表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

転生先の異世界はサイバーパンクだったので、この世界の流儀にのっとり生き残るために邪魔者を消していく

作者: よぎそーと

「じゃあな」

 最後の言葉をかけて、引き金をひく。

 非力と言われる9ミリ拳銃弾も、機械化してない体なら問題なく貫通する。

 装甲が施されてないならば特に。

 肉体強化で体を強化していた敵だが、頭まで防御されてるわけではない。

 難なく拳銃弾は相手の頭を粉砕した。



「これで全部か?」

 周りの仲間に確認する。

「大丈夫、逃げた奴もいない」

「ネットから監視してる奴もいない」

「よし」

 問題はない。



「外せる部品だけ持っていけ。

 死体も担げるだけ担げ」

 仲間にそう指示を出し、撤退を始めていく。

 戦ってるだけでは何の利益にもならない。

 敵対組織が潰滅するのはありがたいにしてもだ。



 それでも使った銃弾や武器、負った傷、消費した燃料などなど。

 情報提供料から警察に払った賄賂まで。

 かかった費用はかなりになる。

 少しでも取り返さなくてはやってられない。

 それが雀の涙であってもだ。



 そんなわけで、敵が使っていた機械や道具、体に埋め込まれた強化機械部品。

 さらには死体そのものまで回収していく。

 何かしら金になるからだ。

 人道的にはどうかというところだ。

 しかし、倒した連中にはこれまでさんざん嫌味な事をされてきた。

 こういう時にもとを取らないとやってられない。



 そもそも、人道などが廃れて久しい世界だ。

 そんな世界で行儀良くしていてもしょうがない。



 文明そのものは発展している。

 科学知識や技術は高く、人はその恩恵を受けている。

 そうなっていてもおかしくはなかった。

 だが、どんな知識や技術も用いる者次第である。

 この世界を牛耳る者達は知識や技術を独占。

 自分達の為だけに使っていった。



 それが一人や二人ではない。

 派閥を作り、陣営を構築し、しのぎを削っている。

 裏工作から破壊活動、兵隊をぶつけあう戦争。

 利権を巡って様々な衝突が繰り返されていた。

 全ては自分達がのし上がるために。



 誰かの上に立たねば気が済まない者達が頂点に立っている。

 それらが自分の立場や地位を求めて騒動を起こしている。

 なんらかの合理性によってそうしてるわけではない。

 相手を見下したい、自分より上に誰かがいるのが我慢できない。

 同等の地位に誰かがいるのが許せない。

 協調を全くおぼえない性質の者達が、無駄で不毛な争いを繰り広げていた。

 ただ、自分が他の誰よりも上にいる為だけに。



 終わりのない争いが果てしなく続く。

 誰かが一番になるまで続くのだから。

 そんな争いに巻き込まれまいと、誰もが武装して身を守るしかない。

 抵抗しなければ蹂躙されて殺される。

 例え生きていても奴隷以上に悲惨な境遇に陥る。

 人間らしく生きるためには、戦わなくてはならなかった。



 生まれた時からこんな調子だった。

 生き残る方法は二つ。

 奴隷のように服従してお目こぼしを狙うか。

 障害を倒して安全圏を確保するか。

 こんな世界に生まれてきた以上、どちらかを選ぶしかない。



「酷い世界だ」

 敵対組織を倒して奪えるものを奪っていく。

 そんな事をしながらも、そう呟いてしまう。

 この世界では常識であり、何もおかしな事ではない。

 それでも、これが酷いことだとは分かる。

 前世の記憶があるからだろう。



 地球の日本での生活。

 平々凡々な人生を歩んでいた時の記憶。

 敵対組織を潰した彼にはこれがあった。

 殴り合いの喧嘩くらいはした事はあるが、殺し合いなど縁の無い世界だった。

 そこでの体験があるから、この世界がどれほど酷いものなのかが分かってしまう。



 この世界に生まれきた転生者は、ここで生きていくために覚悟を決めるしかなかった。

 戦って安全を確保するしか人間らしく生きていく手段は無い。

 安全地帯は自分で確保しなくてはならない。



 目立たず生きてても必ずどこかで巻き込まれる。

 大人しくしてれば稼ぎを巻き上げられるだけ。

 そうならずにするには、襲ってくる悪人悪党を殲滅するしかない。



 その為に武器や道具を手に入れていった。

 体に機械も埋め込んでいった。

 共同作業をしてくれる人間を見つけて仲間に引きずりこんだ。

 周りのギャングを少しずつ殲滅していった。

 安全圏を少しずつ増やしていった。



 その努力が実って、近隣に残った最後のギャングを先ほど殲滅した。

 これで周辺の組織だったクズは消えた。

 今ではこのあたりで一番のギャング集団を抱えるようになった。

 その影響力のおよぶ範囲から問題や騒動を排除していった。

 小さな範囲だが、ようやく落ち着いて過ごせる場所を作る事ができた。



 とはいってもこれで終わったわけではない。

 同じような規模の組織は他にいくらでもある。

 より強力な組織もだ。

 そういった者達と渡り合っていかねばならない。

 でなければ潰される。



 そういう動きも出て来ている。

 短期間で急速に勢力を拡大させたのだ。

 嫌でも注目される。

 当然危険視される。

 より大きくなる前に潰してしまおうと。

 それが出来ないなら取り込んでしまおうと。



 そのどちらも、行く先は破滅しかない。

 生き残るためには独自勢力として動いていくしかない。

 その為に何が出来るかを考えていく事になる。



「面倒だな」

 無駄な騒動に巻き込まれてる。

 こんな事してないで、手を取り合えれば一番なのだが。

 それが出来ない性格・人間性の者達が各勢力の頂点にいる。

 その全てを殲滅するまで争いが終わる事はない。



 今更ここから抜け出すわけにもいかない。

 そんな事はもう不可能だ。

 あらゆる勢力が敵に回ってる。

 逃げれば追いかけてくるだけだ。

 戦うしかない。

 勝つしかない。

 でなければ死ぬしかない。



 勝ち抜けるとは思わない。

 明日を迎えたいが、それは難しい。

 それでも、勝って生き残るつもりでいる。

 どうすればいいのか分からないが。



 だが、いつ終わるのかは分かる。

 止まった時に全てが終わる。

 進むしかない、敵に向かって。

 そしてとどめを刺して、死体を押しのけていくしかない。

 それだけが生き残る道だ。



 人を集め、道具を集め、金を集め。

 兵隊を集めて戦うしかない。



 そうして敵を退けた場所にだけ、平和に暮らせる場所が出来るのだから。

 前世のように落ち着いて暮らすにはそうするしかない。

 高層ビルが立ち並ぶ文明社会という戦場。

 殺し合う事でしか平和が得られない地獄がひろがっている。

「厄介だよ、この世界」



 出来れば穏やかに生きていきたい。

 それが出来た生まれる前の世界が懐かしい。

 それを成り立たせるためにも、戦って勝つしかない。

 力を手に入れるしかない。

 他の連中を御行儀の良くさせるには、力をつけてから他人に強いるしかないのだから。



 そこまで行けるように、次の攻撃を考えていく。

 周りにいる全ての敵を倒して、平和と安全を手に入れるために。



 その後、争いは激化していった。

 転生者による攻勢が世界を巻き込んでいく。

 その果てに各陣営は疲弊し戦闘を停止していった。

 継続できるほどの余力が無くなったからだ。



 計上しきれないほどの損害を誰もが受けた。

 これ以上なにも出来なくなるほどの被害をこうむった。

 それを平和というには無理がある。

 しかし、とにもかくにも争いは消えていった。



 それを成し遂げた転生者は、望んだものがようやく到来した事に安堵を覚えた。

 これで暫くは静かになるだろうと。

 たとえ一時だろうとも。



 その予想に反して、騒乱は長く鳴りを潜める事になる。

 あまりの損害の大きさに、これ以上の騒動を誰もが忌避した。

 それ以上に、騒動を起こそうとする連中の多くが死んだ事が大きい。

 相手を出し抜き自分が上に立つ事を求めた者の多くが消えた。

 それもまた、転生者のなした成果である。



 以後、何十年に渡り平穏が訪れた。

 その中で人は騒動よりも安息の方が良いと思うようになった。

 無理して成り上がるよりも、静かな空間の方が落ち着けると。



 それを知った者達は、騒ぎが起こそうとする者を見つけたら自発的に処分し始める。

 平穏を手放そうという者はいない。

 転生者がそういう風に世論などを誘導してるのもある。

 だが、それ以上に誰もが争いが止まった状態を求めていた。



 そんな状況が次第に当たり前になっていく。

 戦闘が止まってるだけで、平和とは言いがたいかもしれない。

 だけど、それでも今までよりはマシだ。

 その事に転生者は満足した。



「ようやく落ち着いた」 

 長い時間がかかったが、ようやく望みに近い状態になった。

 それ以上はさすがに望めない。

 発達した科学によって長寿を得てるが、それでも人が一代で成し遂げる事ができる事には限界がある。

 それを成し遂げたと思って納得する事にした。

「あとはこれからの連中がどうにかすればいい」

 平和な時代に生まれてきた者達に今後を丸投げしていく。

 そうして転生者はこの世界での人生を終えた。

気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


面白かったなら、評価点を入れてくれると、ありがたい


あと、異世界転生・異世界転移のランキングはこちら

知らない人もいるかも知れないので↓


https://yomou.syosetu.com/rank/isekaitop/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


活動支援はこちら
こっちにはない小話なども出していく予定

支援サイトFANTIAを始めたので
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/493807952.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ