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愛されないゴブリンの奮闘記  作者: あっぷる
ゴブリンの洞窟
5/5

『杭』

 目標は一話、1万字です。

 全然足りませんがこれから頑張ります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



数日たった…………と思う。いや、経ってないのかもしれないのかもしれない。



暗闇の中で過ごすというのは、なんと優雅…………なんてことはなくて。暇だったというのが正しい。



だって、何にもないし。その一言に尽きる。



時々、『食べ物』を持ってくる『ご主人様』は、色々ないじめをしてきた。『食べ物』を焼いたり、鎖の届かないところに『食べ物』を置いたりして結局自分で食べてしまったりとか。陰湿ないじめではあるのだけど…………。


ただ、その食べ物はとてつもなくゴブリンにふさわしいものであり、いいものではないと言えば、それはいろいろ変わってくる。



見た目は、カブトムシの幼虫。色は緑色。大きさはたぶん『ご主人様』の手の三倍ぐらいで、大きい。 それが『食べ物』の正体である。



はっきり言って、そんなものは食べたくない。人間としての感情がそんなものを食べたくないと叫んでいる。


それに、なぜかお腹がすいていても体に異常は見られない。反対に言えば、水や食べ物をとらなくても生きていけるようだけど、お腹はすいて辛いようだ。じゃなかったら、絶対死んでるし。ごはん抜きで生きていけるわけがない。



ただ、お腹はすくし…………カブトムシの幼虫モドキは最初につぶされた時に、いい匂いがしていた。


ゴブリンの本能は、このカブトムシの幼虫モドキはおいしいと感じるのだと思う。



『ご主人様』が、カブトムシの幼虫モドキを焼いた時に、実はちょっとだけ、指ですくって食べたのだけど、微妙だった。焼いてしまっていたからなのかもしれないけど。生のままがおいしいのかもしれないと思えるほど、カブトムシの幼虫モドキに希望を捨てきれないでいる。


…………なんか、人間でなくなっているような気がして、抵抗するように努力をするようにしているけれど。


そのうち、食べたくなって『ご主人様』に跪いてしまいそうなくらいに気になる食べ物になってきている。


だけど、私は負けない。

この洞窟から出たら絶対お腹いっぱい食べてやる。


そのために、私は計画を立てている。



私が洞窟から出られないのは、鎖が私の足に絡みついているから。なら、それをとってしまえば自由になれるということだ。うん、単純。



私の足に絡みついている鎖を触っているが暗いし、複雑に絡まっているようだから、多分とるのは無理だろうと思う。


ならば、鎖がつながっているほうをなんとかすればいいということだ。



鎖をつないでいるものは、地中に埋められた杭だ。杭をなんとか抜こうと思って、掘っているのが今の状況。



現在、杭を私の手四個分ぐらい掘ったけど、まだ先端は見えない。何の目的で私をこんなところにつないだのかわからないけど、絶対ここから抜け出してやるからな。


待ってろよ、外の世界! あのカブトムシの幼虫モドキ以外のものも、たくさん食べてやる。



さいわい、『ご主人様』は私が逃げ出そうとしていることに気が付いていない。『ご主人様』は、火で私を照らそうとせずに、『食べ物』だけ渡して、さっさと帰っていく。火で照らしても足元しか見えないほどの暗さで、よほど近くによらないと辺りが見えない。ほんと好都合で、『ご主人様』は馬鹿だと思う。


しかも『ご主人様』以外は来たことがない。


『ご主人様』が、私を照らさないお蔭で、私の体の後ろにある「杭撤去作業現場」が見られなくてすんでいる。今、他の人に来られたら、私の後ろの現場を見られるかもしれない。そして、私が逃げ出そうとしていることがばれたら、何をされるかわかったもんじゃない。


『ご主人様』は大嫌いだけど、ばれるリスクを考えたら現状維持が望ましい。逃げようとしていることは絶対ばれてはいけない。私もばれないように、『ご主人様』が来たら、土を戻している。照らしてもちょっとやそっとじゃ気が付かないだろうと思う。



ちょっとずつであるけど、杭が出てきつつある。掘りすぎて、指の平が痛くてしょうがない。我慢だ、我慢。







 転生してきてから、わかったことをまとめると、


1、私はゴブリンになった

 

これはそのままの意味で、『ご主人様』がゴブリンで、姿が私と似ていることから。ゴブリンで間違いないと思う。



2、私は転生したのではなく、乗り移った?


 これは、私が『目覚めた』時から、いきなり監禁されていたことからだ。そこにいきなり出現したものを、杭という物理的な方法で、拘束することはできないからだ。それに、始めてあの『ご主人様』の声を聞いた時から、何か聞いたことがあったような気がしていた。


つまり、私の今の体であるゴブリンは、私が『目覚める』前に監禁されて、何かの拍子に人間であった私の記憶がよみがえって、この体のゴブリンの記憶が飛んで行ってしまったのだろうと考えている。だから、人間であった時の記憶しかないけど、ふとした時にゴブリンの記憶を思い出すということなのかもしれない。


ただし、ゴブリンの記憶がよみがえるのは、聞いた覚えがあるといったような曖昧なものだけかもしれないけど。



3、私は嫌われている?


あの『ご主人様』しか来ないこともあるし、死ねよと言われたことから、死んで欲しいと思われるほど嫌われているのだろう。このゴブリンの体は、何かしてしまったのだろうか? でも、あの差別の仕方は、よくある「獣人を嫌う人間」みたいな反応に似ている気がする。


私が何かしたわけではなく、私にほかのゴブリンと違うところがあるのかもしれない。もちろん、この体であるゴブリンが悪いことをしたとも考えられるけど。



ここまでは考えられることなんだけど、あとは全くわからない。あの『ご主人様』が戯言ばっかり言って大切なことを言わないことがあるし、情報が少なすぎることもある。


他にもゴブリンはいるのか、どうやったら逃げられるのかとか。聞きたいことはたくさんあるのに、聞けないっていうね。ああ、面倒くさい。


早く逃げ出したいよ。




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