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小峠澄の日記

小峠澄とお菓子


 小峠澄が〇〇村までの道中を歩いていたのは梅雨から夏に変わるころのことだった。


 遠くに入道雲が見える。小峠がそんなことを考えながら、鬱蒼とした藪に覆われた山道を歩いていると団子屋を見つけた。


 農家が農具を入れるようにボロっちい小屋に『だんご』と書かれた暖簾が下り、小さな煙突から煙が上がっていた。


 少しだけ休んでいこう。小峠は団子屋の暖簾をくぐると声を張った。


「すみません。どなたか居ますか?」


 小峠が言うと店の奥から弓なりに背筋を曲げた老婆が現れた。


「はいはい。何ですかね?」


「団子とお茶をくれませんか?」


 老婆は小峠の言葉に頷くと後退りをするように店の奥へ入っていった。


 小峠は団子屋の入り口付近に置かれた長椅子に腰を下ろすと、足先まで伸ばすように伸びをした。


 あと一山越えれば〇〇村だ。小峠は両腕をつっかえ棒にして、体を後ろへ逸らすと、バランスをとりながらバタバタと足を揺らした。


 しばらくすると老婆がお盆を持って、小峠の後ろから現れた。


「お茶と団子です」


 老婆は長椅子の上にお盆を置いた。湯呑みに注がれた湯気の立つお茶と、三色の球体を串で刺した三色団子が2串出てきた。


「美味しそう!!」


 小峠は喜びの声をあげると、串を横に持ちかぶりつこうと、口を開けた時だ。


 老婆が小峠の背後から団子を食べる瞬間をジッと眺めているのが気になった。


 小峠は団子を下ろすと、老婆へ向き直った。


「おばあちゃん。どうかしたの?」


「いやいや、元気な娘っ子だと思ってね」


 ふぇふぇふぇ。老婆は口元を隠しながら笑いました。


 ふーん。小峠は唇を尖らすと、老婆へ団子を差し出しました。


「おばあちゃんこの団子美味しい?」


「勿論さね」


 当たり前と言いたげの老婆の顔前に小峠は団子を突き出した。


「おばあちゃんこの団子食べてよ」


 小峠は老婆に串を持ったまま近寄る。老婆は小峠の行動に恐怖をしているのか後退りをした。


「若者が食べ物で遊ぶんじゃないよ」


「いいから」


 小峠は老婆を壁まで追い詰めると、老婆の口元へ団子を近づけました。あと少しで口に入る。その瞬間だった。


「覚えてろ。コーン」


 甲高い声がして老婆と建物が消え失せ、小峠の手元には、串に刺された野生動物の糞だけが残った。


「記者を騙すとは100年早い」


 小峠が大笑いすると、ドッと滝のような雨が降った。


 小峠がビシャビシャになりながら大きな木の下に入ると「コーン」と甲高い笑い声が響いたのでした。




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