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フェアリー・クインテット  作者: 芝森 蛍
疾風を欺く狂詩曲(ラプソディー)
7/138

後奏曲

 月の光が冴え渡る真夜中の校庭に。一人の妖精が鼻唄と共に軽やかな足取りを空中に描く。


「~~~♪ ~~~♪」


 旋律は三拍子。円舞曲(ワルツ)の調べに従って右へ左へとゆらりくらりと舞い踊る。

 降り注ぐ白銀の月光に身を曝け出し、自然の光に照らされた天然の舞台でその妖精は静謐(せいひつ)に踊り狂う。

 羽ばたく度に四枚の翅からは七色の残滓が煌いて辺りを僅かに明るく照らす。

 その妖精。闇の中でも一際映える漆黒のショートヘアに、暗闇で妖しく光る紅の瞳。月へと伸びた白く細い指は触れれば壊れてしまいそうなほど儚い線で彩られていた。

 御伽噺の中に登場する吸血鬼のような妖艶さ。はたまた心を惑わす夢魔のような危うさ。

 そんな目にした者全てを(とりこ)にしてしまうような存在感を纏い妖精は歩みを踏み続ける。

 やがてまあるい月が雲の奥に隠れ、辺りを影が覆い妖精の姿を闇の奥へと掻き消していく。

 そんな時、妖精は歩みを止め一つ立てた指で真上を指差し、口元を笑みの形に作り変える。

 途端、妖精の真上に大きな方陣が顕現し、妖精を上から押し潰すように通過していく。方陣が通過した先から、妖精のいた場所に人とほぼ同じ大きさの影が現れた。

 闇色の短い頭髪。闇夜に光る紅い瞳。背中には二対の翅を従えて。その影はゆっくりとした動作で地面へと降り立つ。

 影が水面に降り立つように優しく立つのと同時、隠れていた月が雲間から顔を出して大地を銀色の光で染め上げる。

 天然の照明に照らされて。

 浮かび上がった姿は四枚の翅を背中に背負った一人の少女だった。


「早く会いたいよ──クラウス」


 呟きは月が隠れ再び訪れる闇の影に奪われて。

 次に月が大地を見つめた時には、既にその少女の姿はどこにも見当たらなかったのだった。

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