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第六章 反基地集会の裏側
蒼浜市役所前の広場には、予定を上回る人間が集まっていた。横断幕、プラカード、即席のスピーカー。玲奈は全体を見渡し、胸の奥で小さく計算を始める。――三百五十人。地元だけではあり得ない数だ。
バスで運ばれてきた参加者たちは、どこか観光客のような空気をまとっている。彼らは叫ぶが、街の名前を正確に発音できない。
玲奈は拡声器を受け取った。
「基地はこの街から未来を奪っている」
言葉は整っている。だがその瞬間、彼女の視線は人混みの端にいた警備員に吸い寄せられた。腕章の色。見覚えがある。母が倒れた日の会社だ。
胸が焼ける。怒りが、理屈を押し流す。
集会後、スタッフが近づく。
「動員、成功ですね。次はもう一段、強い映像を」
強い映像。その意味を、玲奈は理解してしまった自分を嫌悪した。




