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前奏曲
高い日差しを鬱陶しく仰ぎながら手で影を作って目の前に広がった景色を悠々と見渡す。
視界に映るのは幻想的な風景。多数の人々、多数の声、多数の──妖精。
背中に半透明な薄翅を二対拵えて顔の横には細く長い耳。手のひらサイズの人型の生物がそこら中を飛び交うこの光景はきっとどこまでも異質で、そして途方もなく絵になる。
風にたなびくのは色とりどりな髪と薄衣。飛んだ軌跡に光の残滓を置き去りにしてきらきらと輝くいくつもの命。
鼻先を掠めた形容のし難い独特な残り香に鼻に掛かった下縁の銀色の眼鏡を小さく押し上げる。
──面倒くさい
過ぎった感慨に胸の内で小さく溜息を吐いて気乗りのしないまま体の奥を小さく引き絞る。すると足元の草葉が柔らかくしな垂れて放射状に広がった。
異能の発露。その具現化。
自分を中心に波紋のように伸長した異能の波は辺りの異物とぶつかり反響する。
蝙蝠の超音波のように返って来た波形に乗っていたのは想像通りの──嫌悪。
幾つかの妖精がこちらを見ていることは気にせず、再び同じ行為を繰り返す。
二度目の反響。返って来たのは先ほどよりも嫌悪を強めた全方向からの拒絶の感情だった。同時に妖精たちが揃って距離を置く。
────だから嫌だったのに
悪態を吐いて見上げた空は先ほどより少しだけ影が差していた。




