大抵の奴隷は買ってもらうために工夫するのだが、なにもしない13番。労働力となったらその時はその時。買ってもらえたらその時はその時。そう考えていた。
少女は檻の中にいる女性を一人一人確かめるように見て。だが一度も足を止めることなく歩いていく。そして13番の前に来たとき、時間にして一秒もないだろうか。少女が一瞬立ち止まった。少女と13番の目と目が合う。それも束の間、少女はまた歩き出した。そして一番奥まで見終わったのか、折り返してきて。
「この子と面談、出来るかしら?」
「はい。13番ですね。少々お待ち下さい」
奴隷商の男は、朝の罵声は何だったのかと思わせる笑顔で檻の鍵を開ける。
出る様に手で促し、13番は檻の外へ。
そして面談室へと案内される。中は清潔で、高級そうなソファや机が置いてある。床に敷いてある敷物も、どういう原理か温かさを保っていた。だがこの温かさを感じられるのは13番だけだろう。何故なら他の人達は全員、靴を履いているのだから。
「私一人で話し合いたいわ」
少女がそう言うと、奴隷商と付き添いの男性は大人しく引き下がる。仮に奴隷が暴行しようものなら、腕輪の力で出来ないから大丈夫と判断したのだろう。
高級感溢れる装飾されたドアがゆっくりと閉まり、部屋にいるのは二人だけ。
「貴方の名前は?」
少女はソファに腰を下ろすと、そう問いかける。
フードは未だに被ったままだ。
13番は奴隷という身分のため、勝手に座ることは出来るはずもなく。立ったまま。
「名前はありません。あったかも知れませんが、覚えていません」
「あら、そうなの。なら丁度よかった」
少女は少し嬉し気にそう答える。何が丁度いいのか分からず、13番が首を捻っているともう一言。
「貴方――私のペットにならない?」
▼ △ ▼ △ ▼
太陽が次第に傾き始め、夕日が照らし出したとある貴族街の一軒の家。
その二階にある一室は、他の貴族の家に比べても高級そうだと分かる。様々な家具などは、主に緑色が使われ。ぬいぐるみなどもあるが、猫をかたどったものが多いだろうか。
この広さでこれだけの物が揃っているのに、子供部屋だというのだから驚きだ。
するとドアの向こう。廊下側から階段を駆け上がる足音が聞こえてきて、ドアが勢いよく開けられる。
入ってきた主はそのまま大きなベッドへとダイブ。
「やっと今日の稽古が終わった~」
うつ伏せから仰向けへとゴロンと転がり、大きな伸びをしながらそんな事をいう少女。サラサラとした綺麗な金髪が特徴の少女の名はリエラ。
ついさっきまで行われていた稽古の時間が終わり、やっと解き放たれたのだ。
「本当に疲れたよ~。今日はさ――」
ベッドに置いてある少し大きめな猫のぬいぐるみを持って話しかけるリエラ。けれど勿論返事が返ってくるはずもなく、代わりに外から楽し気な笑い声が。
窓の外を見てみると、勇者と魔王ごっこだろうか。何人かの貴族の子供たちが剣を模した棒を持って遊んでいる。
その光景を羨ましそうに眺めたリエラは思わず。
「寂しい……」
自分の部屋を見渡しながらそう呟く。
リエラはまだ九歳だが、その部屋は大人になっても大きすぎるほどだ。現に今乗っているベッドだって、大人二人が寝ても充分すぎるほど。両親やメイドなど、とても優しい。だが、リエラは稽古ばかりでほとんど外に出た事がなかった。出たことがあったとしても、友達と呼べる人はおらず遊んだことすらない。
まるで家という檻の中に、閉じ込められているようであった。
そんなリエラも数日後には十歳の誕生日。三年後には成人となり、学校に通うのだが不安しかなかった。
仲良くできるのか。ちゃんと楽しく会話できるのか。友達はできるのか。
だけどまだ三年あるし。そうやって毎年思いながら、結局外出て他の子と遊んだことはない。今仮に、窓から見える子供たちに一緒に遊ぼうと言っても、受け入れられるとはリエラには思えなかった。
「十歳の誕生日か」
誕生日は何かプレゼントが貰えるのが通例だが、十歳だけは特別だ。子供が自分で欲しいものを決め、親の了承があれば買うことができる。
そして、リエラはこの時、ある決心をした。
その夜――。
「父さん。母さん。私ってもうすぐ十歳の誕生日でしょ?」
「そうだな」
「そうですね。何が欲しいか決まりましたか?」
シェフが用意した、その日に採れた新鮮な料理を食べながら、リエラは両親に聞いてみる。
「私、猫が買いたいの」
「猫か。母さんどう思う?」
「いいと思いますよ。誕生日になったら一緒に買いに行きましょうか」
「それなんだけど……セバスと明日、買いに行ってもいい?」
「私とですか?」
リエラの後ろに立つ執事のセバスは、まさか自分が指名されるとは思っていなかったのか、珍しく驚いた表情をみせる。
子供の頃からリエラの世話をよくし、一緒に遊んだこともあるセバス。もしかすれば、両親以上に接した時間が長いかもしれない。
愚痴や悩みもよくリエラからされる間柄だった。
「そうだな。普段リエラは頑張っているし、そのぐらいならいいんじゃないかな。それに、セバスが付いていれば滅多なことはないだろう」
「ええ、そうね。セバス。リエラを任せますよ」
「分かりました」
「ありがとう」
その日も家族で楽しい夕食を過ごし、リエラは子供一人では広すぎるベッドで眠りについた。
そして、次の日の朝。
「セバス。突然ごめんなさい」
「いえ。お嬢様の頼みであれば何の問題もございません」
リエラとセバスは猫を買いに行くため、街の中央路を歩いていた。周りの景色も貴族街から商店街へと変わり、活気が溢れている。
リエラの服装はいつもの部屋着ではなく、貴族が着るとは思えない一般庶民の服装。
両親が心配して、念のためといって着る様に渡されたものだった。これであれば、道行く人も大貴族の子供とは思わないだろう。セバスも街の人に溶け込むような、目立たない服を着ている。
「ペット店はこの道を曲がって暫くした所にあります」
セバスがそう言って、曲がろうとするが。
「ペット店には行きません」
「猫を買いにいくのでは?」
リエラが猫を買いたいと言ったので、てっきりペット店に行くと思っていたセバス。
そんな疑問にリエラは少し悪そうな顔をして。
「セバス。奴隷商店は何処にありますか?」
最近になって、スマホでもWordがあることを知りました。
電車の移動中や暇なときにちょくちょく書くので、安定して更新できるようになるかもです。