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ベンガラ工場跡の血

作者: 荒木パカ

大学生の時代、よく一緒にいる友達3人と廃墟に行っていた。

その日行ったのはベンガラ工場跡だった。

ベンガラとは染料で、紅柄、紅殻と書かれることもあり、暗い赤みを帯びた茶色が特徴である。

ベンガラ取り扱っていたためか、工場の壁も一面暗い赤。果ては窓ガラス、歩いているアスファルトの道すらも薄っすらと赤い。

薬品を扱っていたと思われるビーカーや、昔は動いていたであろう大きな謎の機械。

廃墟特有の人々の生活跡の哀愁、寂しさ。

それらが赤に包まれ、奇妙な世界観が出来上がっていた。

廃墟の非日常を楽しんだ後、帰宅しようとベンガラ工場を出たところ、友人の白い鞄に赤色の塗料がべっとり付いているのを見つけた。

みんなで「あーあ、やっちゃったな。塗料だから取れないかもよ。」と囃し立てた。

鞄を汚してしまった友人は、「マジか~最悪。」と落ち込んだ声を出しながら、赤く染まった部分を触る。

「これ、ベンガラじゃない。たぶん血だ。」

みんなで鞄の赤い汚れを確認したところ、塗料の汚れではなく赤い液体であった。そして臭いを嗅ぐと、血液特有の鉄臭さ、生臭さを感じた。

「もしかしたら、誰かが死体を解体してたかも知れないな。」

おもむろに友人の一人が口を開く。

「このベンガラ工場は全体が赤い塗料で染まっているから、血が飛び散っても分かり辛いし、廃墟だから人が来ることもほとんどない。だからここで解体をしていたが、俺達が騒いでいるから慌てて死体と一緒に隠れた。しかし、血までは片付けられず、壁に付着した血に鞄を擦ってしまった。というのはどうだろう。」

「突飛だな。じゃあ、殺人犯は隠れていたのか。本当だったら怖いな。」

「ベンガラは酸化鉄が主成分。腐った水に塗料が溶け込んだら、血のようになるのではないかな?それが鞄に付いちゃったとか。」

「それが妥当だな。」

そう言ってみんなで笑いあった。

しかし、私には鞄に付いた赤い汚れが血液にしか思えなかった。

だが、私達には確かめる術はなく、一抹の不気味さを背後に感じながら帰路に就いた。

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