第一話
首都星の空は、もう、信じられないくらいキラキラと輝いていた!
「わああっ! ママだ! ママきたよーっ!」
「パパ見て! ママの機体、すっごくかっこいい!」
右手にルカ、左手にトア。二人の天使が、観覧席でピョンピョンと跳ね回っている。
ああああ、なんて可愛いんだ、うちの子たちは!
そして空を舞うのは、純白の装甲を持つ魔導機将。あれに乗っているのは、銀河の歌姫にして、俺自慢の最愛の妻、マニャだ!
花びらが舞い散る中、美しくターンを決めるその姿に、観客席からは割れんばかりの歓声が上がっている。
「ママ、こっち見てーっ!」
子供たちのちぎれんばかりの声に応えるみたいに、マニャの機体が、空中でピタッと姿勢を止めた。
そして、巨大なカメラアイが、スッとこちらを向く。
「見て! ママがこっち見たよ!」
「本当だ、やったね! ママ、ずっと頑張ってたからね!」
完璧だ。俺の徹夜の魔力調整、大成功!
このオイルまみれで荒れた手も、子供たちのすべすべの手を守るためなら、勲章みたいなもんだ。
でも、ほんの一瞬。
機体のカメラアイが、自分たちの席じゃなくて、さらに上のVIP席――を向いたような気がした。
それに、マニャがカメラ越しに送ってきた微笑みが、なんだか……すごく遠くて、冷たいものに見えた、気がする。
「……いやいや、気のせい気のせい! 太陽の光が眩しかっただけ! 俺たちは銀河一幸せな家族なんだから、仄暗いことなんてあるわけない!」
ブンブンと首を振って、俺はまた天使たちと一緒に、空へ向かって全力で手を振った。
◇
パレードの熱狂から数時間後。
深夜の軍事格納庫はシーンと静まり返っているけれど、俺のテンションは高いままだった。
「よーし、今日も愛しのマニャの機体を、ピッカピカにしちゃうぞ!」
鼻歌交じりに、冷たい装甲にタッチする。
整備兵仲間には「裏方」なんて言われることもあるけれど、全然ノーダメージだ。
だって、愛する家族の命を守ってるのは、この俺の完璧な技術なんだから! まさに英雄を支える、影の英雄ってやつ?
「さーて、魔力伝導率の最終チェック、いってみよー!」
軽いリズムでコンソールを叩き、機体の深層システムにアクセスする。
戦術通信ログの階層を、ポンポンと小気味よく開いていく。
「んん?」
完璧に整備したはずの回路の奥底に、ポツンと、見慣れないノイズがあった。
設計時には存在しない、不自然な暗号化通信の痕跡。
軍の公式フォーマットでもない。なんだこれ?
「まあ、俺様の技術にかかれば、こんなロック、おもちゃみたいなもんだけどね!」
カタカタと、余裕の表情で解除コマンドを入力。
「はい、オープン! ……あれ、これ司令官のプライベート回線?」
エラーかな? それとも司令官からのサプライズ・メッセージ?
ワクワクしながら画面を覗き込み、モニターの光が映し出した『最初の数文字』を読み取った。
レオン:『マニャは、レオンがいないと寂しくて死んじゃう「寂しがりやさん」ぺんか?』
マニャ:『そうぺん! レオンにナデナデされないと、一日が始まらないぺん!』
――鼻歌が、止まった。
底抜けに明るかった格納庫の空気が、一瞬にして、絶対零度へと凍りついた。




