あの場所に落ち度はない
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
自分が好きなものに対して違和感があったり、『今日はなんだかな……』と思ったら、まずは自分のこと見直した方が良いですよ。
今の私なんですが。
今まで好きだったものが楽しめなくなる。なんて事は歳を追うごとにありゆる話である。けれども、其れが飽きによるもので無いのならば、此方の落ち度を考えなくてはならない。
とろける橙の光が灯る地下に、純喫茶と呼ぶに相応しい場所が存在する。私はそこで静かに珈琲を嗜んで、ぼんやりと宙を眺めた。
流れるクラシックも、木目のカウンターの触り後も、マスターの動きも、こーの味でさえも、最上級と言っても過言ではない。けれども……けれども……けれども……。
私は首を傾ける。こんなに苦味が控え目であっただろうか。ここまで柔らかかっただろうか? ミルクに感化される味だっただろうか?
一口嗜んで、口の中を回し、余韻に浸る。水を嗜んで、苦味と唾液を混ぜて口腔を舐り回す。
仄かな甘みは確かに存在するのだが、今まで感じた様な甘露はそこにはなかった。
店を出ると、彼が揶揄う様にこう言った。
「ご機嫌斜め? 今日はあまり、酔ってなさそうだったから。もしくはあの場所に慣れてしまった?」
どうやら私の反応に気が付いた様だった。率直に言うことは無いけれど、あの場所に一抹の不満を覚えた事を指摘している様だった。
私は暫くの沈黙の後、この辺りの純喫茶を走馬灯の如く流す。何処も良い。ハズレは存在しない。その中でも此処は別格である。其れは店を出ても変わらない。
「あの場所は常に最高で最上だから、違和感あったら私が悪い。全てを見知り、感じる事が出来ない私が悪い。あの場所に落ち度はない」
というか、あの場所がイマイチなら、良い純喫茶など存在しない。私にとってはこの場所こそが最高で、他は後塵を拝する。
目を見開いてそう宣言すると、彼はころころと笑いだした。
「大好きなんだね」
彼女の紹介でこの場所を知って、彼女に連れて常連になった。けれども今日は少し不満そうな顔で珈琲を嗜んでいた。憂いげな眼差しは、彼女が現在進行形で何かを考えているのが見て取れる。
疲れて、いるのかも知れない。好きな物が分からなくなる程。
絶賛、目を失い、舌を失った。
五感が鈍くなっている気がする。
という状態。
今まで好きだったものが急に楽しめなくなった場合、一度自分を鑑みた方が良いですよ。
何処か傷付いているか、疲れているかの状態だと思うので。
という訳で、また推しに突っ込む為に働きます。
推し(神社仏閣、純喫茶、本屋)は何時でも完全体なので、その全てを認識出来ないのは、此方が悪い。