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01.入学式

今日は私、宮井卯月みやいうづきが入学する

緑学園高等学校の入学式。

式典は堅苦しいから苦手だけど、

どんな人たちがいるのか、今から楽しみです。


静粛せいしゅくに。

これより、第62回緑学園高等学校の

入学式を執り行います。」


進行役の先生の言葉と共に式は始まった。



開始から1時間。

この1時間のうちで何回立ったり

座ったりしただろうか。


「疲れたな・・・。」


そんな風に思ったその時。


「在校生代表挨拶、野崎駆のざきかける。」


「はい。」


「キャー!!」


会場中の女子が騒ぎ始めた。

寝かかっていた私は、なにがなんだかわからず

顔をあげて壇上を見てみると、

とてもカッコイイ男の子の姿。

身長は軽く180cmはあるだろう。

容姿端麗な彼はそこにいるだけで場が華やぐ。


彼はこの学園の生徒会長で

この学園の校長、野崎悠二のざきゆうじの息子。


そういう風に、さっき誰かが言っていた。


「お静かに願います。」


進行役の先生の注意が入り、

会場が静けさを取り戻したと同時に

野崎生徒会長が喋り出した。


「新入生の皆さん、

この度はご入学おめでとうございます。

これから皆さんはこの学園で色々な体験をし、

色々な思い出を作っていくことでしょう。

一生涯の友情が生まれるかもしれないし

好きな人が出来るかもしれない。

或いは恩師と仰げる人に出会えるかもしれません。

自分の話になってしまいますが私の場合は、

皆でひとつのものに向かって努力することの

素晴らしさをこの学園で知りました。

大切な友人にも、この緑学園の生活の中で

沢山巡り会うことができました。

部活動や、文化祭などの行事、

そして日常生活の中に新しい出会いがあり、

一人ひとりの活躍の場があるのです。

今、3年間のスタートラインに立つ皆さんには、

沢山の可能性が待っています。

皆さんにしかない、特別な自分らしさというものに

出会ってください。

そしてこの緑学園に受け継がれる様々なよいところを

見つけていってください。

私達在校生は皆さんの見本となれるよう

日々努力しています。

ですから、何か困ったことがあれば、

いつでも私達上級生を頼ってください。

そしてこの伝統を未来の後輩に受け継いでください。

3年間は長いようであっという間です。

一生に一度しかない青春を、

この緑学園で存分に楽しんでください。


以上、在校生代表 野崎駆。」


挨拶が終わり、野崎生徒会長が

一礼すると会場中に大きな拍手があがった。

そしてそれと同じくらい、

女の子たちの歓声もあがった。


彼も大変だな。

そうしみじみ思う卯月であった。



それから1時間程で式も終わり、

皆ぞろぞろと会場を出はじめたので

私も前にいる人について会場をでようとした時、

後ろにいた人に声をかけられた。


「あのぉ・・・」


肩を叩かれ振り向くと、いかにもギャル!な子が

私に話しかけていた。

ギャルに免疫がない私は少し驚きながらも


「はい・・・?」


と返事をすると彼女に


「今日、一緒に行動しませんかぁ?」


と言われた。

ギャルに免疫のない私。

彼女と1日過ごせる自信が無い。


「えーっと・・・なんで私?」


私がそう聞くと彼女は

少し困ったような顔でこう言った。


「私こんな身なりなんですけどぉ、

同じような派手な格好をした人が苦手でぇ

・・・私みたいな人を受け入れてくれる人がぁ

中々いなくてぇ、でも貴方はなんかぁ

ちょっと違うような気がしてぇ・・・

・・・ごめんなさい・・・。」


理由がイマイチ理解出来ないけど、

確かに受け入れ難い身なりをしているし、

なんなら校則の厳しいこの学校で

よくその格好が許されるな・・・っていう

感じだけれど別に私もひとりだし

断る理由も特にないし、

話を聞いている分では悪い子ではなさそうなので

私は1日一緒にいることを許可した。


「なるほど・・・。

まぁいいですよ、私は宮井卯月です。

よろしくね!」


私が挨拶すると彼女も、


「マジ!?ありがと〜!

私は桜葉さくらばゆりです、

よろしくねぇ!」


と無邪気な笑顔で返してくれた。





入学式を終えたあとは

在校生を交えての始業式があるので

一旦指定された場所で待機。



「桜葉さん」


私が彼女の名を呼ぶと

彼女はこちらを向いてこう言った。


「ゆりでいいよ〜!うづき♪」


「そう?じゃあゆりって呼ぶね。

ゆりはどうしてそんな格好してるの?」


「んー?趣味かなぁ(笑)」


趣味・・・。なるほど人の趣味に

口は出したくないけど

ゆりにはもっと他にいい格好が

あるはずではないか、と思ってしまう。

だってメイク外してきっちりした格好したら

それなりに美人だと思う。


「そっか!(笑)」


私がそう言うと話が途切れて沈黙が流れる。


「ねっ!うづき!!!」


数秒の沈黙を破った彼女は、私にこう言った。


「卯月はさぁ、誰かに憧れたことある?」


と。

私は理解出来ず「え?」と問うと彼女は、


「あー・・・ううん、

なんでもない、忘れて(笑)」


そう笑顔で言った。


シリアス顔であんなことを

聞いておきながら、笑顔で忘れて。

って・・・忘れられるわけがない・・・。

でも私は、「わかった。」と笑顔で返した。


よくわからないけど私はこの時、

不思議な子。と思うと同時に、

この子・・・ゆりのことを

もっとよく知りたい。と思った。



そして私たちはその後、

始業式がはじまるまでの間

他愛ない話で盛り上がった。



この時の私には、

桜葉ゆりと野崎駆という

この2人の存在が、今後私の人生に

大きく関わるとは知らずに、

私のこの学園での生活が幕を開けた。

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