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3、羊なら喰ったから返信不可だと言えたかも

2話と3話の題名と出だしは連動しております。念のためm(_ _)m


だが猫は紙を食べられない……。


いぇ、今は人間ですけどやっぱり食べられない。

消化不良の毛玉は吐き出す事は出来るけど紙じゃ喉に詰まって窒息死するのがオチ。そんなマヌケな死因は是非ともご遠慮申し上げたいデス。


なので仕方ないので再びお手紙を書いた。

またまたわたしがねッ!?

母親!貴女もヘタレ要素充分高いわっ!!


返信用の便箋と封筒が金貨に見えて来た。

速攻で仕立てる為に使ったドレス代の方がよっぽどお高い筈なのに、こっちの方が懐が痛む気がするのはわたしの気のせいなのでしょうか……?


やっぱりヘタレは我が家共通遺伝かもですね!?




「やっほぅ♡仮縫いに伺いましたわあ~♡」


我が家の玄関に相応しからぬ重低音な猫なで声。

今日はまた一段とゴテゴテが顕在化している服装のオネェ様が襲来……では無くご来訪。


また一晩懸けた王家への返信を持った執事兼家令を載せた馬車を見送っていたらば、擦れ違いで爆走して来る馬車に恐怖で固まっていたらば、急停止したその中からご登場致したのがこのやたらと目に優しく無いゴツい極彩色の塊。


寝不足には色んな意味で優しく無いわ!?

だからといって城へ向かう為の大事なアイテム。

仕方ないので屋敷へと極彩色を招き入れた。


応接間の椅子を一時撤去してパーティションを設置し、仮縫いのドレスを着用した時の調整する為の場所を造り出した。普通ならこんな事はしないのだが、今回は突貫作業で此方が無茶振りをした事もあり言われるがままとなっている。


わたしは身長も体型も世間一般平均値だろうか。

早い子ならばそろそろ第2次成長期に入るお年頃だろうけどわたしなぞまだまだ。胸も腰も尻もストーンなお子様体型と言うヤツ。

……哀しくなんか無いんだからねっ!?


「ウチって基本的に貴族で大人な女性方にご贔屓のお店になっちゃってるじゃなぁい?ホントはもっと色んな人にご愛用頂きたいのにぃ」


わたしにドレスを着せてる間、ずーーっと同じ位に口も休まず動かし続けているオネェ様。

調整する為に腕をあげたりクルリと回ったりするわたしはただ首を振るだけ、縦か横にかね。

まるでわたしの分まで喋ってるみたいです。


わたしが黙って聞いている事に気を良くしたのか、鼻息が荒くなったオネェ様の口は滑らかになって行く。ちなみにだが単にわたしは無口なだけだ。


「だから今回の依頼も受けたのよぉ。お金ががっぽりと貰える上に素材からデザインから選び放題でしかもお相手は成人女性じゃないんだもの!端数なんか切り捨ててでもこっちを選ぶわ!!」


……え~と、まさかですけどウチの代わりに誰かのドレスがキャンセル喰らった可能性アリ?

後で情報収集しておこう、そうしよう!!

中位中立派のウチを危険に晒すのは心許ないし。


クネクネとしながらわたしの周囲をぐるぐると回る極彩色オネェ様。ちょっと目が気持ち悪いです。

ついでに今の話で少し心臓にダメージ喰らった。

…………ホントに優しく無いオネェ様だわぁ。


「でね頑張ったのよ!張り切ったのよ!萌えたのよ!!お陰で徹夜で目の下の隈が化粧でも隠しきれない位よ!?乙女としては屈辱だけどアタシもプロだからね!お客様を優先させるわっ!!」


乙女サンなんですかぁ、初見ですぅ……。

わぁ……ヒゲの剃り痕より濃いかもぉ……。

プロ精神が高いのは褒めたいけど、そもそも店の商品と本人のセンスのギャップがもう色々と激し過ぎて萌える要素は極ゼロですよね?!

このドレスもまた滅茶センス宜しいですけど。


突っ込みたい!突っ込み所しか無い!?突っ込むしか無いでしょどう考えたって!!

…………意味不明な三段活用がわたしを襲う。


吐き気とか突っ込みとか色々と込み上げるモノを何とか堪えて持ち込まれた鏡に向かう。仮縫いと言ってはいたが、僅か2日で微調整程度の直しで済むというほぼ完璧な形に仕上がっている事にまず驚いた。貫徹なのもなるほど納得だ。


「イイでしょ~?お子様なんだから地味な色着るのはお止めなさいな!何なのよ、最初に指定した臙脂色とか濃い緑とか紺色とかなんてそんなモンおばちゃん過ぎてから着なさいな!?」


地味=上品だと信じてた概念は鼻で嗤われた。

表情は変えないけど内心では落ち込んだ。


鏡に映るのは長いストレートの黒髪と濃い金色の瞳の少女。纏うのは薄紫色のふんわりとしたドレスだが、ゴテゴテの過剰な付属品は付いていないので端から見ればシンプルな感じ。


レースは控えめに襟元や手首や腰回りにだけ配置。

そのレースの下と裾部分には銀糸と白色で植物のモチーフが刺繍されていた。同系色で隠されている様に感じるが、よくよく見ればレースが細糸でより繊細なので光に当たると模様みたいに浮き出て来るように計算までなされている。


腰には少し濃い紫のリボンがあり後ろで結んで調整出来る配慮も施され、シフォン素材なのかやや太めで大きめに結べば可愛らしさも演出可。


ぱっちり二重だがつり目気味できつめな印象を与えるわたしには、甘めで可愛い服など似合わないと思っていたが今その概念がひっくり返った。

いやぁ、デザイン次第ではイケたりするのねー。


目から鱗がポロポロで有難い気分なのだが、教えてくれた相手を見た瞬間にスンと感激も奥底まで引っ込んでしまう。どうやらオネェ様はその存在一つで全てを台無しにしてしまう方らしい。


あ、ちなみにこのオネェ様、名前はジュリアス……では無くジュリエットと呼んで欲しいそう。


がちむちゴリマッチョな全身で、病弱文学美少年の代表格みたいな名前だったなんて!とこれまたわたしが受けた衝撃は桁違い。

ジュリエットだって似ー合ーわーねーーっ!!




脳内で何処ぞかのお山の山頂で叫びながらもにこやかにオネェ様事ジュリエット嬢をお見送り。

精神的にはかなり疲れたけれど、予想以上の成果を持って来てくれたので一応だが満足したし。


ところでジュリエット嬢?

そんな巨体で窓から身ィ乗り出したりしたら馬車がひっくり返ったりしませんかね?!

そしてやっぱりハンカチも振って下さるのね。


…………あ~あ、やっぱりよろめいた。

馬車の馭者さん、御愁傷様です。


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