犯罪計画準備
「ここがお前の部屋だぜ! ウォーカー!」
「ありがとうなトラバース」
「おうよ!」
一方その頃ウォーカーはトラバースに自身の部屋を案内されていた。
一応案内してくれたトラバースにお礼を言ってからウォーカーはそのまま部屋のベットで横になった。
「……屋敷に行くか」
そう言ってウォーカーは赤い空間を壁に作りそのまま入った。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁふざっけんなばーか!!」
ウォーカーは異空間に着き、誰も周りに人がいない事を確認すると思いっきり愚痴を叫んだ。
「いきなり騎士団の仕事をしろだぁ? ふざっけんな! ぜってぇこの空間の事は誰にも言わねぇ!」
そう言ってウォーカーはズカズカと自身の屋敷の中を歩く。
「たく! 俺の夢である美姫を侍らして! 贅沢な食事に酒! そして死ぬまで遊べる資金がある贅沢計画の為にここまで頑張って来たんだ! それがいきなり騎士団の一員だ? ふざっけんなあのクソエルフ!」
そう言いながらウォーカーは服を脱いでシャワーを浴び、冷蔵庫の中にあるパンを取って頬張った。
「ったくムカつくぜ!」
樽の中にある水をコップで掬って一気飲みをしそのままテーブルに置いた。
そしてそのまま自身の寝室へと行き部屋にある鏡を覗き込んだ。
「……俺は貴族の様に偉くなりたいんだ。 汗水働く騎士じゃない」
脳裏に死んだ父と母を思い浮かべる。
父と母はただの村人で平穏な暮らしをしていた。
だがある日貴族の一団が現れ村の金と食糧を寄越せと言ってきたが村長はそれを拒否した。
断られた貴族はその腹いせに雇われていた魔法使いの呪術によって村は壊滅したがウォーカーは生き残った。
そして生き残ったあの日ウォーカーは決めたのだ。
村人の様に汗水働いて苦労するよりも貴族のように偉く、強い存在になると。
「俺は贅沢をするんだ。 ぜってぇ騎士の仕事なんてしねぇ」
そう言いながらウォーカーは眠りについた。
「ん?」
ウォーカーは起きるととりあえず服を着替えた黒いコートを羽織り、動きやすいズボンを履く。
顔を洗い、冷蔵庫の中からパンを取り出して食べる。
その後非常食になりそうな携帯食とゼリーをコートの裏ポケットに入れて武器庫に向かった。
「……さーてと在庫あるかな?」
そう言いながら武器を漁るとまだまだ千近くの剣や銃火器に薬品などが置いてあり、補充はしなくていいと確認した。
「えーと剣、ナイフ、銃、ランチャー、ガトリング砲、小型爆弾に閃光弾に魔石、ワイヤーもたくさんあるな。 あっ、食べる魔石あるな持っていこう。 後ナイフ五本ぐらい持って行くか後銃と」
騎士団に持って行ってもバレなさそうな物を準備してウォーカーは赤い空間を作り、元の騎士団本部の部屋へ戻って行った。
「さて誰も来てないな?」
ウォーカーは確認するととりあえず部屋感を出す為にコートを脱いで地面に置いた。
そして今にも寝ている感覚を出し、寝相が悪いように布団を乱雑にしてそのままベットの中に入り、狸寝入りをした。
十五分経過するとドアがノックされた。
「私、マリナスだけど入るわよ?」
するとドアが開かれてマリナスが顔を出した。
「まだ寝ているの? もう集合時間よはやくしなさい!」
「へいへーい」
ウォーカーはふざけた口調で返事をして再びコートを羽織った。
「全くあなた騎士の一員としての自覚はあるの!?」
「はっ? ねぇよそんなもん」
「あなたって人は!」
マリナスの鋭い眼光にウォーカーはあっけらかんと答えて戯ける。
「俺は犯罪者だぜ? マリナス。 犯罪者が律儀に時間なんて守るかよ?」
「なっ、あなた人の常識どうなっているの!? それと勝手に名前を呼ばないで! 本当に不愉快だから! 本当にあなたの事大嫌いよ!」
「嫌ってくれてありがとう」
小さな声でそう言いながらウォーカーは微笑んだ。
ウォーカーは不真面目な人間で犯罪者である。
そう印象をどんどん植え付ければマリナスは絶対にウォーカーをこの騎士団から追放してくれる。
この真面目でクールぶった優等生を上手く使いウォーカーは一日でも早く騎士団から解放されたい。
そして自由気ままに荷物運びをしつつ、高額のポイントが貰える闇の仕事をする生活に戻る。
「だからせいぜい役に立ってくれよマリナス」
目の前を歩く瑠璃色の髪をした少女を見ながらウォーカーは微笑んだ。
「何を軽薄そうに笑っているの? 早くして!」
「はいはい」
だがウォーカーの思惑はとんでない方向へと発展する事をまだ知らなかった。