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ウォーカーエイルと第六騎士団  作者: 宅間晋作
悪徳企業潜入編
9/21

再会はデートのように甘い

 ウォーカー・エイルが拷問部屋を抜け出して一ヶ月が経った。

 ウォーカーの世間的な評価は拷問部屋から抜け出した脱走者の筈だが何故か抜け出した一週間後に新しい新聞にウォーカーエイルは遺体となって死んだという見出しの新聞を街の路地裏で拾い読んだ。


「……俺死んだ事になってんのか」


 ウォーカーは干し肉を頬張りながら街並みを歩く。

 逃亡者の身ではない事から別にいいが冒険者になる事も出来ず、裏の仕事をする訳にもいかず無職であった。


「いい仕事ないかなぁ」


 するとパン屋が見えて何故か中に入ってしまった。


「いらっしゃいませ!」


 元気な声が聞こえて来て見てみると一人の女性がいた。


「……えっ? マリナス?」


「……ウォーカー?」


 ウォーカーが見たのは黒エプロン姿をしたマリナスだった。

 一瞬世界が静止したかのような感覚に見舞われた。

 だがウォーカーはすぐにマリナスから背を向けて逃げ出した。


「ま、待って! 待ってよ! ウォーカー! わ、私ウォーカーと話があるの!」


「俺は別にねぇんだよ!」


 そう言いながウォーカーはパルクールで家のレンガの壁に足をかけて登り、屋根裏を走った。


「ね、猫じゃないんだから降りて来なさい! そ、それかあなたの秘密の屋敷で話会いましょう! お父さんに急に仕事が入ったって言っておくから! そこで待っていなさいよ!」


 マリナスにそう言われるとウォーカーも何故か強く出れず、渋々提案を呑んで待った。

 すると白いワンピース姿でマリナスが現れた。


「ほらあなたの屋敷に行きましょう?」


「……めっちゃ綺麗だな」


「ん? 何か言った?」


「別に何も?」


 そう言ってウォーカーは赤い穴を出してマリナスを中に入れ、食堂で紅茶とクッキーを食べながら話合う事にした。


「……一ヶ月ぶりねウォーカー。 心配したのよ?」


「そりゃあ悪かったな。 一応電話すりゃあ繋がるんだぜ?」


 そう言いながらウォーカーは端末を取り出して笑う。


「……も、もしかして端末を新しくしたの?」


「まぁな。 こんな事態になっちまったからな。 連絡先はお前だけのになっちまったよ」


「は、はぇ?」


 ウォーカーの発言に何故かマリナスが赤面しているが気にせず話を続けた。


「まぁ。 とりあえず単刀直入に言うがマリナス。 お前人魚の先祖帰りか?」


「ど……うしてそれを?」


 ウォーカーが疑問を口にするとマリナスの顔が真っ青になりながらウォーカーを見てくる。


「……これはエイザールから聞いた話でな。 あいつマリナスとシャティラ王女の命を狙っているんだとよ」


「……そ、それは本当なの? ほ、本当にエイザールさんが私の命を……そ、それよりエイザールさんは生きているの!?」


「……あぁ生きているよ」


 そう言いながらウォーカーが頷く。

 出来るだけ真剣さが伝わるように表情を固めてウォーカーはマリナスの顔を見た。


「……そう。 そうなの。 事情は分かったわ。 け、けれどウォーカー今あなたは何をしているの?」


「ん? 俺は適当に悪党懲らしめたりしながらお金を奪う毎日だぜ?」


「か、カツアゲじゃない!?」


 ウォーカーの発言にマリナスがツッコミを入れる。


「……ねぇウォーカー。 また第六騎士団で働かない? わ、私が団長だから話せばみんな分かるわよ?」


「……まぁ話はありがたいんだが俺は死んだ事になっているんだぜ? 無理だろ」


「で、でも! わ、私はウォーカーとまた仕事をしたいと思っているのよ!」


 そう言いながらマリナスはテーブルを叩いて立ち上がった。


「……俺の気質的に騎士様じゃねーんだよ。 こうやってフラフラ自由気ままにやっているのがいいんだよ」


「……じゃあもうウォーカーに会えないの?」


「……俺といたらお前は犯罪者と内通してる奴ってなるぜ? 嫌だろだろそんなの」


「わ、私は嫌だ! 私はあなたの事を認めているわ! あなたのいない一ヶ月どんだけあなたを探したと思っているの!? あなたは優秀でわ、私の仕事のあ、相棒にしたいぐらい気に入っているわ!」


「ぶっ!?」


 マリナスの啖呵にウォーカーは驚いて紅茶を吹き出した。


「おいおいちょ、ちょっと待て! 前言撤回過ぎんだろ!? お前、前にこんな犯罪者と仕事したくありませんみたいな事言ってたじゃねーか!!」


「き、気持ちが変わったのよ! に、人間なんだからこ、心が移り変わるぐらい容認しなさいよ!」


「それにしても急過ぎる!?」


 ウォーカーは突然のマリナスの発言に驚きながら頭を掻く。


「あーもー分かったよ! 第六騎士団に所属はしねぇが手伝いぐらいはしてやる! 俺への依頼って事でこの屋敷に会いに来ればいい! それでいいか!」


 ウォーカーはマリナスの説得を諦めて自身の条件を出した。


「えっ? いいの? ま、またウォーカーに会えるの?」


「お前に微精霊をつけといてやる。 そいつに話したらここに来れるようにしといてやる」


「ほ、本当に? ありがとう! ウォーカー! ま、また一緒に仕事が出来るのね!」


「その代わり金は取るからな! 騎士団長様!」


「うん分かった。 ありがとうじゃあね! 紅茶とクッキーごちそうさま!」


 そう言ってマリナスは席を立ち上がったそのまま帰ると壁にぶつかるのでウォーカーは赤い穴を作り出し、そのままマリナスは外へ出て行った。


「はぁなんか忙しくなったな」


『ネェウォーカー。 ワタシマリナスノトコロイッテイイノ?』


「あぁ行ってこい。 頼んだぞ」


『ウン。 ワカッタヨ!』


 微弱ながら自我がある微精霊にマリナスの護衛兼空間の鍵役として見届けると、ウォーカーはあくびをしてそのまま自室の部屋で寝転んだ。


「はぁ色々と心臓に悪過ぎる」


 マリナスから匂う甘いパンの匂いと甘い髪の匂いを思い出しながらウォーカーは悶々とした気持ちで眠りについた。

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