表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分断の国(仮)  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/42

第三十二章 誤認

ノートを失った夜から、玲奈は眠れていない。夢に出てくるのは文字だ。名前、日付、金額。線になりきれなかった線。


 彼がどう処理したか。考え続けて、結論を急いだ。


 ――破棄された。


 そうでなければ辻褄が合わない。見逃した代償として、彼は自分の名が載った証拠を消す。合理的だ。だから、もう一度同じ手は使えない。


 玲奈は再構築を始めた。失ったのは紙だけだ。記憶は残っている。クラウドの断片、過去のメール、通話履歴。時間を並べ替える。


 蒼浜港の下請け、港運会社、協賛企業。行政の補助金がどこで薄まるか。数字は嘘をつかない。だが、数字だけでは人は動かない。


 必要なのは、顔だ。


 彼の顔。第三埠頭で会った男。名は知らない。だが、動線は分かる。工程を管理する人間は、必ず同じ時間に同じ場所を通る。


 玲奈は港の外れにある古い喫茶店に入った。港湾関係者が使う店だ。壁の掲示板に、求人とメモが混ざって貼られている。


 カウンター越しに、さりげなく聞く。


「最近、第三埠頭、静かですよね」


 マスターは肩をすくめた。


「静かな時は、だいたい誰かが片付けてる」


 答えになっていない答え。


 玲奈は誤った前提のまま、次の一手を考えた。証拠は消えた。だから、本人に近づくしかない。


 彼を告発するためではない。構造を抜くためだ。


 だが、その判断がズレていることに、彼女はまだ気づいていない。


 彼は、消していない。


 消したと思い込んだ瞬間から、玲奈の計画は、相手の掌の上に乗り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ