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短編『失われた過去の記憶』

 注意事項

・全てタイトルとあらすじ通り

・描写力を上げるために奮闘中

・ガバガバ人称

・どんな話の展開になるかは気分次第

・最終目標は満足できる連載小説を書く

 森の中に設けられた山道を駆ける一台の馬車。

 馬車の持ち主である御者と、荷台に乗り込む仲間の男達は、今回の成果について喜んでいた。


「今日でやっと街に着きますね」

「そうだな。結果としては賭けに勝ったな」


 下卑た笑いをしながら、足元にいる成果を眺める。

 荷台には男達以外にも数人いた。だがその全員が子供で、手足は動かないように拘束されている。

 そう、人攫いだ。


 この人攫いは計画的に行われたが、仲間内で実行するか否か多少の論争があった。

 一番問題となったのは、攫う予定地までの距離だ。

 遠ければ食費が嵩み、もし成果が得られなければ、その分まるまる損してしまう。例え攫えたとしても、維持費や魔物に襲われる危険も高かった。

 そのため、参加する者が費用を負担する代わりに、利益のほとんどを持っていけることとなったのだ。


 そして、男達は賭けに勝った。

 足元にいる少年少女達の容姿は文句なしの上玉。維持費が余計に嵩むとしても、これなら一人売るだけでも充分元は取れるだろう。


「しかし、これほど上玉が揃うとは思わなかったな」

「そうだよな」

「だから言ったじゃないですか、今回は遠出してでも攫いに行く価値がある村を見つけたって」


 今回の人攫いを計画した男が自慢げにそう言う。

 仲間が待っている街までは、後半日もすれば着くだろう。魔物には襲われず、他の商人や冒険者にもばれることもなく順調に進んでいる。

 このままいけば……。


 ウォーン!


 だが、最後まで順調にはいかなかった。

 もうすぐ森を抜けようかという所で、突然馬車の後方から遠吠えが響き渡る。


「魔物か?」

「多分な。このまま行けると思ったが、付いてないな」


 御者の男は馬車の速度を落とし、魔物が来たときに交戦できるようにする。

 荷台に乗った男達も周りを警戒しつつ、腰の剣に手を掛けた。


「魔物の素材が取れると思えばいいでしょ。パパッと倒してさっさと街に行こうぜ」


 ヘラヘラした男がそう言ったが、魔物を目視で確認した次の瞬間。


「駄目だ! 馬車を走らせろ!」


 一人の男が咄嗟にそう叫んだ。

 その言葉と共に、馬車の速度が上がる。


「魔物の種類か数がやべぇのか?」


 唯一状況確認が出来ていない御者の男が聞く。


「あぁ、種類も数もやばい。フォレストウルフが目視できるだけで六体と、亜種が一体いやがる」

「亜種だと!?」


 一般的なフォレストウルフの毛は緑色だが、一体だけ真っ赤に染まったやつがいた。

 亜種は同じ種類の魔物に比べて何倍も強い。しかも亜種を除いたとしても、フォレストウルフだけで厄介者だと言われている。

 基本的に群れで行動し、森の中とは思えないような速度で連携を取る。慣れていなければ忽ち囲まれてしまうだろう。

 だが群れといってもせいぜい四体前後。その程度であれば男達でも処理できた。


 けれど今回は違う。リーダーである亜種が指示を出し、ただでさえ連携がうまいフォレストウルフが六体。いや、見えていないだけで他にもいる可能性がある。

 このままでは確実に追いつかれ、足である馬がつぶされて囲まれることになるだろう。

 そうなれば勿論、男達の強さでは勝ち目がない。


「囮にするしかないか……」


 即座に状況を整理した御者の男はそう呟く。

 折角攫ってきた上玉だが、自分達が死んでは意味がない。取り分が減っても利益は問題なく出るだろう。


「おいお前ら! 適当な子供を囮にしろ! 後は残っている食料もぶちまけろ!」

「食料はまだしも、子供もですか!?」

「子供もだ! 死にたくなければ急げ!」


 フォレストウルフの狙いは食料――つまり人間も含まれる。

 量に満足すればいいが、少ないと感じれば数体追ってくる可能性が充分ある。

 幸いもうすぐ森を抜けるが、亜種が追って来ればまだ子供を囮にすることになるだろう。


「くそっ! 取り敢えず食料は捨てたが、まだ亜種と他二体が追って来やがる」

「どいつを囮にする?」


 子供は少年二人と少女四人。

 全員上玉だが、売り値は基本的に少女の方が高い。けれど、少年でも人によってはかなり高く買い取ってくれる。


「男が妥当だろうよ。異論はないな?」


 その言葉に全員が頷く。

 そして、一番外側に近い少年に男達の視線が向いた。


「嫌だ……」


 先ほどまでの会話を聞いていて、今から囮にされると察したのだろう。

 黒髪黒目の華奢な少年は震えながら、涙を浮かべてそう訴える。


「すまねぇな。俺らだって、お前を売るまで手放したくなかったよ!」


 手足を拘束され、身動きが取れない少年を男は持ち上げると、外に放り投げた。

 受け身を取ることは当然出来るはずもなく、頭から地面に打ち付けられた少年。


 強い衝撃が走り、痛みにうめき声をあげる。

 もうフォレストウルフは目前まで迫っていた。


 ――死ぬのかな。


 逃げることすらできず、ついにフォレストウルフの亜種が――


「大丈夫?」


 いつの間にか少年の前には女性が立っていた。手に持つ細い剣は亜種の頭に突き刺さり、即死だった。

 自分達より格上の相手だと悟った残りのフォレストウルフは、逃げる様にして来た道を戻っていく。

 それを確認した女性は一息つくと、少年の方を向いた。


「酷い汚れと怪我。それにこの拘束具……」


 サラサラの薄緑の長髪をなびかせ、その隙間から尖った長い耳を出した細身の女性は、少年の様子を見てそう言った。


 助かったんだ……。


 攫われて数日馬車で不自由に過ごし、囮として使われた疲れ。助かったという安心感。その二つが重なり、少年は眠りについた。


「あら、寝ちゃったか。悪い子には見えないし、多分あの馬車が囮として使ったのかな。可哀想に」


 少年の寝息を聞いてホッとした女性は、拘束具に手を当て魔力を流す。

 するとあれだけ頑丈そうに見えたのに、いとも簡単に壊れてしまった。


「ここじゃまた魔物が来るかもしれないし……そうだ。あそこに連れて行ってあげよう。その前に軽く処置しないとね」


 少年の体に手を当てるとその場所が淡く光り、体全体の浅い傷が消えていった。

 血は特に流れていないが、頭にも念のため処置を施す。

 女性は少年を慎重にお姫様抱っこし、森の中を駆ける。その速さと安定感は、フォレストウルフ顔負けだ。


 暫くすると、森の中にポツンと出来た大きな水たまりに着いた。水に汚れはなく、底まで覗けるほど透き通っている。


「確かこの辺に……あったあった」


 女性が水たまり近くの何もないように見える場所に手を伸ばすと、突如として空間が歪み、小さな丸太小屋が出現した。

 ドアを開けると中には机や椅子、ベッドなど最低限の家具や道具が揃っている。


 少年をベッドに寝かせた女性は桶を手に取り、水たまりから水をすくってくる。

 その桶の水に綺麗で真っ白なタオルを浸した。


「失礼するわよ」


 寝ている少年に一声掛け、丁寧に衣類を脱がしていく。全ての衣類を脱がされた少年の体の所々には、馬車から落ちたときやその前に出来たとみられる傷があった。


 そこに女性が手を当てると先ほど同様淡く光り、みるみる内に傷が消える。

 全ての傷が消えたことを確認した後、少年の汚れた体を絞ったタオルで優しく拭いていく。


「んゅ……ここは?」


 すると、自分の体に違和感を覚えたのか、少年が目を覚ます。

 体を起こし、ゆっくりと重い瞼を持ち上げると女性と目が合った。


「起きたみたいね。今は体を拭いているからちょっと待って」

「え? 体を拭いている?」


 タオルから直接伝わるひんやりとした冷たさ。少年は今の自分がどういう状況なのかを確認するため、視線を下した。

 そして何も着ておらず、全てをさらけ出していることに気が付き、顔を一気に真っ赤にさせる。


「あっあの……」

「ん? どうしたの?」

「俺の下着や服がないのですが、その……」

「体の傷を治すためにちゃんと見たかったからね。全部脱がしちゃった」


 ハッとした少年は腕や体などを見て、傷一つ付いていないことに気付いたようだ。

 けれどその間も女性はタオルで拭いており、ついに下半身に――


「あの! もう自分で出来るので!」


 少年はタオルをひったくり、女性に背を向けた。


「あ~もしかして恥ずかしがっているのかな? ふふふっ可愛いね」

「女性に裸を見られたら、恥ずかしいですよ」

「女性って歳じゃないけどね。詳細な歳は言わないけど、これでも百歳を超えているわよ」

「え?」


 予想以上に歳があるのに驚いたのか、少年は顔だけ女性の方に振り返る。

 そして顔のある一点で目が止まり、その事実に少し目を見開いた。


「もしかして、エルフですか?」

「そうよ」


 女性は肯定しながら耳をぴくぴくと動かす。


 少年が見たのは、長くて尖がった耳だった。この世界には様々な種族がいるが、その中でもこの特徴的な耳があるのは、エルフしかいないと当たりをつけたのだろう。


「でもエルフって人前にでないんじゃ……」

「普通は出ないけどね。だからって私は君を放っておける性格でもないから。そう言えば自己紹介がまだよね。私はフィエナよ。貴方の名前は?」

「俺は……。あれ? 俺って誰だっけ?」


 名前を答えようとしたのに出てこない。少年は頭を抱えて何とか思い出そうとするが、だが何も出てこない。馬車から落ちて、フィエナに助けられた事だけは鮮明に覚えていた。


 ――何で思い出せないんだ?


 少年は次第に焦り始め、頭の中でパニックになりかけたその時。


「落ち着いて」


 少年を後ろからフィエナが優しく抱きしめる。そして、一定のリズムで軽く少年の胸を軽く叩く。


「ゆっくり深呼吸をして」


 少年は何とか落ち着きを取り戻したのか、大きく息を吸い、ゆっくりと息を吐いた。

 それからもフィエナは何も言わず、ただ優しく抱きしめる。


「フィエナ、ありがとう。もう落ち着いたから」

「そう」


 フィエナはゆっくりと腕を解く。

 少年はもう一度深呼吸をし、口を開いた。


「俺って、誰なの?」


 その声は震えていた。

 落ち着いて考えても、結局何も思い出せない。自分が一体誰なのか、何でこんな森の中にいるのか。


「ごめんなさい。私には分からないわ」


 申し訳なさそうにフィエナはそう言う。

 そこからは無言続き、少年は体を拭き終わると。


「衣類、取って」

「はい」


 机の上に綺麗に畳んであった、しかし所々穴が開いてボロボロな衣類を少年に渡す。

 座ったまま器用に着替えた少年は、フィエナに向き直る。


「俺、どうしたらいいのかな……」


 フィエナを見つめる少年。

 今この少年が助けを求められるのは、縋りつけるのはフィエナしかいない。

 このまま置いていくこともできるが、フィエナにはその考えが一切浮かんでいなかった。


「私の――エルフの里に来る?」


 どもども(`・ω・´)


 この連載小説は短編小説の詰め合わせとなります。

 話の終わりが完結していなくても、その物語は終わりとなりますのでご理解ください。


 作者である私は、描写力を上げる為に奮闘しております。

 初めは読みにくいかと思われますが、その内上達する……と思うので、温かい目で見守っていてください。


 主に異世界の短編小説を書いていきます。

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