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愛されないゴブリンの奮闘記  作者: あっぷる
ゴブリンの洞窟
4/5

『彼』と『ご主人様』

「グギャアアアアアアああああああああ!!!!」


なんじゃあああああい!!!


ザッザッと足音っぽい音が、ゴブリンか新生物になって鋭くなった耳が異常を知らせてくる。



なんか来るううううううう!!!



「ギャギャギャ‼(うるさいんだよ‼)」



私が、体を丸めておびえていたのに。『ギャ』としか言えていないのに、なぜか言っている内容がわかるという超常現象が起きたせいで、恐ろしさはなくなった。


ついでに行ってしまえば、さっきの大声も、なんとなくだが、同類…………私と同じ種類の生物で、『うるさいんだよ』といった彼だと思う。…………男と女という概念があれば、『彼』という表現であっていると思う。



というか、どこかで聞いた覚えが……。


「いっつも俺が大声出しても何にも言わねえくせに、大声出しやがって。ママの夢でも見たか?」


壁にかけかけている明かり代わりの火に木を近づけて、火の勢いが増したかと思ったら、火が二つに分かれた。片方はその場所から動いていないが、もう片方の火は『彼』が持ってきているのか、人間らしくない緑の肌を隠そうとはしない裸で、ノッシノッシとやってきている。



チラチラと揺れる火で、顔が見えたり、見えなかったりするんだけど…………。『彼』を見ているうちに、げんなりしてきた。



一言で言ってしまえば、醜いの一言に尽きる。



まず、MIDORIって、ところ。もう、人間じゃない。しかも裸だから、なんていうか………もう。下半身のアレが見えるんだよ。性別が分かるものが。それで『彼』か、『彼女』かわかるんだけど。隠そうとしないその度胸。ある意味感心するね。まるで、『裸で何が悪いんだい?』という雰囲気の人たちが、町中裸で歩いているような気分。キャーとは、言いませんよ。慣れてるとかそうじゃなくて、ただ、そこにあるような感じ。騒ぐことではない。


他には。顔の形。異常にでかすぎるつり目とでかすぎる花。口は裂けていて、牙が飛び出している。


あと、体のバランス?頭が妙にでかくて、体が頭に比べて小さい。三頭身だよ。三頭身。


アレが、私の同類だよ。悲しいね。はっきり言って、もうゴブリンとしか言えないような体をしているね。新生物って、ごまかせなくなっちまったよ。コノヤロー。




「んだよ、お前のご主人様が、わざわざお前のためにご飯を用意してやったんだぞ。喜べよ。」


ギャギャギャ―ギャ。


『ギャ』しか言っていないのに、言っていることが分かってしまうというこの現象。まるで洋画をみて、外国語と日本語が同時に聞こえているような感じだ。


『ご主人様』と名乗る『彼』は、火を持つ手とは逆の手に『ご飯』を持ってきてくれたようだった。


「ごはん?」


「んだよ、やると思ってのか?ああ?」


「………………。」


「いいぜ、やるよ。しっかり味わえよ。」



『ご主人様』は、『ご飯』を落とすと足を踏み落とした。グチャッと、言いようのない音が静寂を生んだ。


「ほら、しっかり食べろよ、オラっ‼‼」


グチャグチャグチャグチッ。


地面にこすりつけるような音と、何とも言えないイイ匂いが、辺りを包んだ。



明らかにイジメられています、センセー。


グチャッとしている物が人間として食べられるものなのかわからないけど、食べ物を落とされた上に、食べられなくさせられましたー。最悪でーす。



「早く死ねよ。アハハハハハハハハハハ!!!!」



『ご主人様』は笑いながら、あっという間に走って行ってしまい、また一人、暗闇の中に残された。




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