FILE2:お嬢さんを守れ・2
「こちらへどうぞ」
案内されるまま、怪しげな扉の前に立った2人。
「中で待っている」との事なので、昭彦と和希は扉を開けたのだが、
扉の中は、色々なゲームが用意されていただけで、署長の姿はない。
「いない…まあいいか。とりあえずここにあるもので暇をつぶそう」
「賛成。机の上にチェスがあるからやろうぜ」
「俺はこっちがいいな」
「麻雀か…昭彦、お前どこ行ってもそれだな」
「まあな。じゃあ、チェス飽きたらこっちな」
「了解」
いそいそとチェスの準備をする2人の後ろから、太い影が迫ってきた。
言わずもがな、署長である。
「いや~、悪い悪い。遅くなった」
「「……………」」
「露骨に嫌な顔するなよ!!結構傷つくんだぞ!!」
「傷つけばいい」
「そしてそのまま死ねばいい」
「何でだよ!!まだまだしぶとく生きるよ!!」
「まあ、どうでもいい事は置いといて…」
「新事実発覚!!俺の命はどうでもいい事だった!!」
「なんでこのカジノは日本語が通じるんだ?」
「もちろん、俺の血と汗の…」
署長を睨む和希。
「すいませんただの日本人が多いカジノです」
土下座する署長。どうやらこの男にはプライドというものが無いらしい。
「そういえば、まだどこの会社の社長だか聞いてなかったな」
「知りたいか?」
「ああ。その方が仕事しやすいからな」
「そうか。じゃあ教えてやろう」
署長は真剣な顔つきになり、只者ではない空気に2人共黙り込む。
数秒後、その事実は告げられた。
「田中ガラス商会」
「「はあああああああああああああああああああああああああああ!?」」
「さあ、そろそろ娘さんが到着する頃だ。2人共、頼んだぞ」
「できるか!!田中ガラス商会なんて聞いたこともねえよ!!どこのローカル会社だよ!!
っつーか何!?その『タバコ屋の角を曲がって三件目』みたいな感じの名前!!」
「そもそも田中さんとお前はどんな関係にあるんだよ!!」
「田中さんは、俺の古い友人…」
「「…」」
「…と顔が似ているだけで、全く無関係な赤の他人だ」
「「このやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
「お前らアレか!?まさか、世界に名だたる大企業とか思っていたのか!?」
「いや、そんな事はないが、まさかガラスの…」
「お、来たぞ」
窓の下。パッと見で15m程はあるリムジンが停まっていた。
と、いうことは。
「しつれいします」
幼稚園か小学校低学年かぐらいの声が部屋に響いた。
礼儀正しく何度も礼をしてから、昭彦達の元へ移動する。
「こんにちは。これからしばらくおせわになります、│姫菜といいます。よろしくおねがいします」
幼い声に硬直する三人。だが、それぞれの感情は皆一致していた。驚きとも絶望とも違う、その感情とは…
「「「か、かわいい…」」」
『萌え』である。
「…ハッ!!いやいやいやいやいやいや!!違う!!これは任務だ!!」
「そ、そうだ!!署長である私が忘れるところだった」
「時々思い出したように一人称変えるのやめろよ」
「今はそんなこと関係ない。任務の話だ」
「お前に注意されると妙に腹立たしいな」
「今はそんなこと関係ない。任務の話だ」
「く…」
昭彦は同じ事しか言わない署長に殺意を覚えながらも、姫菜を細い目で見る。
「というか、大体小娘一人ぐらい放って置いても・・・」
「おにいちゃんあそんでー!!」
「いいわけないよな~。おいで。お兄ちゃんがいっぱい遊んであげるよ~」
「「・・・ロリコン」」
「何を言うか!!お前だって『おにいちゃん』って呼ばれたいんだろ?」
「ばかいえ!!そんな訳・・・」
「そっちのおにいちゃんも、あそんでくれるのー?」
「あったわ~」
「フン。私になつかない娘など…」
気に食わない様子で部屋を後にした署長。
「さ~て、何して遊ぼうか?」
「んーと…」
可愛らしく人差し指を口に当てて考える少女を見て昭彦と和希は、ニヤニヤしていた。
「かわいいな~」
「そうだな~。このまま日本に連れ帰るか?」
「拉致だろ…でも、それもいいな~」
「だろ~?」
「でも、そうなると資金が必要だな」
「ちょうどさっき警備が薄い銀行を見つけたんだ」
「ナイス石和。後は逃走経路だが…」
「普通の国道よりも空飛んだ方が良くね?」
「なるほど。つまり飛行機をジャックしろと。そういうことか」
「そうだな。後は、国に帰ってから…」
パリーン!!
「「───!!」」
穏やかな不陰気を壊し突然ガラスを割って入ってきたのは、1人の兵士。
防護服に身を包み、マシンガンを装備している彼は、無言で作業を開始する。
「きゃああああああああ!!」
姫菜は体の抱えられ、必死に抵抗した。だが大人の力に勝てるわけもなく、兵士が窓のレールに足をかけたその時だった。
2発の弾丸がその│頭蓋を貫いた。昭彦と和希である。
その場に倒れ込み動かない兵士を見ると、一撃(正しくは2発)で死んだらしい。
「行くぞ。石和、姫菜」
「了解!!さ、急いで!!」
「うん!!」
階段を駆け下りる3人。だが行く手には数え切れない数の兵隊が押し寄せていた。
「くそっ!!どうする!?」
「決まってるだろ」
「なるほど」
言うが早いか、瞬間的に2人の表情が変わった。
その眼はまるで破滅を象徴するような赤黒い色に染まり、体全体から殺気を漂わせている。
「姫菜。下がってろ」
「え…?」
「大丈夫。俺達の後ろには返り血一滴たりとも飛ばさねぇ」
「わかった。おにいちゃんたちがんばって!!」
「おう!!…っと昭彦。これさっき部屋に落ちてた」
渡されたのは鋭い刃を持つ侍の必需品、日本刀である。
「お前には、そっちの方が性に合っているだろ?」
「さすが石和。分かっているじゃないか」
「そんじゃ、いっちょやりますか」
2人は、群がる敵の最中に走り込んで行った。
更新遅れてすいません。書置きが出来ないもので・・・。本当にすいません。
さて、第2話です。やっとそれっぽくなってきました。
次回はちょっぴりシリアスを入れてみようと思います。がんばります。
※言葉の使い方が間違えているところがある場合があります。ご了承ください。