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会議

 

 菜穂が名前の事で悩んでいる同時刻、執務室では3人の人物が、真剣な表情で話し合っていた。


「もう、これ以上反論は認めない」


「しかし、陛下! 陛下にもしものことがありましたら、この国はどうなるのですか。民の事を考えて下さい」


「くどいぞ、シリウス。王女の病が治るのだから、問題はなかろう。たとえ私がいなくなっても、アルテミスとケンがいる。弟たちに国を任せればいいだろう」


「アルテミス様はともかく、ケン殿にはまだ……荷が重すぎると思います」


「シリウス、お前たちが補佐してやればいい事だ」


「ですが……」


 何度話し合っても平行線で睨み合う王とシリウスに、ずっと黙っていたもう一人の人物が声をかけた。


「まぁまぁ、ちょっとは落ち着きなさいって! シリウスったら、陛下が一度決めた事を覆す訳ないでしょ? 陛下もそう簡単に王座を捨てようとはしないでくれない?」


「「それはっ……」」


 二人の間に入った人物の言葉に王とシリウスは口籠る。そんな二人を見て、やれやれと肩を竦める赤髪の人物は、話しを締めくくろうとしてパンと両手を叩いた。


「ハイハイ……それじゃあ、シリウスは神子様の暮らしていた世界が骨を食する文化なのか、もう一度よく調べてみる事。陛下は、勝手に神子様と契約をしない事。それでいいかしら?」


「それでいいでしょう。私はすぐにでも神子様の世界の書物でも手に入れてみます」


「チッ、仕方ない。とりあえず、勝手に契約はしない。それでいいんだな、カストル」


 王とシリウスはこの提案に渋々頷く。二人を交互に見つめながら軽く首を傾げたカストルと呼ばれた人物は、満足そうに笑みを浮かべた。






「それにしても、神子様ってどんな子だったの? 陛下ったら、かなり気にいったんじゃないの? だって、神子様に自分の骨をあげてもいいなんて、陛下の口から出た言葉とはとても思えないわ。ねぇ、命をかけてもいいほど、そんなに良い女なの?」


 ふふっと楽しそうに微笑みながら瞳を細め、興味津々に尋ねてきたカストルに、王は不機嫌そうに眉を寄せた。


「カストル、お前……手を出すなよ。殺すぞ」


「おぉ、こっわーい。シリウス、今の陛下本気で殺気を放っていたよねー?」


 茶化しながらウインクしてくるカストルの様子を見て、眉を顰めるシリウスは溜息をつく。


「ふざけないで下さい、カストル。私は少しでも時間が惜しいので、これにて失礼させていただきます。陛下、必ず神子様の世界の食事に関する書物を手にいれてみせますので……。もう暫くお待ち下さい」


 すっと静かに椅子から立ち上がったシリウスは、王に頭を下げると長い銀の髪をなびかせながら踵を返してその場を退出するのであった。




「あーあ、いっちゃった。相変わらず、真面目なんだから……。でも、あたしの弟よりはマシか。今頃、神子様の護衛をしているんだろうけど、ボルクったらもう神子様に会ったのかしら……?」


「神子の護衛はボルックスがしているのか……。ならば、間違いはないな」


「そうねぇ……。あの子、融通の利かない堅物だから、神子様の寝室に忍び込んだりなんて間違ってもしないわよ。だから安心できてよかったわね、陛下?」


 カストルは王に向けて流し目を送りながらにんまりと意味有り気な笑みを漏らす。


 そんなカストルのふざけた態度はいつもの事らしく、王はフンと鼻を鳴らすのみで特に何も言わなかったのだが……。


「それじゃあ、あたしもそろそろ行くわね? 神子様に会って、骨が好物で食べるのか事実確認してくるわ」


 手を軽くヒラリと振って立ち上がるカストル。そんなカストルの言葉を聞くなり王は立ち上がって先に歩き出した。


「神子には私が確認してくるから、お前は来るな! そろそろ神子は目覚めているかも知れないからな……」


「おぉー、こっわーい。分かったわよ。神子様によろしくね」


 じろっと睨みつけてくる王を見て、おどけた様子でカストルは肩を竦めた。








そうして、執務室に取り残されたカストルは、真面目な表情をして、王の出て行った扉をいつまでもじっと見つめるのであった。


「ねぇ、神子様……。どうか、陛下を救ってあげてね? 闇から解放してあげて……」





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