儀式?
明るい陽射しの入ってくる部屋で、一組の男女がベッドで愛し合っていた……?
目を閉じたままの女性は、時々吐息を漏らしながらまるで男を誘うかのように甘い香りを漂わせ、そんな女性を見つめる男は、熱の籠った瞳を細める。
「ナホ……何て甘い香りなのだ……うぐっ、これは流石に堪えるな……。ナホ、早く起きて私を見てくれ……」
再び、オリオン王は菜穂の唇を塞ぎ、キスをしながらゆっくりと想いを籠めて気を送る。少しずつ、慎重に……。媚薬のような熱に必死に耐えながら辛そうに眉根を寄せて……。
「んっ……」
「ナホ?」
ふるっと菜穂の瞼が震えたような気がして、オリオン王は一度唇を離す。
だが、菜穂の瞳はまだ閉じたままで、意識が戻る様子はない。
『やはり、女神の言葉通りに何度も時間をかけて、ゆっくりと気を送るしかないのか……』
ポツリと呟いたオリオン王は、口付けを再開させつつ、菜穂を優しく抱き締めた。
****************
菜穂は酷く喉が渇いていた……。
温かいものが唇に触れ、そこから甘露が流しこまれていく。
激しい飢餓感に、菜穂はもっともっと……と、さらなる甘露を求める。
(んっ……甘くて、美味しい……。気持ちいい……)
菜穂はうっとりとオリオン王からの口付けに酔いしれ、ふわふわとどこかに浮いているような気分を味わっていた。
(ん……甘いの……もっともっと……)
熱くなってきた身体を無意識にもぞもぞ動かしながら、菜穂はオリオン王から口移しに送られる気に酔いしれる。
「……んんっ……」
(あん、もっと……もっと……何、気持ちいいよぉ……。え? 気持ちいい?)
甘い声が耳に入ってきて、何かがおかしい事に気付き、菜穂は突然パチッと目を開いた。
途端に眩しい光が目に入ってきて、思わずぎゅっと目を閉じるのだが、身体が異様に熱く、ぞわぞわとする。
(何なの?)
目覚めたばかりのぼんやりとした頭で菜穂は、必死に考えようとした。だが、漂ってくる甘い香りに思考が中断させられる。
「んっ……ふ……」
口から自然と喘ぎ声が漏れそうになるのを抑え、菜穂は眩しさのあまり閉じていた目をゆっくりと開いて、視線をそろそろと動かしていった。
見覚えのある部屋、ベッドの天井……そして、視線をはっきりと向ければ、近いオリオン王の顔。
(睫毛長っ!)
ボケッとした表情で、美形過ぎるオリオン王に思わず見惚れてしまうのだが……。
「……っ!?」
菜穂は、驚きで大きく目を見開いた。
「ナホ、ナホ……戻ってこい!」
ぎゅっと自分を優しく震えるように抱き締めてくるオリオン王の切ない声に、きゅうっと胸が酷く痛み、ぽろっと涙が零れる。
菜穂は直ぐに返事をしようとしたのだが、何故か声が出てこない。
(王様、私、起きたよ。もう、大丈夫だから……)
必死に菜穂は、声を出そうとした。
「ん、ぅ……おりお……」
「ナホ……?」
突然、聞こえてきた声にオリオン王はピタッと動きを停止し、確かめるように顔を上げると、菜穂の開かれている潤んだ瞳と視線が交わった。
「ナホ、やっとその瞳に私を映してくれたな……」
オリオン王の歓喜に満ちた声と眩しい微笑みに、菜穂は思わず頬を赤くする。
(なっ……なっ……なに、凄く甘過ぎだってばー)
菜穂は、オリオン王の視線を受け、真っ赤な顔でふいっと横を向いた。
「どうした、ナホ?」
「あ……あの、王様……ほらっ、私こうして、目が覚めましたし……もう大丈夫ですから……」
ちゅっと口づけをしてくるオリオン王を、菜穂は真っ赤な顔で見つめ、もごもごと恥ずかしそうに告げた。
そんな菜穂を愛しそうに見つめるオリオン王は、くすっと優しげに頬笑む。
「いや、まだ安心できぬぞ。もっとナホには気を送らないとな。何度も何度も口づけをしないといけない」
「へっ?」
再びゆっくりとオリオン王の顔が近づいてくると、甘い香りが二人の間に漂う。
(いやぁぁー、だからこの香り、おかしくなっちゃうんだってばー!)
心の中で悲鳴を上げて叫びまくる菜穂は、潤んだ瞳で恨めしげにオリオン王を睨んだ。
「その顔も、ぐっとそそるぞ」
「うぅー、この変態エロサド王!」
「そうか、ならばナホの期待に応えないといけないな。どうやら私は、変態エロサド王らしいからな」
「……っ!?」
『口は災いの元』、『後悔先に立たず』など、菜穂の脳裏にことわざが次々と浮かび上がってきた。
すっかり敗者の気分を味わった菜穂は、涙目でオリオン王を見つめるしかなかった。
「……っぐ!?」
菜穂の顔を見つめたオリオン王は、うっすらと目元を赤らめながら片手で口元を覆った。
「強烈だな……」
「?」
自分がどんな表情をしているのか、オリオン王が何を感じたのか、全く分からない菜穂は、キョトンと首を傾げ、急に俯いた王を不思議そうに眺めていた。
すぐにオリオン王は顔を上げ、菜穂を優しい眼差しで見つめてくる。
キラキラの微笑みと、その愛おしいものを見つめるような熱い眼差しに、菜穂は頬を赤く染め上げた。
(だから、そのキラキラ笑顔は反則なんだってばー!)
菜穂がぼーっと微笑みに見蕩れていると、その笑顔がどんどん近付いてきて、ちゅっと優しく唇を塞がれた。
むろん、その口付けは触れるだけのものではなく、気を送るものなので熱く、菜穂は息も絶え絶えに感じまくることになる。
(何で……こんなにキス、気持ちいいの……?)
「ナホ……俺の天使……。もっと、その可愛い声を俺に聞かせろ……」
菜穂は、縋るようにオリオン王を見つめた。
(嘘……でしょ? いーやー……誰か、助けてー!)
こうして、神子の目覚めの儀式(←オリオン王曰く)は永遠と続くのであった。甘い香りの漂うキスと共に……。
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