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短編『剣姫降臨』

 注意事項

・全てタイトルとあらすじ通り

・描写力を上げるために奮闘中

・ガバガバ人称

・どんな話の展開になるかは気分次第

・最終目標は満足できる連載小説を書く

 フリーダムオンライン。

 2051年の元日。突如としてネット上に現れたVRMMORPG。制作会社、製作者は一切不明なこのゲーム。

 何の宣伝もされていなかったが、そこはネットの中。流石に一人の人間ぐらいには見つけられる。前情報なしでそのゲームタイトルを見た者は、鼻で笑った。


 フリーダム? ふっ、どうせ自由何て言っても、所詮他のVRMMOと同じで自由の幅は狭いんだろ。


 そう思いつつも、まぁ一度ぐらいとダウンロードをしてみることだろう。

 サイトを開いてみると、まるで本物の絵師が描いたのではないかと思われる、キャラや世界の絵が。

 だが所詮は絵。こんなもの、今の技術では到底再現できるはずがない。

 さぁさぁ、ダウンロードが完了した。自由と言うから容量が多いと思ったが、ほんの三分程度だったな。ほう、中々良さげなスタート画面じゃないか。

 だが中身は……。


 VRゴーグルを被り『スタート』と唱える。

 当然期待感はそこまで籠っておらず、軽い気持ちで言った言葉。

 どうせ、サイトやタイトルだけの釣りなんだろ。


 ――だが。


 スタートと唱えると、ゴーグルから脳に特別な信号が送られる。すると睡眠と同じ効果が発生し、まるで夢の中にいるかのようにゲームの世界に降り立つ。


 まず現れる『フリーダムオンライン』と安っぽく表示されたタイトル画面。だがその安さには似つかわしくない、現実以上に綺麗な周りのグラフィック。

 まさか? そう期待せざるを得えず、堪らず目の前に浮かび上がった操作画面を押す。

 そして現れた、キャラクタークリエイト画面。この画面と目の前に形成された立体的なものを見たとき、百人に聞いたら百人から同じ回答が取れるだろう。


 神ゲー。


 これが自由か。これこそが自由なのか。その画面を見たら、思わず笑いが止まらなくなるだろう。

 何故なら、まず決めるよう指示された体格。一つ目の体格に自動的に合わさっており、目の前に形成された体がゆっくりと回っている。

 だが一切の荒さがなく、触ってみたくなる様な、ゲームとは思えない肌の美しさ。

 画面上部には、各パーツのアイコンが表示されている。

 そのどれを押しても、選択リストに表示される二十種類のボタン――と、下に表示された1/500という表記と矢印。

 しかもご丁寧に、形の手直しボタンまである。


 つまり一つのパーツだけでも一万種類から選択でき、さらに手直しすればその可能性は無限大。

 他のプレイヤーとキャラが被るなど、到底起こらないだろう。


 だがもしかしたら、もしかするとここだけ期待させて中身が駄目なのでは? 逆にここまで来ると、怪しいと思ってしまうのが人間。

 ダウンロードし直せば、キャラクリはやり直せる。

 デフォルトとは思えないキャラのまま名前を決め。冒険を始めると自分の見た目はそのキャラに変わり。そして白い光に包まれて目を開けたとき、もう一度思うことであろう。


 ――神ゲーだ。


 街広場がリスポーン地点になっているのか、その中央から始まり。目の前に広がるその光景は、思わず溜め息が出るほど綺麗でリアルだ。

 NPCはまるで生きているかのように会話や商売をし、その容姿や声、動きに一切の手抜きが感じられない。


 ピロンッ。


 すると目の前に表示されるシステム画面。


『ようこそ。チュートリアルを始めます』



 ▼ △ ▼ △ ▼


 2056年の元日から三日目が過ぎるころ、その日はフリーダムオンライン五周年イベントの最終日でもあった。

 五年前に突如として現れたこのゲームは、初めこそ釣りだのなんだの言われたがそれはもう昔の話。今では全世界で一番の人気ゲームだ。


 一番の注目はやはり、自由度の高さであろう。

 自由度の高さに関しては、本当に何でも出来る。あんなことからこんなことまで。だが調子に乗りすぎると指名手配になり、警備兵に捕まって牢屋行きだが。

 このゲームをきっかけに、リアル結婚した人も多いという。


 ただ、このゲーム唯一と言っても過言ではない自由でないところ。それは魔法が一切使えないことだ。

 これについては不満を述べる者もいるが、よく考えてみれば簡単に理由が考察できる。

 先ほども言ったが、自由度が高すぎて本当に何でもできるからだ。


 考えてみよう。例えばレベルが上がってスキルを覚え、仮に広範囲魔法を習得したとする。それを街中でぶっ放してみよう。街の被害は計り知れない。そして、どれだけのプレイヤーやNPCが死ぬだろうか。

 街の外であったとしても、その衝撃などで地面がえぐれる。森に火が付けば火事が平気で起こるなどなど。

 まぁ、ある程度したら流石はゲーム。元通りになるのだが、それまでが不便すぎる。

 因みに火は魔法でなくても起こせるため実際火事になったことや、魔物を燻し出すためにしたことがしばしば……。

 そのような理由から、魔法は使えないのだとプレイヤーに認知されている。


 さて、そんなフリーダムオンラインも今日で五周年のイベントが終わる数分前。一人のプレイヤーが魔物の群れを相手に、無駄が一切ない動きで剣を振り回していた。


 燃えるような赤い髪。瞳は対象的に青く、すらっとしたほど良い肉付きの体に、整った顔立ちをしている。剣を振るたびに長い髪が躍動し、その戦う姿を見れば女性でも惚れてしまうかもしれない。

 だが安心してほしい。何とこのプレイヤー、男なのだ。

 キャラクリの自由度も高く、調整すれば性別は変えられなくても見た目は変えられる。しかもボイス設定まであり、それらを上手い事合成し、出来たのがこの姿。

 性別は男なので、下はちゃんと付いている。


 装備は速さを求めてか、極限まで軽装。手に持った剣以外の武器は見られず、防具も大したものを着ていないように見える。

 だがこの装備は全て、高級素材を使った特注品。彼曰く、相手を油断させるため一見地味に見えるが、その効果はゲーム内でもトップクラス……らしい。

 効率を求めてスキルを一切使わず、魔物をばったばったと切り倒すさまは、まるで何処かの主人公のようである。


 そして遂に、イベントの終了を告げる鐘が鳴った。

 剣を納め離脱すると、今まで非表示にさせていた画面をつける。

 そこには――。


『おつ』

『お疲れ』

『まじで三日間ぶっ通しかよw』

『これで一位じゃなかったらやばいだろ』


 コメントが凄まじい勢いで流れていた。

 なんと彼、大手生主の一人である。このゲームも初期からやっており、そのガチっぷりから人気に火が付いた。仕事はしてないのかと疑問になるほどログインしているのだが、そこは広告収入などで充分普通の生活を送れている。言わばゲームをするのが仕事だ。

 今回のイベントも、数分の飯落ちとトイレ以外はずっとログインしっぱなし。最大効率を出せる本人が見つけた秘密の狩場で、永遠と魔物を狩っていたのだ。


「あ~久しぶりに長時間ログインしたから疲れたわ。皆お疲れ」


 女としか思えない、綺麗な声が口から発せられる。

 実はこのボイス合成の技術はかなり難しい。ボイスも一万種類あるが、性別が男なら男の声しかなく、どうしても女の声に寄せにくいのだ。

 そのため、一部の人はボイス合成のレシピを高値で買うこともあるのだとか。


『来るぞ来るぞ』

『一位こい』

『賞品何だろうな』


 この五周年イベントの一位賞品は発表されていない。例年であれば、望む装備や家具などが貰える。

 今までは発表していただけに、今年の期待感はかなり高かった。


 ピロンッ。


 メニュー画面に表示されるトロフィーマーク。ポイントの集計が終わり、ランキングが確定したのだ。

 タップすると名前とポイントが表示され、一位には。


ψ__________

1位 フレイ 471,056pt

――――――――――ψ


『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!』

『おめええええええ!』

『おおおおおおおおおお』

『88888』

『賞品はよ』


 彼の名前であるフレイが堂々と表示されていた。

 だがフレイは慌てない。何故なら一位は取れて当然。毎年のイベントでも常に一位を取って来たのだと。


「ありがとう!」


 だがやはり内心嬉しいらしく、笑顔でそう返す。

 その屈託のない笑顔は視聴者の心を鷲掴みしてしまったようで。


『惚れたわ』

『結婚しよ』

『お前らフレイちゃんは男だぞ』

『ホモ湧きすぎぃ!!』


 フレイについての様々なコメントが書かれていく。

 本人はいつもの事だと特に気にした様子もなく、賞品が届くメールボックスで待機している。すると。


 ピロンッ。


 運営からのメッセージが届いた。

 すかさずメールを開くと。


『一位おめでとう! 今回の賞品は後日お渡しするため、今日はゆっくり休んでください』


 そう短く書かれていた。

 これにはフレイも不満らしく、苦い顔をする。


『まじかよ』

『運営仕事しろ』

『orz』


 視聴者も同じ気持ちの様で、残念だといった内容のコメントが次々流れていく。

 フレイは深いため息を吐いた後。


「今日はもう放送終わりますね。後日届いたらアップします」

『了解』

『おk』

『ゆっくり休んでね』


 そう言って、生放送の終了ボタンを押した。


 ピロンッ


 すると再びメールボックスに運営からのメールが。

 何故またメールが? そんな疑問で首を傾げつつ、メールを押すフレイ。


『賞品の準備が出来ました。賞品を受け取りますか?』


 先ほどは後日お渡しと書かれていたのに、突然の賞品を受け取るかの確認メール。


「生放送だと見せられないものなのか?」


 考えられるとしたらそれしかないだろう。生放送を閉じた瞬間にこのメールが届くなど、タイミングがあまりにも良すぎる。

 フレイがYESボタンを押すと、賞品が表示された。その賞品の名は……。


ψ__________

 身分証明書


名前:フレイ 種族:人族

__________ψ


「身分証明書?」


 身分証明書だった。そこに書かれているのは、ステータス画面をもの凄く簡潔にしたようなもの。カードの様になっており、綺麗な装飾が施されている。

 何故こんなものが一位の賞品なのか。フレイがそう思った次の瞬間。その身分証明書から強い光が発せられる。そのあまりの眩しさに思わず目を閉じる。


 どれ程の時間が経っただろうか。

 次に目を開けたとき、そこは先ほどまでとは別の景色だった。

 崖の上に立ち、手前には木々生い茂り。その暫く先からは平野になっており、城壁で囲まれた街のようなものが見て取れる。


 だがフレイは、ゲームの中でこのような景色は一度も見たことが無かった。

 メニュー画面を開くと、ステータスとバッグ以外すべてない。

 さらにはバッグの中には身分証明書だけがあり、イベント時に持っていた回復アイテムなども無くなっている。

 幸いと言うべきか、剣や防具など身に着けていた装備はしっかりとある。


 ピロンッ。


 状況が把握できずにいると、目の前にシステム画面が浮かび上がる。


『ようこそ。チュートリアルを始めます』

「チュートリアル?」


 そんな疑問に答えてくれるわけでもなく、ただ与えられた仕事をこなすかのようにシステム音声が流れだす。


『ここは私達運営が現在開発中の世界です。その試運転を試みるため、今回の五周年記念イベントで一位を獲得しましたフレイ様にテスターとなっていただきます。この空間にいる間は現実世界の時間が一切進みません。そのため、現実の心配は何もしなくて大丈夫です。予定としては三年間過ごしてもらいます。一つ気を付けてほしい事は、ここはゲームの様に破壊したものはいくら経っても元に戻りません。もう一つの現実世界とでも思ってください。テスターになりますか?』


 選択画面が表示される。

 フレイは躊躇することなく、YESのボタンを押す。


『もしテスターを止めたい場合、死んでもらえると現実世界に戻ります。敵に殺された場合なども現実世界に戻るので、楽しみたいのであればご注意ください。死ぬ判定はHPがゼロになった時。痛みなどは特別にゲーム内と同じ感覚のため、大した痛みは発生しません。フレイ様の強さで気ままに楽しむのであれば、冒険者になることをお勧めします。それでは、良い旅を』


 その言葉を最後に、フレイの前からシステム画面が消える。

 メニュー画面の右上には残り時間であろうか。時間にして三年分が一秒ずつ減っていく。


「テスターか……」


 フレイの中には様々な感情が渦巻いていた。開発中の世界とはゲームのことなのか。現実世界とは隔離された空間をどのように作ったのか。運営はいったい何者なのか。

 だが、一つだけ決めたことがある。


「楽しんでやろうじゃないか!」


 そう。この世界をとことん楽しむ事。現実世界で時間が進まないのであれば、三年間遊び放題のようなもの。もし運営の言葉が嘘で、現実でお腹がすきすぎたなどあれば、警報で自動的に目が覚めるだろう。

 まだ何も開拓されていないこの世界を、フリーダムオンラインの運営が作った世界を、自分が一番初めに遊ぶ事ができる。こんなにも嬉しかったことは今までに一度もないかもしれない。

 だが引っかかるのは運営が言った『もう一つの現実世界』という言葉。つまりここは異世界のような場所なのだろうか。


「考えていていも仕方がないか」


 もう一度崖から辺りの景色を見渡す。

 風が吹き、日光の暖かさを感じる。ゲームでも流石に、ここまでの再現はできなかったはずだ。

 ――ここは本当に異世界かもしれないな。

 一先ずはあそこに見える街を目指すことにし、フレイは崖の下に降りる方法を探すことにした。



 ▼ △ ▼ △ ▼


 ――ヴィルボン城壁前。

 時間帯が昼ということもあり、人の入りはほとんどない。

 いつ魔物などの敵が襲って来てもいいように、しっかり防具を着込んだ警備兵の二人は退屈していた。


「誰も来ませんね」

「そうだな」

「向こうはまだ馬車が来るから、働いている感がでていますね」

「そうだな」


 兵士が向こうと言った方を見てみると、この時間帯であっても多少の入りがある馬車を担当する警備兵がいた。

 今も街の中に入る馬車の積み荷や、御者の身分を確認している。

 二人が現在担当しているのは、冒険者や旅人などの馬車を引いていない人だ。朝や夕は忙しいのだが、この時間帯はあまり来ない。今日の昼は特に少ないようで、何と一人も来ていない。

 なら馬車の手伝いをすればいいと思うが、今はそちらに多く割り当てられているので、手伝う必要がないのだ。


「これで働いてないとか言われたら泣きますよ」

「そうだな」

「そうだなしか言えないんですか?」

「そうだな」

「ん? あれは」

「そうだな」


 どうでもいい会話をしながら平野をボーッと眺めていた兵士は、赤い何かがこちらに近づいてくるのを視認する。

 次第にそれは大きくなり、赤い髪をした人であることが分かった。


「やっと来ましたね。ちゃんと対応してくださいよ」

「そう……」


 先から同じ言葉しか発しないパートナーに注意を促し、また同じ返答が来ると思っていた兵士。けれどそれを言い切ることはなく、パートナーはある一点を見つめたまま固まってしまった。

 視線の先は確か、赤い髪の人が……。


 ――その全貌を見て思わず息を呑んだ。


 先ほどよりも姿がはっきり視認できる距離まで近づいており、その顔を見るとあまりにも美しかった。

 まだ多少の距離があるというのに、引き付けられるような美貌。装備が地味なこともあってか、顔の美しさがより際立っている。

 眺めている間にも女性はこちらに近づいてきて、口を開く。


「すいません。街の中に入るには、どうしたらいいですか?」


 その声はあまりにも美しく透き通っており、しっかりと聞いていたはずなのに耳に残らないほどであった。今まで聞いてきたどの言葉よりも、楽器の音色よりも美しい。


 一方声を掛けた男性のフレイは二人の反応を見て、もしかして何かまずかったかと心配になっていた。


「身分を証明できるものはお持ちですか?」


 そうだな兵士じゃない方は、何とかその言葉を絞りだす。

 それを聞いて、先ほど胸の内ポケットにしまっておいた身分証明書を取り出して渡すフレイ。

 メニュー画面が認知されていなかった場合、怪しまれると思って移しておいたのだ。ゲームであれば心配しないが、念のためである。

 ほんのり温かさが残る身分証明書を確認した兵士は、問題ない事を確認してそれを返す。


「街に来た目的は?」

「田舎から出てきまして、冒険者になろうと思って来ました。冒険者になるにはどこに行けばいいですか?」


 小首を傾げるフレイの姿を見た兵士は、一瞬我を忘れそうになったが何とか踏みとどまる。


「冒険者になるのですか?」

「何か変ですかね?」

「い、いえ。それでしたら冒険者ギルドに行く必要があります。この門を入って真っ直ぐ行けば、左手に剣と盾が大きく飾られた建物がありますので。そこが冒険者ギルドになっております」

「分かりました。もう入っても大丈夫ですか?」

「はい。ようこそヴィルボンへ」


 フレイは中に入ると、まずは兵士が言った特徴ある建物を探すために歩き出す。

 因みにだが、そうだな兵士はずっと固まったままであった。



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